ふ た り



 さっきまで、僕は男の子だった。
 姉さんに弄ばれ、硬くなったおちんちんも今はもうなくなってしまった。替わりに女の子の小さなクリトリスが割れ目の間から覗いている。姉さんの指先がソコに触れると熱い雫が内股を伝って落ちる。
 僕は今、女の子だ。


 昔から、僕は姉さんに逆らえなかった。東京の大学に合格したのも、両親の元から僕を連れだして思う存分楽しもうという姉さんの企みがあったからだ。もちろん、楽しむのは姉さんであって、僕はその道具に過ぎない。
 先に、東京に出て短大を卒業した姉さんは、そのまま東京の会社に就職しマンション生活をしていた。そのころから僕を呼び寄せるつもりだったのだろう、そのマンションは一介のOLにはあまりにも広すぎた。とうぜん、僕の東京での下宿先はここ以外に選択の余地はなかった。
 とにかく、受験のためここに泊まった時でさえ、受験勉強などはなから諦めるほかはなかった。
「ただで泊めてやるのだから、炊事・洗濯はおまえの仕事よ。」などと言い、いいように僕をこき使った。それでも、受験の時はまだ良い方だった。
 合格通知に喜んだのも束の間、僕が東京に出てくるのを姉さんはてぐすねひいて待っていた。僕は「東京」という新しい環境を楽しむ間もなく、瞬く間に姉さんの虜となってしまった。僕が来るのを今か遅しと待っていただけあって、さすがに、姉さんは色々なものを準備していた。布団から歯ブラシまでの家財道具に始まり、鞭・縄・蝋燭を始めとする夜の遊び道具まで一式を揃えていた。さらに、ご丁寧にも僕の服まで用意していた。それはスカートを主体とする女物だった。

 姉さんは僕に女装を強要した。そして、僕の持ってきた男物の服をどこかに隠してしまったのだ。しかたなく、フリルの付いたショーツを穿き、ブラジャーの下に詰め物(これも姉さんの用意したもので、最新のハイテク素材で出来た人工バストだ)をする。ブラウスに薄手のセーター、そしてストッキングと膝丈のスカート。かつらをすると一人前の女の子の出来上がりである。
 僕はこの姿のまま大学に通い、買い物をし、街を歩かされた。もともと、声も高いほうなので、仕種や言葉遣いに注意していれば誰も僕の事を男だとは思いもしない。近所にはすでに妹として紹介されている。しかたなく大学でも「女の子」で通している。しかし、中身は男の子のままである。
 しかし、それもさっきまでのこと。



 姉さんは僕の事を自分の所有した「人形」としか思っていないのだろう。良くいってメイド・ロボットか、お遣いをするペットの犬程度である。僕の人格など頭から認められていない。そして、彼女の性癖である。
 一言でいってしまえば「ナルシスト」である。即ち、自分自身しか愛することができない。ましてや恋人などいるはずもない。彼女は少しでも自分に近い者としか触れ合うことをしない。他人の目にはそれをレズと受け取られているようだが、僕が東京へ出て着て以来その女友達との交際は一切なくなってしまったようだ。その後釜となったのが僕自身であった。傍目には近親相姦であるが、僕は彼女の「弟」ではなかった。女装のまま愛撫され、奉仕する。彼女の女友達の役割から次第にもうひとりの彼女自身の役割を強制されていった。髪形を揃え、大人っぽい化粧をし、お揃い下着を着けた二人はまるで鏡に写したようだ。
 しかし、姉さんはそれでも満足しなかった。僕の体に男の痕跡がある限り、彼女の分身には成りえない。ある日、非合法に手に入れた薬を僕に投与した。それはホルモンバランスを崩し、性転換を容易に起こさせる魔法薬だった。
 すでに、髪も十分に延びて自毛で姉さんと同じ髪形を作っている。胸もホルモン薬の投与で人工バストを使わずとも姉さんと同じ形に膨らんでいる。姉さんと一緒にエステに通い、全く同じ体型を維持している。そして今日、最後に残った違いが修正されたのだ。



 姉さんの指が僕の秘所を弄ぶ。
「ア〜ッU」
 姉さんと同じ声が僕の喉から溢れ出る。
「さぁ、私にも。」
 僕の指先を自分の秘所に誘う。
「アァ〜U」
 同じ声が姉さんの喉から溢れてくる。
 いや、もう彼女は『姉』ではない。僕は彼女自身であり、彼女はまた僕自身なのだ。
 指を動かす。僕の喉から媚声が漏れる。僕の秘所が嫐られる。僕は快感に悶える。
 僕は今、2つの肉体を持っている。
 一つの魂に2つの肉体は手に余る。
 僕は余った肉体を押し入れに押し込み、忘れることにした。

「近頃妹さんはいらっしゃらないのね?」
 近所の人に問われる。
「ええ、どうも都会の空気が合わないらしくて田舎に帰りましたの。」
 僕が答える。

 夜になると、僕は自分の全裸の姿を鏡に写す。
 鏡を見ながら自分の秘所に指を這わす。
「ア〜ッU」
 もう一人の自分が鏡の向こうで媚声を上げている。
 彼女の指が僕の秘所を嫐る。
「アァ〜U」
 僕も同じように媚声を上げた。

−了−


    次を読む     INDEXに戻る