(2)上物


 ダンジョンの奥ではアーサーが苦戦していた。
 上級創造物三体が壁のように立ちはだかっていた。
 三体の魔法防御が重なり合い、アーサーの攻撃を全て跳ね返していた。
 「この先に進まない事には話しにならないのに…」
 しかし、三体の上級創造物は防御に徹していた。
 「動いてくれれば、そこに隙ができるのに…」
 だが、アーサーがどのように動いても三体はピクリともしない。
 
 「うりゃーーッ!!」
 そんなアーサーの耳に遠くからリョウの雄叫びが届いてきた。
 「彼らも頑張ってくれているのだ…」
 アーサーは再度魔法の発動に集中した。
 「リョウか…」
 ふと、彼の戦い方が頭に浮かんだ。
 「やってみるか…」
 アーサーは発動させようとした魔法を切り替えた。
 それは、上級創造物を直接攻撃するものではない。
 自身の防護力を高めてゆく。
 間合いを確認し、
 「せいっ!!」
 加速し、身を躍らせる。
 アーサーの身体は弾丸のように三体に…三体と壁の隙間に向かった。
 「裂!!」
 アーサーの攻撃魔法が放たれる。
 その目標は上級創造物ではなく、その脇の壁だった。
 壁にまでは防御魔法は及んでいない。
 岩片が飛び散る。
 そこに僅かな隙間ができる。
 アーサーはその隙間に突っ込んでいった。
 
 「!!」
 
 床に転がり落ちる。
 立ち上がるとそこは上級創造物達の背後だった。
 魔法防御は前面に集中させているので、背面はガラ空きだ。
 アーサーは剣を一旋させた。
 それは三体の上級創造物の急所を綺麗に切り裂いていた。
 
 一呼吸の後、どさっと三体が同時に崩れ落ちた。
 「まだまだ。これからが本番だ。」
 と気を引き締め、アーサーはダンジョンの奥に向かっていった。
 

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