(7)帰還


 「大丈夫。体力を使い切って倒れてるだけ。命には別状ないようだね。」
 遅れて到着した俺がアーサーを看た。
 リンは何もできずに狼狽えているだけだった。
 
 「先ずはここから出よう。アーサーはリンが担いでくれないか?」
 「あ、あたしが?」
 「今はお前の方が体力があるよ。俺のこの体では潰れてしまうね。」
 俺も手伝ってリン=「俺」の肩にアーサーを担がせた。
 「帰りも俺が先に立つわ。アーサーを担いでちゃ他の事はできないでしょ?」
 「あ、ああ…」
 「それに、この身体、目や耳が結構良いのね。トラップも即に見つかりそうよ♪」
 俺はそう言って、リンの剣を手に歩き始めた。
 
 「ねぇ、リンは何でこのパーティーに参加したの?やっぱりアーサー目当て♪」
 俺がリンに声を掛けると…
 「お、おっさん?」
 と俺の問いには答えずに聞いてきた。
 「なに?」
 「おっさんて結構無口じゃなかったか?それに口調も女の子っぽくなってないか?」
 「えっ?うそっ!!」
 「それで自分の事をあたしって言ったら全然違和感ないぞ。」
 「そ、そんな事ないわよ!!…って、俺今、わよって付けてた?」
 「やはり、意識してなかったか。」
 「そうね。リンも喋り方が男っぽくなってるわね。これで俺って言ってたら中身がリンだって気づかないくらいよ♪」
 
 「精神が肉体の影響を受けてるって事か…」
 
 「リンにしては珍しく考えてるじゃない♪」
 「あ、あたしがいつも考え無しにしてるって事か?」
 「そ、そんな事言ってないわよ。でも、いつものリンって言うより、俺自身が言ってるようね♪本当に一人称を合わせるとリョウ本人ね♪」
 「だ、だったらお前はどうなんだよ。まるっきりリンじゃないか。」
 「お…俺は…」
 「試しにあたしって言ってみなよ♪」
 
 「俺だろうとあたしだろうと関係ないんじゃない?」
 「じゃあ、あたしって言ってみな♪」
 「何でそんな意地悪な事言うのよ。俺は…」
 「あたしは…だろ?どっちだろうと関係ないんじゃなかったっけ?」
 

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