(20)発覚


 アーサー逹男性陣は練習場で一汗かいた後、軽い昼食を採っていた。
 「リンて、何か雰囲気が変わった感じがしないか?」
 アーサーはリョウ逹にそんなことを振ってみた。
 リンとリョウが入れ替わってしまった事はアーサーは知らない事になっている。
 「そ、そうか?少し身体は鈍ってたけど、いつものリンだろ?」
 とリン=リョウが惚ける。
 「アーサーを看病してる間に女の子として目覚めたのかもね♪」
 とロン。
 「そりゃあ、違って当たり前じゃ…」
 ニキがNGワードを踏みそうになり、リョウとロンからきつい視線がニキに飛んだ。
 「…って、どんなとこが変わってた?」
 と自分の発言をうやむやにする。
 「そうだね。以前より格段に可愛くなったね♪」
 「そ、そんなに可愛くなかった?」
 と聞き返すリン=リョウは、リンの地が見え隠れしているのにも気付いていないようだった。
 
  
 「以前の彼女は、自分の中な女を抑え込んでいたような感じかな♪今の彼女は自分が女である事を素直に認めているね。」
 「お、俺が素直じゃないって?」
 「おい、リョウ。あまり興奮するんじゃない。別にお前自身の事じゃないだろ?」
 ロンがリョウを落ち着かせようとするが、アーサーは更に油を注いでゆく。
 「君もリンの事をそこまで想っているのか。どうやら私逹は恋敵になってしまったかな?」
 「…恋って!!あたしとリョウがそんな関係になる事なんてないわ!!あたしが好きなのは…」
 「おいリョウ、止めないか!!」
 慌てたようにロンがリョウの口を押さえた。
 が…
 
 「クックック…」
 とアーサーが笑いだした。
 皆がアーサーを見る。
 「もう知ってるんだよ。リンとリョウが入れ替わったって♪」
 アーサーの言葉に皆が固まった。
 「聞いてたんだ。入れ替わりを私には知らせないようにする話をね♪ひどいじゃないか。私一人を除け者にするなんて♪」
 「全部知ってたって事か?」
 「ああ。だから今夜リンに着飾れって言ったんだ。」
 「本来のリンなら、私が言っても聞いてはくれないだろうけど、皆も面白がると思ってね♪」
 「確かに、あのリンにドレスを着せるのは面白いけど…」
 「まあ、彼女には私が気付いていることはしばらく言わないでおこうか♪」
 アーサーの提案は、すんなりと受け入れられた。
 
 「ところで、いつまで入れ替わっているつもりなんだい?」
 「最初は即にでも元に戻りたかったんだが、俺はこの身体が気に入ってしまったんだ。できれば、ずっとこのままでいたいな。」
 「あとは彼女の気持ち次第か?」
 「多分、時間が経てば経つだけ精神が肉体の影響を受けて、自分がリョウだったと意識する事がなくなると思う。」
 「君の精神もかなり侵されてるのか?」
 「俺の場合は自分から肉体との融合を図ったからね。この身体を自在に扱うにはその方が良いと思って♪」
 「身体を使う…か。だから、昨日は殊に可愛さが増していたんだね♪」
 「ああ。彼女は自身の戦い方に目覚めた事で、融合も進んだと思う。」
 「本当にそれで良いのかい?今なら元に戻す方法もあるかも知れないよ。」
 「彼女には悪いが、俺はもうこのままでよいと決めたんだ。後は彼女が今のままで充分な幸せを感じられるよう、可能な限り支援してやるだけだ。」
 「アーサーも今の彼女なら満更でもないのだろう?」
 「わ、私も可能な限り協力するよ。」
 アーサーはロンの問いには答えなかったが、皆は彼の反応を微笑ましく思っていた。
 

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