(15)練習所
店を出てしばらく行くと練習所があった。
「この所、ここで皆で肩慣らししてるんだ。お前もアーサーな看護で体が鈍ってるんじゃないか?」
確かに、クエストが終わってからは体を動かしていない。
「それは良い提案だわ♪」
あたしはあのお店に行ってからのもやもやしたした気分を晴らす為にも体を動かすのに賛成した。
「じゃあ行くか♪」
手荷物をロッカーに預け、広場に出た。
そこここで模擬剣を打ち合っている男逹がいた。
が、あたしが入っていくと、彼らの動きが止まった。
それは、あたしが「女」だからだ。
この世界では剣を振るう女はそう多くない。剣舞をする女を含めてもだ。
リンはそんな中でここまで腕を磨いてきたのだ。
「俺が始めてここに来たときは新鮮だったなぁ。多少ガタイがでかいので振り向く奴はいても、好奇の目で見て来る奴は一人もいなかったんだ。」
その「好奇の目」というのが、今、あたしに降り注いできているやつだ。
「一本いくか?」
「望むところよ♪」
彼の大剣があたしの前の空間を薙ぎ払った。
それはリョウの剣筋そのものだった。
回避はしたものの、切っ先の生み出す空気の流れにもっていかれそうになる。
模擬剣でこの威力だ。実剣ならばこの圧力は倍以上にもなるだろう。
「それっ!!」
今度は上段から斬り降ろしてきた。
剣を重ねて受け止めたが、その威力に耐えきれず膝を付いてしまう。
「リン。身体が鈍ってるぞ♪」
彼は再び剣を振り回してきた。
受け流し、懐に潜り込もうとしたが、彼の脚が目の前に飛んできた。
辛うじて地面に転がって回避する。
見上げると、彼はまだ余裕の笑みを浮かべている。
「そーーりゃあ!!」
俺は、渾身の一撃を繰り出した。
が、呆気ないくらいに跳ね返された。
「それは俺の戦い方だろう?リンはリンなりの戦法でないとな♪」
と俺の頭上から再び剣が落ちてくる。
避けようと横跳びしようとして、その先にも剣があった。
俺の剣を合わせて防いだが、思いきり飛ばされてしまった。
(頭上からの攻撃はフェイントか?)
「面白い攻撃だろ?この身体だと色んな技を思い通りに繰り出す事ができるんだ♪」
今の彼は、リョウのパワーとリンの剣技を併せ持った最強の戦士となっていた。
逆に、今の俺は力に頼った剣技しかないにも関わらず、出せる力は高が知れる身体である。
(本当にリンの剣技を身に付けないと、この先やっていけないんじゃないか?)
次を読む
INDEXに戻る