俺と彼女は入れ替わったのだけれど、認識は元のままだった。
つまり、彼女の肉体は元々の俺の肉体であり俺の肉体は彼女の肉体となっているのだが、他人からは元のまま、俺は俺として彼女は彼女として認識されている。
今の俺の胸には双つの膨らみがあるのだが、「男」としか認識されていない。
彼女の顔は元々の「俺」の顔なのだが、彼女自身として認識されている。
だから、肉体に合った服を着ていると、女装/男装と思われてしまうのだ。
幸いにも彼女と俺は体形にあまり違いはなかったので、お互い自分の服がそのまま着れたのだが…
「祐司ぃ…コレ、そろそろだと思うの。」
入れ替わってしばらく経ったある日、彼女が紙袋を持ってやって来たのだった。
しかし、今日はあまり彼女に付き合う気になれなかった。
「とりあえず、それを貰っておくよ。」
「やっぱり億劫になってる。お腹に痛みはない?」
言われると同時に下腹の奥に不快な塊を感じ、そこから痛みのようなものが…
不意に何かが排泄されたがっているような感じがした。
「ちょっとトイレ…」
と立ち上がると、
「じゃあ、これを持っていって♪」
と彼女は紙袋の中から取り出した小さな袋を俺の手に握らせた。
俺は切迫してきていたので、それが何かを確認することなくトイレに入った。
彼女と肉体が入れ替わって以来、当然であるが俺は小を足すにも座る必要があった。
蓋を開け、ズボンとパンツを下し、便座に座った…
股間から何かが落ちていった。
それは小とも大とも違う感覚だ。
何だ?
と思った時に、彼女が渡してきた物に意識が向いた。
それは女性の生理用品…ナプキンだった。
生理…??
俺は便器の中を見た。
そこは赤く染まっていた。
俺…が…生理…??
今の俺の肉体は「女」である。
生理があるのは当然なのだ…と頭では理解しても、なかなか自分自身の事であると納得する事ができなかった。
「祐司、大丈夫?」
トイレの外から彼女の心配そうな声が聞こえた。
多分、俺の意識は「大丈夫」ではないのだが、
「大丈夫だよ。」と答え、ペーパーで尻を拭い、2度3度と水を流してトイレを出た。
その後、俺は彼女からナプキンの付け方のレクチャーを受けたのだった。