エイプリルフールの午前中はどんな嘘をついても許される。
 そして、正午には真実が固定する…「USOノート」なるものを手に入れた。
 
 試しに兄貴に
 「お前は俺の兄貴だったんだ。」
 と言うと、それが「嘘」になり「真実」が現実化する。
 「何言ってんだよ。兄貴はあんただろ?」
 と兄貴は俺の弟になってしまった。
 「そうだ。弟だったな。」
 そう言うと
 「こんな可憐な少女が男の子の訳ないでしょ!!」
 と弟から妹になってしまった。
 
 まあ、兄貴の事は多少ウザかったので、このままでも良いかと俺は親友の待つ駅前に向かった。
 いつものように、奴は早めに着いて俺を待っていた。
 気心の知れた親友であるので、あまり文句は言えないのだが…奴はアリテイに言えば根暗オタクそのものの風貌をしている。
 こんな男とつるんでいてはリア充など有り得ないのはわかっていた。
 そこで「USOノート」だ。
 
 「よう♪今日も相変わらず元気なさそうじゃん。」
 と声を掛けると
 「どこが元気ない…だよ。いつもと同じノリノリだぜっ!!」
 「それにしてはダサい格好じゃないか?」
 「そんな事はないだろ?」
 いつの間にかヨレヨレのワークシャツとぶかぶかのジーパンがパリッとしたカラーシャツと折り目の付いたスラックスに変わっていた。
 しかし、俺が求めていたのはそんなんじゃない!!
 「男の娘を辞めたからってズボンはないだろ?」
 「辞めてなんかないよ。それにこれはキュロットだし♪」
 と親友は「男の娘」になっていた。
 勿論、服も可愛い女の子のものに変わっている。
 
 もうすぐ正午だ。
 これが最後になるだろう。
 「けどな、どんなに可愛くても男のお前を彼女にはできないよ。」
 
 そして駅前広場に正午を告げるチャイムが鳴った…
 
 「何言ってんだよ。ボクが男だから良いんじゃないか♪」
 どうした?奴は男のままだと言うのか?
 「良い加減、ボクを彼氏として見て欲しいんだけどね♪」
 と奴に抱き締められた。
 奴の腕の力で、俺の胸が押し潰される?
 あれ?奴の背丈って俺より高かった?
 
 上を向くとそこに彼の顔があった。
 そのまま、あたしはキスされていた♪
 
 
 


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