洋館−その後− 4



 自動車を手に入れた俺は、行動範囲を大きく広げた。
『俺』の家にも造作無く辿り着ける。
 早速、ドアのベルを押した。
「は〜い。どなた?」
 奥から由美子の声がした。
「ゆ、由美子!!『俺』は何処に居る?」
「あ、あの〜?どちら様でしょう?」
 由美子の顔が不審に満たされている。
「お、俺だよ。洋介だ。」
「…」
 一瞬の沈黙の後、由美子が諭すように言った。
「お嬢ちゃん。あまり訳の判らない事を言うもんじゃありませんよ。それに、その格好。良い歳をして猫耳に尻尾はないでしょう?そんなんでは本当に大切な話も誰にも聞いてもらえませんよ。」
 俺が洋介だと言い張っても、今の由美子には通じそうもない。
 俺は不本意ながらも、可愛い子ぶって言った。
「ごめんなさい。でも、洋介さんの事でどうしてもお話したい事があるんです。」
 目に涙を浮かべるに至って、自分の事ながら役者だなぁと思った。
 その涙に騙されてか、ドアが開かれた。
 
 俺の前に出されたココアを飲み干すと一息ついた。
「で?」
 由美子が促す。
 俺は台詞を選びながら由美子に言った。
「以前、湖の近くの洋館に泊まった事がありますよね?」
 由美子の表情を探りながら言葉を続ける。
「その時を境に、洋介さんは洋介さんじゃなくなってしまったんです。」
「そうね。あの時を境に洋介さんは別人のようになってしまったわよね。」
 由美子が肯定する。
「けれど、それは貴女にも言える事なのでしょう?」
 由美子の顔が歪んでいた。
 俺は何か異常な事態が起ころうとしている事を感じていた。
 が、それを感知するには時期を逸していたようだ。
「どぉ?女のコの身体は素敵でしょう?」
 どうやら、ココアに一服盛られていたようだ。
 もう、手足は言う事を聞かない。
「そうよ。今はアタシが『由美子』なの。判る?」
「な、何をするつもりだ?」
「そうね?貴女がどれくらい女のコになったか診てみるのも一興ね。」
 そう言って、俺の後ろに回り込むと着ているものを一枚一枚剥ぎ取っていった。
 全ての衣服を剥ぎ取ると、本物の由美子ではありえない腕力で俺の身体を抱え上げ、ベッドの上に放り込んだ。
「さぁ、お嬢ちゃん。イイ事をしましょうね。」
 妖艶な笑みを湛え、全裸となった由美子が俺の上に覆い被さってきた。
 フッと、大きな猫耳に息を吹き掛けられただけで、俺の全身に電気が走ったみたいに感じていた。
 胸の先端が固く尖ってゆく。
 首筋に指が這わされる。
 何でもない事のようだが、それだけで俺の肉体が反応する。
 喉から出掛かる喘ぎ声を必死で我慢する。
「良いのよ。我慢しなくても。でも、いくら貴女が頑張っても、身体は正直よね。」
 彼女の指が太股の内側を撫で上げると、股間からじわりと滲み出てくるものがあった。
 唇が塞がれた。
 俺の口の中を蹂躪した舌先が喉の上を這い進み、胸へと達する。
 やがて一方の小山の頂きを目指す。
 そこには固く、紅い肉球があった。
 彼女の舌が肉球を一巡した後、そこに白い歯が突きたてられた。
「あう!!」
 俺はたまらずに声を上げていた。
 一度、我慢の限界を越えてしまうと、些細な刺激にも耐えきれなくなっていた。
「あう。あっ。ああ…」
 堰を切ったように俺の喘ぎ声で寝室が満たされてゆく。
「あ〜〜〜〜〜〜っ!!」
 由美子の指が俺の股間に突きたてられた。
 俺の中で彼女の指が蠢く度に俺は嬌声を発していた。
 
 
 
 


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