(9)合流


 程なく俺達はロン・ニキと合流した。
 「リョウ。ご苦労さん♪」
 とロンがリンに声を掛けた。
 「邪魔はしなかったろうね。」
 とニキが俺に声を掛けてきた。
 「邪魔…てか、ちょっとヤバイ状況かもね。」
 「アーサーは?」
 「疲れきってるだけみたい。命に別状はないわ♪」
 「僕はリョウに聞いたんだけどね?リン。」
 「だから、それがヤバイ状況なんだって。あたしとリンが入れ替わっちゃったのよ。リンがあたしであたしがリンなのっ!!」
 「ち、一寸待て。言ってる事が意味不明だぞ。リン。」
 ロンが俺に向かってそう言う。
 「だから、あたしはリンじゃなくて…」
 「俺が説明するよ。」
 俺が更に詳しく説明しようとするのをリンが割り込んできた。
 「俺達はトラップにやられてしまったんだ。」
 ロンとニキがリンに注目する。
 こうなったら俺は黙ってるしかない。
 「簡単に言うと、トラップに掛かって俺と彼女の中身が入れ替わってしまったんだ。更に、その言動が肉体に影響されてしまうようで、こんな喋り方をしてるが彼女がリョウなんだ。」
 皆の視線が俺を向いた。
 そのどれもが…ニキでさえ…俺を見下ろしている。
 俺は改めてリンに…女になってしまった事を実感した。
 「つまり、まるっきりリョウみたいな喋り方をしているが、お前がリンなのか?」
 リンに向き直ったロンが確認する。
 「まあ、そういう事だ♪」
 とリンが答えた。
 
 「つまり、コレの中身がリョウさんなんだ♪」
 とニキが人差し指を突き立て、伸ばしてきて、俺の胸に押し付け…
 「きゃ!!何すんのよ。」
 俺は条件反射のようにニキの手を払っていた。
 「キャって、まるでリンそのものじゃないか♪」
 「か、身体が勝手に反応するのよ。あたしの意思じゃないんだから!!」
 「中身はどうであろうと、彼女は女の子なんだ。それなりに気を使った方が良いそ♪」
 「なら、リョウ…リンとは男同士って事?」
 「まあ、俺の中身はリンだからリンと呼んでもらっても構わないが、紛らわしいからリョウで構わないよ。」
 「その方が僕達も助かる。悪いが、外見に合わせて呼ばせてもらうよ。リンもそれで構わないだろ?」
 「ま、待ってよ。そんな簡単な事じゃないでしょ?そんな事されたら、自分がリョウだって事忘れちゃうかも知れないわよ!!」
 「トラップの影響が解除されるまでだ。そう長い事にはならない筈だよ。」
 「言動は既にリンそのものじゃないか♪あんたの中身がリョウだと言っても信じてくれる人はいないと思うよ。」
 「まっ、そう言うことでよろしくな♪」
 それ以上には、俺に反論の機会は与えられなかった。
 しかし、反論の機会が与えられても、今の俺は肉体からの影響の所為か、論理的な思考ができなくなったみたいで、彼等を説得などできなかったに違いない。
 俺は「リン」である事を受け入れるしかなかった。
 

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