飛翔



   緑の芝に寝ころんでいると、
          風が微笑みを運んでくる。
   
   暖かい陽の光が包み込んでくれる。
   耳を澄ますと小鳥の囀りが聞こえる。
   見上げると青い空に雲が流れて行く。
   流れる雲と風に乗って翔んで行こう。
   心は体を離れて想像の翼を広げる。
   力強く羽ばたいて大空に舞い上がる。
   風を抜け雲を抜け限りなく高く翔ぶ。
   空を見て星を見て…
   ふと振り返るとそこに地球があった。
   空気の薄皮に包まれた海と陸が見えた。
   海と陸の狭間に私の生まれた国がある。
   その国の丘の上に私はいたのだ。
   
   想いとともに地球が近づいてくる。
   雲の合間に海岸線が現れる。
   街が見える。
   道が見える。
   家が見える。
   人が見える。
   
   丘の上に私がいた。
   緑の芝に寝ころんで、
         空を見上げている私がいた。
   
   ゆっくりと舞い降りてそっと翼をたたむ。
   
   
   私は空を見ていた。
   陽の光に全身を曝して、
         その暖かさを余すところ無く受け止める。
   風の音に耳を澄まして小鳥の囀りを聴く。
   見上げると青い空に雲が流れて行った。
   風が微笑みを運んで来た。
   私は丘の上に寝ころんでいる。


−了−


    次を読む     INDEXに戻る

Y