(11)隠す
戻ってくるとアーサーは眠っていた。
まだしばらくは眠っているだろう。
今度起きた時には、俺とリンが入れ替わっている事を話すべきだろう。
だが、どう切り出したら良いものだろうか?何故かアーサーの目を見ると、言いたい事をそのまま伝える事ができなくなってしまう。
この身体の所為なのだろうか?辛うじてアーサーの目を直視しないようにすれば何とかなるのだが…
このような事を話すときに視線を外しては信じてもらう事などできないだろう。
悶々と考えているうちに、ロン逹が戻ってきた。
アーサーが目覚め、スープを飲んだ事を伝えた。
「リン。お前が飲ませてやったのか?」
とリン=リョウが真っ先に聞いてきた。
「仕方ないでしょ。アーサーがスプーンを握れないっていうから…」
「なかなか良い雰囲気だったんじゃないか♪」
「何よ。その良い雰囲気って!!」
「いやぁ、お前も女の子らしい事ができるんだなぁと思ってな♪」
「女らしいって、あたしは元々…」
「ああ、リン。ここには他にも人がいる。騒ぐんだったら部屋に戻ってからにしようね。」
俺はリンにからかわれているのに対抗したかったが、ロンに割り込まれ、大人しくするしかなかった。
「リン。アーサーにはまだ君逹の事は話してないのだろう?」
「さっきはスープで手一杯だったからね。次にアーサーが起きたら話てみるわ。」
「その事なんだが、しばらく君逹の事は伏せておいてもらえないだろうか?」
「何で?」
「君逹には入れ替わった事を伏せ、互いのフリをしともらっているが、時々本来の君達にはそぐわない言動が見られるんだ。それは真相を知っている僕らの前で気が緩んだのかも知れない。」
ロンは俺逹の目を覗き込んだ。
「それを誰か見ているとも限らない。だから、なにも知らないアーサーに入れ替わりを隠し通せれば大丈夫だという事だ。」
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