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ハンドバックを手に街を歩いていると、幾度となく呼び止められた。
みんな若い男達である。
今、僕はナンパされる側にいるんだ。
適当にあしらっていたが、中に執っこい奴がいた。
早足に立ち去ろうとしてもその先に回り込んでくる。
かと言って、走って逃げようにも初めて履いた厚底靴では思うに任せない。
「いいかげんにしてください!!」
声を荒らげても一向に堪えない。かえって僕の声を聞こうと、更に執こさを増してくる。
幾分か嫌になった所で、
「やまないか。彼女が迷惑がっているだろう。」
と、僕と奴の間に割り込んできた奴がいる。
その後ろ姿だけでも正義の味方のように格好良い。
執こかった奴も尻尾を巻いて去っていった。
「大丈夫かい?」
男が僕に向いて言った。
白い歯と真っ黒な瞳がキラリと輝いたようだ。
「大丈夫?」
彼がもう一度聞くまで、僕はボーっと彼の顔に見とれていた。
「は、はいっ!!大丈夫でスゥ!!」
思い切り素っ頓狂な声を上げてしまった。
顔が真っ赤に染まる。
「あまり大丈夫なようには見えないなぁ。そこの喫茶店ででも入って落ち着きますか?」
「はい!!」
棒のようになった足を交互に出して、僕は彼の後に続いて店に入っていった。
「ミルクで良いかな?」
店の中で恥ずかしくないように、僕は首を縦に振った。
「じゃぁ、彼女にホットミルクを。ボクはキリマンジャロで。」
ウェイトレスに注文する姿も格好良い。
…しばらくの沈黙…
その優しさが心地好い。
彼を見つめながら、次第に気分がほぐれてゆくのがわかった。
しばらくすると、普通に喋れるようになった。
他愛もない会話が交わされる。
僕は彼のジョークにコロコロと笑っていた。
そのまま食事に誘われた。
断る理由もなく、僕は彼にエスコートされてゆく。
レストランで美味しい料理を堪能した。
ホテルの最上階のラウンジでカクテルを傾ける。
…
僕はベッドの上にいた。
着ていた服が1枚1枚、彼の手で剥ぎ取られてゆく。
今、ブラジャーのフックが外された。
ストラップが肩を滑り落ちる。
「その手を退けて。」
胸に当てた手がブラジャーと一緒に取り除かれる。
小振りなバストが露になる。
彼の唇がその先端を覆った。
堅くなった乳首が彼の舌で弄ばれる。
そのまま、二人の身体がベッドの上に倒れ込む。
その間にも、彼の手は巧みにショーツを剥ぎ取ってゆく。
彼の口が僕の胸から離れ、首筋を上に伝ってくる。
唇が塞がれた。
舌が入ってくる。
彼の腕が僕を抱き締める……
目覚めると、部屋には僕独りだった。
テーブルの上にメモが置かれていた。
「先に出ます。会計も済んでいます。」
シャワーを浴びて昨夜の汚れを洗い流した。
ついでに化粧も全て落とした。
下着を付け、スカートを穿く。
昨日は化粧をしていたので大人っぽく見えたが、今はそれほどでもない。
昨日と同じ服を着ても感じが違う。
それは化粧のせいだけでもないようだ。
ブラジャーのカップに隙間が出来ていた。
小振りの胸でも、確かにあったバストが平らになっていた。
慌てて身繕いを整える。
フェイスタオルをカップに詰めて形を整えた。
今度は乳首が消失したようだ。
あたふたとホテルを後にする。
股間がむずむずする。
徐々に谷間が埋まっていっているのだろう。
僕の部屋に続く階段を昇ってゆく。
ショーツの布地を膨らませているものがある。
ドアを開く。
ストンッと復元したタマが袋に納まった。
〜ヒラリ〜
窓辺に置いた鉢から、白い花びらの最後の一枚が落ちていった。
クローゼットの鏡に自分を写した。
ミニスカートを無様に穿いた『男の』僕がそこにいた…