連作:俺と彼女は入れ替わったのだけれど…

3.心残り


俺と彼女は入れ替わったのだけれど、認識は元のままだった。
 
つまり、彼女の肉体は元々の俺の肉体であり俺の肉体は彼女の肉体となっているのだが、他人からは元のまま、俺は俺として彼女は彼女として認識されている。
今の俺の胸には双つの膨らみがあるのだが、「男」としか認識されていない。
彼女の顔は元々の「俺」の顔なのだが、彼女自身として認識されている。
だから、肉体に合った服を着ていると、女装/男装と思われてしまうのだ。
幸いにも彼女と俺は体形にあまり違いはなかったので、お互い自分の服がそのまま着れたのだが…
 
「祐司ぃ…お願い聞いてくれないかな♪」
今日の彼女はキャリアケースを引っ張ってきていた?
「泊まりにでもきたのか?」
「今日は家の中で…ちょっとね♪」
 
キャリアケースの中には「彼女」の衣服が納められていた。
次々と取り出され、ベッドの上に広げられた。
俺は避けられない「予感」のようなものを感じた。
恐る恐る彼女に聞いた。
「ここでファッションショーでもするつもりか?」
「そう♪今の体形だと着るのが難しいものばかり…」
「この部屋で…お前が…着る…んだよな?」
「モチロン、あなたに着てもらうのよ♪」
 
俺に拒否権は無かった…
 
先ずは下着からだった。
これまで穿いたことのない女物のショーツ…
それとお揃いのブラジャー…
この肉体は元々「彼女」のものである。
衣服のサイズは今の「俺の肉体」に全て合っていた。
 
ワンピースを着せられた。
腰の後ろでリボンが結ばれた。
裾は太股の所までしかない。
少し動くだけでパンツが見えてしまいそうだ。
「じゃあ、座って♪」
と、彼女は俺の顔に化粧を始めた。
元々は彼女自身の顔である。
手際良く塗り立てられてゆく。
「少し荒れたかしら。明日から毎朝乳液くらいはつけていって欲しいわね♪」
そう言いながら、アクセサリーを付けてゆく。
耳に何かがぶら下がっている感覚など、慣れるものではなかった。
 
「はい、見て♪」
鏡の前に立たされた。
そこには入れ替わり前の「彼女」が写っていた。
「…これが…俺?」
お決まりのセリフだが、言わずにはいられなかった…
 
ファッションショーは続けられた。
つまり、次々と服を着替えさせられていった。
彼女の出身校の制服…セーラー服
続いて体操服。ボトムはエンジ色のブルマだった。
次にホットパンツ。シャツは胸元で縛ってオヘソが丸出し…
そして…水着…
完全に「彼女」のスタイルが浮き彫りになる…
 
 
「ありがとう。これで思い残すことはないわ…」
「どういうこと?」
「この服たちは今の「あたし」には着れないから…ここに置いていくから、良かったらいつでも着てもらって構わないわよ♪」
「俺…が自分から着ることはないぞ!!」
 
とはいえ、
「形が崩れるといけないから♪」
とブラだけは毎日着けることになってしまった…
 
 
 
 


    次へ     戻る