実験



「まったく・・・なんでワシが」
脂ぎった顔。
たるんだ腹。
寝癖とフケだらけの髪。
これぞオヤジといった風貌の男は、ひとりブツブツ言いながら駅前を歩いていた。
「この歳でリストラかあ・・・」
重たい足取りで歩く彼は、ふと目線を向けた先にあるものに足を止めた。
 
「急募!!簿記・会計。年齢不問」
 壁に張られた幾枚ものチラシ(ほとんどが風俗関係だが…)の中で、それは不思議に輝いていた。良く見ると何の変哲もない求人広告だったが、なぜかその紙だけが彼の目に止まった。
 彼は、チラシを剥がすとそのまま書かれていた住所に向かった。
 
「またですか。」応対に出た男はしかめ面をしていた。
「誰かの悪戯だと思うんですが、この求人は既に打ち切られているのです。しかし、1月に一度は貴男のように真新しいチラシを持って現れる人が絶えないんです。」
「そ、そうですか…」彼は俯いた背を男に向けた。
 その、彼の背から男が声を掛けた。
「どうしても、お仕事が欲しいのであれば…」振り向いた彼の耳元で声をひそめて言った。
「ウチの研究部門の実験に手を貸す気はありませんか?」
 彼は考えた。これでどうにかなっても誰の迷惑にもならなりはしない。
 それより、リストラで明日の職もない生活を送るよりは…
 
「この椅子に座っていて下さい。」白衣の男は彼を座らせると部屋を出ていった。
 しばらくして反対側の扉から婦長さんのような女性が現れた。
「早くこちらに来なさい。」彼女に引かれるように現れたの全裸の女性だった。
「ほ〜。ベッピンなネ〜チャンじゃないか。」彼は立ち上がると女性の胸を鷲掴みした。
 ちらりと、脇の婦長を盗み見る。彼女は何も見ていないかのようにそこに立っていた。
「なんでもありだな?」彼は女性の剥き出しの尻を撫で、そのまま床の上に引き倒した。
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「では次ぎにここに立っていて下さい。」白衣の男は彼を棺桶のような箱の中に立たせた。
 しばらくして扉が開かれると先程の婦長さんが立っていた。
「早くこちらに来なさい。」彼女に引かれるように彼は明るい部屋の中に立たされた。
「ほ〜。ベッピンなネ〜チャンじゃないか。」椅子に座っていた男が立ち上がった。
 脂ぎった顔。たるんだ腹。寝癖とフケだらけの髪。
 これぞオヤジといった風貌の男は、近づくと彼の胸を鷲掴みした。
 なんと、彼の胸にはふっくらとした女性のバストがくっついていた。
「なんでもありだな?」男はそう言うと、彼の剥き出しの尻を撫で、そのまま床の上に引き倒した…


−了−

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