夢の続き…



 そう、これはボクの夢の中の出来事なのだ。

 ボクはゆっくりと身体を起こした。
 夢の中ではなんでもありだ。
 夢の中でのボクは女の子だ。

 足元にはボクが寝ている。
 それは現実のボク。男のままのボク。

 もう一度、今の姿を確認する。
 それは夢の中のボク。女の子になったボク。
 パジャマを脱いで裸になり鏡に写す。
 顔や背格好はボクそのままで肉体だけが女の子になっている。
 しかし、違和感はない。
 週刊誌のグラビアの美少女アイドルと張り合えるかもしれない。
 ここは夢の中。なんでも出来てしまう。
 試しに手近の雑誌を開く。グラビアの女の子の水着を思い浮かべる。

 鏡の中のボクは水着を着ていた。
 グラビアの女の子と見比べて見る。やはり、ボクの方が可愛い。

 グラビアを捲るとワンピースを着ている写真があった。
 ボクも同じものを着てみる。
 次はブレザーの制服。ルーズソックスのたるみ具合も丁度いい。
 写真にはないが、ボク等の学校の制服に変えてみる。
 ボクはじっと鏡の中の女の子を見つめていた。



 目覚ましのベルとともに朝がやって来た。
 昨夜の夢は何だったのだろうか?夢精に濡れたパジャマを脱ぎ捨て、学生服に着替えようと手を伸ばした。が、そこに違和感があった。
 いつもならそこに黒の制服があるのだが、今朝は別のものが掛かっている。
 制服は制服でも、それは女子用の制服だった。
「ま、いいか。」
 取り合えずTシャツでも着ようと手に取った服はクリーム色のワンピースだった。
 どこかで見覚えがある。
 そう、夢の中でボクが着ていたあのワンピースだ。
 もしやと思い、整理ダンスを開ける。
 靴下がルーズソックスに変わっている。
 パンツもみんな可愛らしい女の子のショーツになっている。
 そして、もう一つ見つけた。
 グラビアの女の子のと同じ水着が入っている。
 それはボクが海パンを入れていた所にあった。

 これは夢の続きなのだろうか?

 仕方なく、女子の制服を着た。
 自分の肉体が男のままであるのは確認していたが、鏡に写っているボクは女子高生にしか見えない。
 食事に降りて行くと、母さんに見つかる。
「早く顔を洗って来なさい。」
 とだけ…
 食卓につくと父さんにもボクの姿が見えたはずだ。が、誰もなにも言わない。

 食事を終え、部屋でどうすべきか迷っていると、玄関のベルが鳴り親友の後藤慎二が来たことが告げられる。取り合えずカバンに必要なものを詰め込んでみた。が、はたしてこのまま学校に行かなければならないのだろうか?
 待ちくたびれた慎二が上がってきた。
「この制服おかしくないか?」
 慎二に聞く。
「別に。」
「これだって女子の制服だろ?」
「それがどうした?これはうちの制服だろ。時間がないんだ。早くしろよ。」
 ボクが逡巡としている間に、慎二は余計なものを見つけてきた。
 ルーズソックスだった。どこからか取り出した靴下止めの糊も一緒に手渡す。
「先に出てるぞ。」
 そう言ってボクのカバンも持っていってしまった。
「待って。」慌てて後を追う。
 スニーカをつっかけて玄関を出るとニヤニヤした顔で慎二が待っていた。
「カバンを寄越せ!」
 ボクはひったくるようにしてカバンを奪い取ると学校に向かった。
 そのうしろを余裕の雰囲気で慎二がついてきた。


 誰も、何も言わなかった。
 全くの拍子抜けだった。
 男子生徒が女子の制服を着て登校してきたのだ。一悶着あってしかるべきが、なにもない。教師も生徒も平然としている。まるでそれが当たり前かのように。無理して無視しているような気配も一切感じられない。
「どういう事だ」
 ボクは後ろの席の慎二を問い詰める。
「別にどうっていう事はないと思うよ。不自然な所があるとすれば、お前の態度だけだ。ほら、注意しないとパンツが丸見えだぞ。」
 ボクは慌ててスカートの後ろを抑えた。
 そのまま椅子に腰を戻す。
「つまり、気にしているのはボク一人だけだって言うのか?」
「そのとおり。」
 慎二は平然と言い放った。

「和田さん?」
 次の休み時間、トイレの前でクラス委員の大貫由香に声を掛けられた。
「和田さん。そちらは男子トイレよ。」
「えっ?」
「あなた、ぼんやりしていて女子トイレの前を通り越してしまっていてよ。」
 ボクが返事に詰まっていると、彼女は手を取ってボクを女子トイレに引きずり込んだ。始めて見る女子トイレの中でボクは呆然としていた。
「あなたはそちらを使ったら宜しくて。」
 そう言って彼女は隣の個室に入っていった。
 仕方なく、ボクも目の前の個室に入る。和式なので立ったまま用は足せない。スカートをたくし上げ、ショーツを降ろし、便器に跨がる。
 こんな恰好で小用だけ済ませる事になろうとは思ってもいなかった。

 個室を出ると、由香がボクの出てくるのを待っていた。
「あなたにお話があるの。お昼をご一緒しません?」
 予期せぬ提案に戸惑いつつもOKと返事をしてしまった。
「では、お昼に。」
 そして、授業を開始する予鈴が鳴った。


 昼休み。弁当を一緒に食べた後、由香に連れられて来たのは社会科研究室だった。
「今日は先生方、研究会でいらっしゃらないの。」
 そういってポケットから取り出した鍵で扉を開ける。
「鍵は閉めておいて。」
 と言いながら、さらに奥の準備室の扉を開ける。
「ここがあたしたち社会科部の部室よ。」
 そういって招き入れられた部屋は、カーテンを透して弱まった光で薄暗く照らしだされている。様々な地図のロールが立てかけられた中に、全く異質なソファベッドが置かれていた。
「とりあえず、ここに座って。」
 ボクは由香の指図に従ってソファに腰掛ける。
 その横に由香も座る。大きなソファにも係わらず、由香はボクに身体を密着させるようにして座った。彼女が動く度に甘い石鹸の香りがボクの鼻をくすぐる。


「今日は戸惑ったでしょう。」
「えっ?」
「わたし、以前より和田さんの事が好きだったのよ。でも、女の子同士ではイケナイ関係になってしまうので、魔法であなたを男の子にさせて戴きましたの。」
「男の子?」
「そうよ。今あなたのココにはオチンチンがあるのでしょう?」
 由香はスカートの上からボクの股間を掴んだ。ショーツと一緒にボクのモノが握られる。由香の髪の甘い香りでボクのモノは大きくなりかけていた。
「あなたが男の子なら、わたし達は愛し合う事が出来るのです。しかし、あの後藤が別の魔法をあなたに掛けたようなのです。あなたは今、自分がずっと後藤と付き合っていたという誤った記憶を植えつけられてはいませんか?」
「ちょっと待って。大貫さんの言っている事はボクの考えられる限度を越えているみたいだ。もう少し順序立てて考えさせてくれ。」
「いいわよ。まだ、時間は充分あるわ。次の時間は自習だし、わたし達は気分がすぐれないので保健室に行っている事になっているのよ。」
「…そ、そうなの?」
「だから、横になっていましょう。」
 ボクはソファの上に押し倒された。が、今朝からの事を思い返しているボクには彼女の行動に構う余裕はなかった。
 が、彼女は更にスカートの中に手を入れ、ショーツを引き下ろすと直接ボクのモノに触れてきた。そいつは嬉しそうに硬さを増している。スカートの中で彼女の指をボクのモノを次々と刺激してゆく。
「あぁU」
 ボクは耐えきれずに声を漏らしていまう。
「可愛いU」
「駄目だよ。こんなんじゃ考えられない。」
「何を考えるの?」
「ボクは男だ。」
「そうよ。わたしが魔法で男の子にさせてもらったの。」
「違う。ボクは元々男だった。」
「いいえ、こんな可愛い男の子はいないわ。」
「あんっU」
 彼女の指が先端を刺激する。
「ほら、こんな可愛い声をしているの。」
 彼女はそう言ってスカートをまくり上げ、ボクのモノを口に含んだ。
「ああ、ああ、ああU」
 舌先で巧みに刺激しながら指で柄を扱く。
「あ〜〜〜〜〜〜っU」
 ボクは彼女の口の中に放出していた。

「でもねUあなたは男の子になったけど、女の子でもあるのよ。」
 彼女の指が裏側をなぞり上げ、根元を通りすぎる。
 そこに袋はなかった。
 替わりに肉の合わせ目がある。
 彼女の指がソコを刺激すると、じわりと染みだしてくるものがあった。
「ほら。濡れているでしょうU」
 彼女の指が陰核に触れる。
「あんっU」
 さっきよりも強烈な快感が駆け抜ける。
「そうよね。わたしもこちらの方が良いわU」
 彼女の指はさっきよりも巧みにボクを攻めたてる。
 クチュクチュと音を立てて動き回る。
 瞬く間にボクは昇り詰めていった。
「あ〜〜〜〜〜〜っU」
 同時にボクのモノからも絶頂の証が放出される。
 由香はそれを嘗め取りながら、愛撫を続ける。
 悦楽の余韻を楽しむ間もなく、再び昇り始める。
 と、同時にボクのモノが小さくなってゆく。
 親指で弄びながら肉体の中に押し込もうとする。
 小さくなるにつれ、快感が凝縮してゆく。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っU」
 快感は止まる所を知らない。
 いつの間にか服を脱がされ、全裸になったボクはソファの上に淫らな姿を晒していた。大きく股を開き、由香の手技に身悶え喘いでいた。

 ガチャリ!!
 遠くで鍵の外れる音がした。
 扉の開く音で現実世界に引き戻された。
「慎二…」
 ボクは開かれた扉の所に仁王立ちする学生をすぐに認めた。
「うそ…」
 由香が振り返る。
「鍵はいくらでも手に入るさ。」
 慎二が目の前に鍵束をちらつかせる。
「しかし、勝負は決まったな。和田は男にはなれなかった。勝負は俺の物だ。」
「そんなことはありません。これは一時的なものよ。」
「なら、今この場で男に戻してみろ。」
「いいわ」
 そう言うなり、由香は立ち上がると掌をボクに向ける。彼女の手から光の筋が伸び、ボクを包み込む。
 ボクはゆっくりとソファから持ち上げられる。
 股間がむず痒いが、身体を動かす事ができない。
 そうこうしていると、慎二の掌からも光が放たれた。
「邪魔をしていで。」
 由香が叫ぶ。
「しかし、俺も必死なのねで。」
 ゆったりとした慎二の低い声に力が入る。
「あーーーーーーーーっ!!」
 二つの異様な力にボクは引き裂かれた。


「どうする?」
 慎二の声がする。
「わからないわ。」
 由香の声がする。
「では、どちらの和田が気が付くかが勝負だな。」
「そのようね。」
 二人のやりとりを聞いているうちにボクはゆっくりと覚醒していった。
 どうやらボクはソファに座らされているらしい。
 彼らはその前に立って話をしているようだ。
 しかし、この部屋にはもう一人いるようだ。
 ボクと一緒にソファに座っている。
 身動きしたようで、クッションが微妙に歪む。
 そちらを見る。
「あっ!!」
 二つの声が同時に上がった。
 ボクともう一人の声。
 男の声と女の声が見事にハモっている。

 ソファの上には男のボクと女のボクがいた。
 二人とも裸のまま座っている。
 男のボクの股間には萎えてしまっているが、確かに男の徴がある。
 女のボクの股間にはそれはない。さらに、何もなかった胸には立派な膨らみも出来ている。
「どういうコト?」
 綺麗にハモった声が準備室にこだまする。
「つまり、君は俺たちの魔法が干渉しあい、二つに引き裂かれてしまったのだよ。」
「それも、男と女の肉体にね。」
「しかし、どうやら心は一つのようだ。二つの肉体に一つの心…」
「でも、良いではありませんか。わたしは男の和田さんを戴きますわ。」
「では、俺は女の和田を貰う。」
「ち、ちょっと待って。ボクの意思は無視するのか?」
「なら、どちらが良い?」
 こちらのハーモニーはどこも揃っていない。
 が、詰め寄られ、ボクは互いにボクを見た。
「可愛いU」
 ボクの口を突いたのはそんな台詞だった。
 これが一目惚れというものなのだろうか?
 ボクにはまわりの雑音が一切聞こえなくなっていた。
「愛してるU」
 ボク等はソファの上に重なり合った。
 もう止まらない。
 めくるめく快感に、ボク等は陶酔していった。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜U」

−了−


    次を読む     INDEXに戻る