白い闇

By 奈落(Naotoshi) E-mail:PFB01406@nifty.ne.jp


 僕は白い闇の中にいた。
 それは霧のような自然現象ではない。ベタのような白だ。
 
 遠くに何かある。
 よく見ようと眼を凝らすと、それはスーと近づいて来た。
 公園にあるようなベンチだった。
 脇にある街路灯に照らし出されている。
 
 ベンチには女の子が座っていた。
 制服を着た女子高生だ。
 その娘を僕は知っていた。
 幼なじみのサヤカだ。
 
 白い空間にサヤカとベンチと街路灯が浮いている。
 それらが宙を飛んで僕の目の前に降り立った。
 ベンチの後ろからサヤカの背中を見ている。
(サヤカちゃん)
 声を掛けようとすると、
「サヤカ。」
 男の声がした。
 サヤカが顔をあげる。
 その視線の先を僕は追っていった。
 
 白い空間にじわじわと人影が滲み出てくる。
 それは学生服の男の姿となった。
「待った?」
 男が聞く。
 答える替わりに僕は首を横に振っていた。
 
 僕はベンチから立ち上がった。
 街のざわめきが聞こえる。
 白い空間は一瞬のうちに様々な色に満たされた。
 しかし、それも短い運命だった。
 彼の顔が間近にせまる。
 僕は瞼を閉じていた。


−了−

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