想い人


  あむぁいさんとこへのコメント
  水曜イラスト企画 「女体化カプセル」 絵師 もろへいやさん(2)
  に寄せて(あむぁいさんの所へは送ってません)


ここはどこだ?
確かぼくは黒服の男達に囲まれ、羽交い絞めにされ、濡れたハンカチで口を覆われた。
そして意識を無くした。
ぼくは男達の降りてきた黒塗りの車に乗せられてここに運ばれてきたのだろう。
今は椅子に座らされ、腕を背もたれの後ろで括られているようだ。
椅子は床に固定されているようで、足を踏ん張っても微動だにしない。
 
「気が付いたかね?」
男の声がした。
「何が聞きたい? そうだな…」
奴はそう言ったものの、ぼくの質問を待たずに言葉を続けた。
「ここは何処か?私が誰か?何でこんな事をしたのか? と言うところか…先ずは」
男が何かを操作すると、部屋の中が明るくなった。
「ここは私の研究室だよ。」
そこには様々な機械が並んでいた。
そして部屋の中心には透明なカプセルがあり、液体が満たされていた。
「次に私が誰か…私は君のお母様の古くからの知り合いだ。とだけ言っておこう♪」
(母さんの?)
 
 
母さんはぼくがに大学入ってすぐに癌が発症し、あっという間に死んでしまっていた。
だから、この人が何者なのかを母さんに聞くこともできない。
尤も誘拐されたこの状態では誰に聞くこともできないだろう。
それに、母さんの知り合いだとしても、それだけで友好関係を築けるものではない。
ましてや、このように誘拐され、身動きができない状態にされているのだ。
「な、何をする気だ!!」
ぼくはようやくそれだけを言う事ができた。
 
「そうだね。最後に何でこんな事をするのか?という事だったね♪」
そう言って僕に近づくと、シャツのボタンを外していった。
「私は君のお母さんが好きだった。結婚したい程愛していた…」
奴は僕の首筋にひんやりとする液体を塗り付けた。
「けれど彼女は別の男と結婚してしまった。」
奴の手には薬液の入った器具が握られていた。
「そいつと離婚させ私と再婚するように計画したが、それらの計画はことごとく失敗した。」
その器具がぼくの首筋に当てられた。
「そうこうしているうちに君が生まれた。彼女の遺伝子を持った君だ。」
首筋から器具の中の薬液がぼくに注入される。
「だから、今度は君を…」
 
奴はぼくの戒めを解いた。
しかし、ぼくは自分の手足を動かすことができなかった。
声を出すことも、まばたきをすることも…
自分の意志では何も動かすことができなかった。
奴はぼくの身体から一枚づつ衣服を剥がしていった。
「産まれた君を見た時、彼女のような美人になると思った。」
下着も脱がされた。
「しかし、君の股間には余計なものが付いていた。」
奴はゴム手袋をした手でぼくの股間のモノを摘まんで言った。
「だから、君を私の妻に相応しい姿にする為に研究を重ねてきたのだ♪」
 
天井から降りてきたアームに吊り上げられた。
カプセルの上端が開き、ぼくはカプセルの中…謎の液体の中に下された。
(溺れる!!)
足掻こうにもぼくの肉体は一切反応しない。
そうこうしているうちに液体は肺の中も満たしてしまう。
不思議にも窒息することはなかった。
心臓も止まることなく、動き続けている。
そして、液体はぼくの肉体の内側の全ても満たしていた。
 
「さあ、これからが本番だ♪」
微細な振動が伝わってきた。
液体が本来の任務を開始する…
頭がむずむずしたかと思うと髪の毛が一気に伸びていった。
胸にかゆみが生じると、ぷくりと乳首が膨らみ、胸に脂肪が集まっていった。
下腹部にも異変があった。
ぼくからは見えないが、ペニスが胎内に没し、そこに割れ目が生まれてゆく。
ぼくは「女」に造り変えられていった。
 
 
 
 
「さあ、立って♪」
言われるがまま、あたしは立ち上がった。
カプセルは消えていた。
あたしを満たしていた液体もなくなっていて、髪も身体も綺麗に乾かされていた。
「これを着なさい♪」
あたしの前に引き出されたのは純白のウェディングドレスの一式だった。
白いショーツを穿き、フリルの沢山ついたハーフカップのブラジャーを着ける。
流石にウェディングドレスの本体は一人では着れずに手伝ってもらった。
白いロンググローブをはめると、頭からベールを被せられた。
「素敵だ。」
手を引かれ、研究室の外に…
そこには教会の聖堂がしつらえられていた。
「さぁ、神の前で誓うよ♪」
 
司祭も観衆も立ち合い者もいない。
彼とあたしだけが祭壇の前に立っている。
「私は君を妻とし、この身が死すまで愛し続けることを誓う!!」
ベールが捲りあげられ、彼の顔が近づく。
あたしが瞼を閉じると彼の唇があたしの唇に重ねられた…
 
 
 
あたし…ぼくは今、何をしているのだろう?
シャワーの湯滴が長い髪の毛を濡らし、胸の谷間を流れ落ちていた。
鏡には「ぼく」の姿が映されている。
「女」となったぼく…どこか写真で見た若い頃の母さんに似ている…
もう一度確認する。
「ぼくは今、何をしているのだろう?」
 
今はぼくの身体はぼく自身の意志で動かすことができている。
しかし、その肉体は変わり果てていた。
そこにあるには「女」の肉体だった。
(どうして?)
その問い掛けとともに記憶がプレイバックされる。
捉えられ、カプセルに入れられ、女にされ、ウェディングドレスを着せられ…
僕は奴の「妻」にされた?
 
奴は母さんの代わりにぼくを女にして…
そして、今は結婚式の後の最初の夜…
(初夜?)
ぼくは奴に抱かれるのか?
「女」として…
ぼく…あたしは女だから
彼の「妻」になれたのだから…
悦んで抱かれるの♪
 
あたしはバスタオルを巻いてベッドルームに入っていった。
旦那様が待っていた。
「おいで♪」
その声に誘われてベッドに向かう。
「ようやくだね。ようやく君を抱くことができる♪」
肩を抱かれ、バスタオルが外される。
そのままベッドに寝かされ、その上に跨ってきた。
乳首が甘噛みされる。
「ん…ぁあん♪」
胸からの快感が全身に広がってゆく。
「い、今。私の腕の中で君が悶えている…」
あたしの肉体が熱く燃え、蕩けていくよう…
「ようやくだ。ようやく君を…」
素肌が触れ合う…
「長年の私の想いが今…」
 
 
 
ぼくが意識を取り戻した時…
ぼくには奴に抱かれてからの記憶が一切失われていた。
かなりの時間が過ぎていたのだろう。
見知らぬ場所のベッドの上にぼくはいた。
そして…
ぼくの腕の中にはスヤスヤの眠る赤ん坊がいた。
(どうなっているの?)
自分の身体が「女」のままであることは最初に確認した。
この子がぼくの産んだ子であるのは雰囲気から理解した。
その後、主治医をはじめ見知らぬ人々との会話で今の状況が見えてきた。
奴は想いを遂げた後、程なくこの世から消え去っていた。
そして、奴はぼくとこの子には莫大な遺産が残してくれていた。
ぼく自身が働くことなくこの子を育てるのには不自由しないということだった。
 
窓際の椅子でゆったりとしていると…
我が子の小さな手がぼくの胸に触れてきた。
「欲しいのね?」
小さな口がその乳首に吸い付いてくる。
これは、ある筈のない母性本能なのだろうか?
ぼくはこの子を愛おしく思う。
ぼくは今、この子の「母」となる事を確と誓った…
 
 
 

−了−


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