(10)目覚め
「ん…」
アーサーに反応があった。
三人があっという間に宿から出ていってしまった為、ベッドの脇でアーサーを看守るのは俺の役目になっていた。
アーサーの目蓋が僅かに開いている。
「アーサー?」
俺が声を掛けると、彼はしっかりと目を開けて俺を見た。
「リンか?」
「そうよ。身体は大丈夫?」
「何日経った?」
「ダンジョンを攻略して三日目。皆は祝勝会と称して毎日昼間っから呑み歩いているわ。」
「三日か…おかげで体力はかなり回復したよ。」
「あっ、お腹空いてるでしょ?スープでももらってくるわ♪」
俺=リンを見詰めるアーサーの視線に耐えられず、俺は理由を見つけて部屋を出ていた。
「アーサーに抱かれたいんじゃないか?」
ダンジョンの中でリンの発した言葉が頭の中で繰り返されている。
意識の上では「男同士」ではあるのだが、実際にアーサーに見詰められると「身体」が勝手に反応してしまう。
それは「女」としてアーサーに抱かれるための準備なのだろう。
乳首が硬くなり、乳房全体が敏感になる。
乳房だけではない。身体のそこここが敏感になり、アーサーに触れられただけであられもない媚声をあげてその場に崩れ落ちてしまうだろう。
そして、下腹部が熱を帯びてくる。
股間の湿度が急速に高まり、内股を擦り合わせるとぬるぬるとしてゆく。
それは、アーサーに抱かれ、彼のペニスをこの身に受け入れる為の準備が進んでいるという事なのだろう…
「スープ、もらってきたよ♪」
上体を起こしたアーサーの脇にスープを載せたトレイを置いた。
「ねえリン。私の手はまだスプーンを巧く握れないみたいなんだ。良かったら食べさせてくれないか?」
と提案された。
リン自身が聞いたら泣いて喜ぶシチュエーションなのだろう。
それを、中身が俺だからと言って断る訳にもいかないのだろう。
俺はベッドの端に腰掛け、スープをスプーンに掬い、アーサーの口に運んだ。
コクリとアーサーの喉を鳴らしてスープが彼の胃に落ちて行った。
「ありがとう、リン。美味しいよ♪」
「べ、別にスープはあたしが作ったんじゃないから。お礼は宿のシェフに言ってあげて頂戴っ。」
と、俺はこれ以上アーサーに何か言わせないように、2掬い目を彼の口に運んだ。
(何でこんなに胸がドキドキするんだろう?)
俺の異常を悟られないよう、機械的にアーサーの口にスープを運んだ。
「ありがとう。もう良いよ。」
と半分程空けた所でアーサーが言った。
「じゃ、じゃあ片してくるね。」
と立ち上がる。
「シェフに美味しかったと伝えておいてくれ。」
「わかったわ。」
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