喫 茶 店



 外はどしゃ降りの雨だった。
 喫茶店の窓越しに路面を叩く水の塊をボーッと眺めていた。
 丁度、空色のスポーツカーが水の流れを切り裂いていった。
 珈琲カップに手を伸ばし、ふと空になっているのを気付く。
 もう、一時間近くこうしている。

 窓際では、店内のBGMより道路に跳ねる雨滴の音の方が大きい。
 微かに聞こえるBGM。それより若干大きい客達の話し声。
 とは言っても、話しの中身まで聞こえる訳ではない。
 笑い声、伸ばした語尾、意味もない接続詞。
 別に彼女らの話しを聞きたいとは思わない。

 僕はただ、ボーッと道路を眺めているだけだ。
 雨は一向に止む気配がない。
 珈琲をもう一杯
 傘もなく飛び込んだ
 雨宿りの喫茶店…

−了−


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