エース(撃墜王)


  あむぁいさんとこへのコメント
  水曜イラスト企画 絵師 ALみかん 仮名:北河 浩介
  に寄せて


そのマーキングされた機体には見覚えがあった、
「それが貴女の最終標的よ。」
あたしの機体のAIがそう告げてきた。
確かに奴はエースのようだ。
次々とあたし達の僚機を撃墜してゆく。
(だけど、あたしの方が上よっ!!)
続けざまに敵機を撃ち落とすと、あたしはその「最終標的」に向かっていった…
 
 
 
ふと(前にも同じ光景を見た)と、記憶の奥底から涌き出てくるものがあった。
(そう…同じような宙域で「俺」は撃墜された…)
 
っな、何よ?!
「俺」って、あたしが男だったみたいじゃない!!
あたしは…

…記憶を辿るが、その先は霧のようなものに包まれていて何も見えない。
 
「!!!!」
警告音で我に返った。
(今は戦闘中よ!!余計な事を考えてる場合じゃないでしょ!!)
あたしは強引に機体を引き起こした。
生身の肉体であれば耐えられない加速も、改造されたあたしには何の影響もない。
無茶苦茶な機動が可能となったあたしに敵う者などいないのだ!!
 
が、余計な動きが入ったため、あたしは一瞬だけど奴を見失ってしまった。
(何処っ?!)
あたしの目は再び奴を捉えた。けれど、それは奴が奴の絶好のポジションに居ることを確認しただけだった。
つまり奴の照準にあたしが捉えられているということ…
 
再び強機動を駆けるが今度はエンジンが耐え切れそうになかった。
(あと少し、踏ん張って!!)
なんとかギリギリで奴の攻撃を避せた。
(今度はあたしの番よ♪)
あたしは奴の機体の真後ろに迫った。
 
(?)
再び記憶の底から涌き出てきた。
前にも同じ事があった?
「俺」は敵機に後ろを取られ、成す術もなく撃墜された…
そして敵に捕らえられ、洗脳され、改造され…過去へと送り込まれた。
 
あたしは記憶を取り戻した。
そう。あたしの前にいるのは過去のあたし自身なのだ。
/敵のエースを墜とせるのはその本人しかいない。
/そして肉体改造すればより確実に墜とすことができる。
「俺」は過去に送り込まれた「俺自身」に撃墜されたのだ!!
 
そう…このままトリガを引けば良い。
そうすれば「俺」は「あたし」になる。
 
あたしは…トリガを…引いて…いた…
 
 
 

−了−


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