(4)入れ替わり


 「何よ、コレ!!」
 第三者の声がした。
 
 気配はしていなかった。
 声のした方を向く。
 手にした剣を構え…
 
 (これは俺の剣ではないだろ?)
 違和感を押さえ込み、第三者に対峙する。
 「な、何であたし?」
 男は剣を手にしていたが、構える事はせず、隙だらけのまま呆然と立っていた。
 
 その男には見覚えがあった。
 が、名前が出て来ない。
 「何者だ?」
 そう問いただしたが、自分の声に違和感があった。
 「あんた、おっさんなの?」
 男はリンが俺を呼ぶように言った。
 「あたし達、入れ替わっちゃったみたい!!」
 
 男の言葉に落ち着いて状況を確認する。
 この場所には俺以外にはこの男しかいない。
 リンはどこに行った?
 
 入れ替わりというからには、この男が「俺」であり、その内にはリンが居る。
 そしと俺は今、リンの肉体の内に居るという事か?
 
 目の前の男が「俺」自身である事はなかなかピンと来ない。
 剣や防具は俺のものであると認めよう。だが、この顔が、肉体が…確かに似てはいるが「俺」自身であるとは思えなかった。
 「鏡に映る顔は左右が逆だからね。それに視点の問題もあるんじゃない?あたしはいつもおっさんを見上げてるけど、今はあたし自身を上から見ているもん♪」
 
 男の言う「あたし自身」とは今の俺である。
 俺はようやく今の自分自身を確認することにした。
 細くて白い手足。膨らんだ胸当て。武器はまさしくリンのものだ。
 「トラップか…」
 呟いたその声は確かに女の…リンの声だった。
 
 
 状況はどうであれ、俺達はまだ戦う事ができる。
 「元に戻る算段はこのミッションが終わってからで良いな?」
 「う〜ん…おっさんの身体ってのが今イチだけど、アーサーの為だものね♪」
 「では行くぞ。それから、この先は俺が先に立つ。これまでみたいにトラップに掛かっても回避できる保証がない。くれぐれも余計な事はするなよ。」
 「わ、判ってるわよ!!」
 俺達はアーサーを追ってダンジョンの奥に急いだ。
 

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