(23)リン2
「ハイヤ〜ッ!!」
軽快に雑魚を斬り倒してゆくリンを、アーサーは微笑ましく見ていた。
「彼女は大丈夫ですよ♪」
と脇で槍を振るうロンが受け合った。
華麗に舞うリンの更に向こうでリョウが力任せに雑魚を薙ぎ倒してゆく。
この二人は先日のクエストで侵入したダンジョンに仕掛けられていたトラップで中身が入れ替わってしまっていた。
既に二人とも、元に戻る事は考えていないようだ。
アーサーは昨夜、彼の腕の中で悶え淫れていたリンを思いだし、再び微笑んでいた。
(あのリンの中身がリョウだとはね♪)
彼らはまだリンにアーサーが入れ替わりに気付いている事を知らせてはいない。
甲斐甲斐しくアーサーに付き従う彼女を、皆心暖かく(?)見守っていた。
「アーサー。呆ーっとしてると、雑魚でも致命傷になりますよ♪」
ロンの声にアーサーは剣を構え直した。
「では、ここは君たちに任せて、私はラスボスに向かいますか♪」
魔法呪文を唱えて剣を振ると、魔法炎が吹き出してダンジョンの入り口までの通路を確保した。
「リン。行くよ!!」
と彼女を呼び寄せ、二人でダンジョンに侵入していった。
「はあぁっ!!」
との気合いと共にロンの脇にリョウが飛び込んできた。
「やあ、リョウ♪調子はどうだい?」
ロンが声を掛けると、
「上々だよ。思いきり身体を動かすのがこんなに気持ち良いとは思わなかったよ。この身体を手に入れて正解だね♪」
リョウは再び飛び上がると、次の獲物逹に対峙するのだった。
アーサーとリンはダンジョンを奥に向かってゆく。
今のリンはどんな簡単なトラップでも避けて通ってゆく。
「リン。慎重になりましたね♪大人になりましたか?」
「大人…って、無駄な体力を使いたくないだけよ♪」
トラップは避けられても、上級創造物を避ける訳にはいかない。
リンが斬り込み、牽制している間にアーサーが魔法に専念する。
「行きます。」
阿吽の呼吸でリンがアーサーの射線から外れ、その直後にアーサーの攻撃が届く。
「やったね♪次、行こう。」
と倒れた上級創造物を避けて奥に向かう。
「リョウの慎重さはそのままという事か。良いようにお互いの特徴が混ざりあってますね♪」
アーサーの呟きがリンに聞こえる事はなかった。
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