(12)計画
「ふーん。そういう事か。ダンジョンのどこかで入れ替えのトラップに掛かったのだろう。」
アーサーはベッドの上で起き上がり、遠見の魔法で仲間逹の会話を聞いていたのだ。
「今のリンがリョウだというのか♪面白いな。しばらく気が付かないフリをしてあげよう♪」
とアーサーは再びベッドの上に横たわった。
アーサー程の魔法の使い手であれば、トラップの効果を解除する事は可能である。
が、今は体力も魔法力も十分には回復していないので、即に元に戻してやる事はできない。
また、完全回復するまでは次のクエストに手を付ける事もできないので、アーサーにとっては良い暇潰しの種になったようだ。
そこに一行が戻ってきた。
アーサーが寝ているので皆静かに思い思いの席に着いていた。
が、リンがいつもならリョウが座る場所に着いてしまった。
「ひえっ?」
襟首を吊られたリンが変な声をあげた。
「リン。そこは俺の席だ。」
とリョウに席を奪われた。
「お前は床のクッションが定席じゃないか。別にアーサーの横にいても構わないがな♪」
ニッと笑うリョウ。
アーサーは薄目を開けてそれを見ていた。
(リョウの中身がリンだとは到底思えないな。本来のリョウはリョウでリンの中で四苦八苦しているのだろう。見ていて飽きなさそうだ♪)
リンは「いつものよう」にクッションの上に座り…胡座をかこうとして座り直していた。
「んん…」
わざとらしくないように軽く呻いてアーサーは起き上がった。
「やあ、皆戻ってたのか。心配掛けたね。」
と一人一人の顔を見廻した。
「特にリョウ。最後の君の飛び出しが無かったらどうなっていた事か。」
「何とかなって良かったよ。いろいろあって、間に合わなかったらと危惧していたんだ。」
「いろいろって?」
「リンの奴が後先も考えずに突っ走るもんだから、そこここでトラップに引っ掛かるんだ。辛うじて致命傷にはならなかったが、起動したトラップを一つづつ潰しにいったので時間が掛かったんだ。」
「それは大変だったね。リンも怪我はなかったかい?」
アーサーの視線を受けたリョウ=リンは
「大丈夫。身体は何ともなかったわよ♪」
と答えるのが精一杯だった。
(「身体」はねか…)
アーサーは更に突っ込みたかったが、次の計画を発動させた。
「皆ありがとう。今日は無理だが、明日の晩は皆で祝杯をあげよう。ロン。手頃な場所を確保してくれないか?」
「居酒屋とかではなく?」
「今回のクエストの区切りとなる正式な晩餐にしたいんだ。」
「了解した。」
「リン」
とアーサーはリョウ=リンに向き直り
「君もちゃんと着飾ってくれるとうれしいな♪」
と付け加えた。
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