(1)俺
「うりゃーーッ!!」
力任せに剣を振り廻す。
雑魚にはそれで十分である。
剣と腕の長さ分の空間が確保できた。
短い距離ではあるが、その空間を助走に使う。
「はあぁっ!!」
気合いと共に飛び上がる。
仲間の位置を確認し、再び雑魚の上に降り立つ。
「うりゃーーッ!!」
と再び剣を一旋させる。
今度は近くにいたロンに向かい雑魚を薙ぎ払う。
「やあ、リョウ♪元気だったかい?」
槍を振るいながら飄々とした風に声を掛けてきた。
「手助けなら、僕はいらないよ。向こうにリンがいる筈だ。彼女を援護してあげた方が良い。」
ロンの見解に間違いはないだろう。
彼女の得物は中刀だ。二本を振り舞わす事で俺たちと同等の戦果を上げているが、元々体格も華奢である。雑魚とはいえこれだけの数を相手にはかなり苦戦しているだろう。
彼女の位置は先ほど確認できている。
俺は再び雑魚を剣で薙ぎ払った。
その先ではリンが独り奮闘していた。
流石に肩で息をしている。
「おいリン。俺が保たせてやるから少し休んでろ。」
俺はリンと雑魚との間に壁を作った。が、
「バカ言わないでよ。あたし逹が全力で雑魚の相手をしてないと、アーサーが上物に集中できないでしょ!!」
アーサーは俺たちのパーティーのリーダーで「勇者」の称号を持つ男だ。
ちなみに「上物」はリンが勝手に略している。上級創造物の事で、今俺たちの相手をしている雑魚どもの親玉だ。
上級創造物は雑魚とは違い、創造主である魔王譲りの魔法が使えるのだ。
アーサーも同じように魔法を使う事ができるが「勇者」であってもかなりの集中が必要なのだ。
「解ってるが、ここでお前が潰されたら元も子もないんだぞ。」
「承知のうえよ♪でも、おっさんがいるだけで雑魚どもの圧力が違うわ。少しは楽かも♪」
そう言って、俺を盾にするようにしてリンは再び雑魚どもに斬り掛かっていった。
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