居候(後編)



「あらぁ、可愛くなっちゃているじゃない。」
 姉さんが僕のおちんちんを摘んで言った。
 そう言えば、昨日張り付けた時はかなりの大きさがあり、僕の股間にだらりとぶら下がっていたが、今見ると元々の僕のモノと大差ない大きさになっている。
「DNAマスカレード機能もちゃんと働いているようね。」
「なに?それ?」
「簡単に言うと合成臓器が望の遺伝子の情報をCOPYしたっていう事。たとえば、合成皮膚の色が装着者の物と違っていても、合成皮膚がまわりの皮膚の遺伝情報をCOPYしていくと、元々の皮膚と見分けがつかなくなるようになるの。もちろん、傷や入れ墨は無くなってしまうけど、日焼けサロンで焼き直せば合成皮膚も同じように小麦色に焼けるようになるのよ。」
「ふ〜ん」
「あたしのバストだって見てご覧なさい。ちゃんと元通りの大きさに戻っているでしょう?」
 そう言って、姉さんは胸をさらけ出した。
「ち、ちょっと…」
「良いのよ。これからの実験ではあたしも脱ぐんだから。」
 そう言ってパッパと服を脱ぎ去ってしまった。
 ショーツも脱いで全裸になった。
 その股間には…
 
 合成臓器が付いていた。
「じゃあ、始めるわね。」
 そう言って姉さんもベッドの上に上がった。
 僕の上に身体を重ねる。
 そして、唇を重ねた。
 僕の歯をこじ開けるように舌先が侵入してくる。
 後頭部に廻した手が頭の自由を奪い取る。
 残った手が胸をまさぐる。
 太股に股間を押し付ける。
 脚を絡ませる。
 胸に当てた手の指先が乳首を摘まみあげた。
「小さいけど、一人前ね。」
 僕の唇から離れるとそう言った。
 そして、フーと耳に息を吹きかける。
 むず痒さに悶えようとするが、頭はしっかりと拘束されていた。
 その捌け口に僕の喉が振るえる。
「う、う〜ん」
 艶かしい喘ぎが漏れる。
 その声に反応したかのように、僕と姉さんの太股の間で合成臓器が逞しさを増していった。
 グリグリと姉さんがソレを押しつけてくる。
 それは姉さんのモノで、僕のはまだ申し訳なさそうに小さく揺れていた。
 姉さんは、膝を使って堅く閉じられた僕の太股を割って入った。
 硬くなったモノの先端が、僕の股間を突っ付く。
「あん♪」
 思わず声が出る。
「可愛いわよ。」
 姉さんが耳元で囁く。
 僕の股間からは雫が漏れ始めていた。
 
「ねぇ、コレは大きくならないの?」
 空いた手で僕のを弄びながら姉さんが言った。
 さっきもそうだったが、僕のモノはそれ自身への直接的な刺激には一向に反応しないようだ。僕が『女のコ』として感じないとダメなのでは?と思いつつ、僕は胸に手を伸ばした。
「あっ」
 乳首に刺激を与えると、ピクリとソレが反応した。
 と、同時に股間も潤いが増してきた。
 姉さんはそれを見て、
「こっちの方が先に準備できたみたいね。」
 と指先にお汁を絡め取って言った。
 そして、体勢を変え僕の両足を抱え上げる。
「いくわよ。」
 そう言って、姉さんは腰を押しつけてきた。
 姉さんの合成臓器が押し入って来た。
「痛ッ!!」
 腰を引こうとすると、姉さんに押し止められる。
「これくらい、我慢しなさい!!」
 そう言って、更に押し込む。
 僕は短く息をしながら、必死に堪えていた。
 すると、合成臓器の先端が奥の壁に突き当たった。
 僕も身体の中でソレを実感する。
「良い感じよ。」
 そして、姉さんは腰を前後に動かし始めた。
「あ〜〜〜〜〜!!」
 僕は悲鳴を上げて痛みに堪えていた。
 
 
 
 僕の股間から紅い染みの混じった乳白色の粘液がこぼれ落ちた。
 姉さんは満足げに僕の横でタバコを銜えている。
(……)
 二人とも無言だった。
 
 トルゥゥゥゥゥル、トルゥゥゥゥゥル
 電話が鳴っていた。
 僕はタオルケットを身体に巻いて、ベッドを降りた。
 母さんからの電話だった。
「大丈夫。心配ないよ。」
 僕はそう言って両親を安心させるしかなかった。
 受話器を置くと姉さんが待っていた。
 
「望ちゃ〜〜ん♪いらっしゃ〜〜い♪」
 言われるまま、僕はベッドに戻った。
「もう一度良く見せてね。」
 仰向けに寝かせると、股間を思い切り開かされた。
 股間には、まだ汚れがこびりついている。
 姉さんの指先が肉襞を掻き分ける。
 指先が敏感な部分に触れる。
 ジュン!!
 更にお汁が吹き出す。
 と同時に、
 ピクリ
 と、僕のモノが反応した。
 今度は姉さんも見逃さなかった。
「へぇ〜、こんなに小さくても反応するのね。」
 そして、姉さんは僕の股間を弄り回し始めた。
 僕の身体は『女のコ』として反応する。
 そして、お汁の吹き出す量に比例して、僕の合成臓器も逞しくなっていった。
「これは興味をそそるわね。」
 充分に硬くなった僕のモノをしごきながら、さらに僕の『女のコ』に刺激を与えてゆく。
 姉さんの指技は素晴らしく、両方からの快感に僕は激しく揺さぶられた。
「あぁ…うん、あ、あっ…」
 喘ぎ声が止まらない。
 ダブルで責めたてられたので、僕は一気に達してしまった。
「あ〜〜〜〜〜〜っ!!」
 『女の子』としての絶頂を迎えると同時に、僕のおちんちんからも白い液体が吹き出していた。
 僕はそのまま、快感の微睡みの中に没していった。
 
 
 
 姉さんの実験はそれから毎日続いた。
 僕は合格した大学にも通わず、家事と姉さんの実験相手に明け暮れていた。
 ある日、僕は胸の奥でむかつきを覚えた。
 胃の中を戻すと何事もなかったかのようにすっきりする。
 そんな事を何度か繰り返しているうち、それは姉さんにも知られる事となった。
「もしかして、あんた出来たの?」
「この前のアレは何時だった?」
 最初は何を言っているか判らなかった。
 姉さんの言う「アレ」が「生理」だと言う事は新米女の僕に判る訳もない。
「第一、僕は生理なんてやった事ないもの。」
 そんな「女」の基本原則を知らない僕を相手に姉さんは毎日のように中射しを続けていたのだ。
 僕はすぐさま産婦人科の病院に連れて行かれた。
「おめでたですね。」
 僕は呆然とし、姉さんはその場にへたり込んでしまった。
 
 もちろん実験は中断。僕の股間からは合成臓器が取り除かれた。
 姉さんは合成臓器の実験データとともにとあるメーカーに就職した。
「家族が増えるんだからね。」
 部長待遇だという事で、かなりの収入が期待できる。
 僕はといえば、姉さんの名前を使って母子手帳をもらい、定期的に病院に通っている。正式に大学も休学し、出産に備える事にした。
 問題は両親だった。
 姉さんが「子供ができちゃったの。」と一言電話で言っただけで、二人揃って駆けつけてきた。
 姉さんと一緒にいた僕を見て「なんだこの娘は」という眼をしながらも、
「で、誰の子だ。」と言う父さんに「望です。」と答える姉さん。
「あぁ、姉弟で何という事を…」と母さんが泣き崩れる。
「で、その望はどこにいるんだ。こんな大事な話しの時に居らんとはけしからん。」
「あのぉ〜」と、小さな声で僕。
「なんだね、君は?」と、喧嘩腰の父さん。
「この娘が望です。それに、妊娠したのはあたしじゃなくて望の方。」
「「???」」 唖然とする両親。
「つまり、あたしが望を妊娠させちゃったの。」
 姉さんは開き直ったふうに言った。
「話しが見えないんだが、説明してもらえないか?」
 父さんの意見に従い、姉さんがこれまでの経過を語った。
 
「ばかも〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!」
 話しが終わった途端、父さんが爆発した。
 それを静めたのは母さんだった。
「良いじゃないの。望が男の子だろうが女の子だろうが。それに、こんなに早く孫の顔が見られるなんて幸せな事じゃないですか。」
「か、母さんはそれで良いのか?」
「何も悪い事は無いでしょう?それに、生活費だって自分達で稼ぐし、親には一切負担を掛けないって言っているでしょう?あたしは早く孫の顔を見たいわよ。二人に似て綺麗な子が生まれるでしょうね。」
「……もぅ……どうにでもしろ!!」
 父さんは不貞腐れてテーブルの上のビールを飲み始めた。
 
 その夜、飲みつぶれた父さんは姉さんの部屋のベッドに寝かせ、僕達3人は僕の部屋に布団を敷いた。
「これが望ちゃんの部屋なのね。」
 飾ってあったぬいぐるみを見ながら母さんが言った。
「姉さんが勝手に飾ったんだよ。」
「望だって悪い気はしなかったんでしょう?」
「もう、すっかり女の子の部屋ね。お洋服も可愛いのがいっぱい♪」
 勝手にクローゼットの扉を開けている。
「それも、姉さんが…」
「望だって気に入ってるでしょう?」
「ねぇ、母さんにも良く見せて?」
 と、僕の着ていた服を脱がしてしまった。
「へぇ〜、すっかり女の子なのね。」
 と関心する。
 すると、僕の前に跪きお腹に頬を当てた。
「こんにちは。おばあちゃんですよ。元気に育ってくださいね。」
 僕は何だかくすぐったく感じた。
 
 
 
 月が満ち、僕は女の子を産んだ。
 
 
 
 しばらく、実家で母さんの世話になりながら育児の勉強に励んだ。
 そして今日、僕は再びマンションに戻った。
 
 表札には「上杉 瞳・望・恵」と書かれていた。
(ごくり)
 僕はあの日と同じように、意を決してドアの前に立った。
 左手を伸ばして呼び鈴に触れる。
(ピンポ〜〜ン)
「は〜〜い。」
 ドアの向こうから姉さんの声が聞こえた。
 ガチャガチャと鍵を外す音かする。
「望ちゃ〜ん。おかえりなさ〜い♪」
 
「ただいま。」
 僕はドアをくぐった。
 もう、僕は居候ではない。
 僕は胸に抱いていた恵に言った。
「さぁ、ここが君のお家だよ。」
 
 そう、これから僕達の新しい生活が始まるのだ。
 
 
 

−了−


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