気が付くと、俺はベッドの上に寝かされているようだった。
あたりを眺めてみる。その部屋は相変わらず女の子の部屋だった。
「駄目だったか…」
身体を起こし、再度あたりを確認してみた。既に、もう一人の「俺」は姿を消しているようだ。つまり、もう一度世界を改変することは不可能ということだ。
それは、この先「俺」がこの部屋の住人として生活しなければならないということに他ならない。
もう一度、部屋の中を確認する。
ベッドの上のたぬいぐるみ。壁のポスター。そしてポスターの隣に掛けられた女子の制服…
(まさか、俺がこいつを着て学校に行く事になるのか?)
「真子?家にいるならお料理くらい手伝いなさい。」
制服を見て固まっていると、階下から母さんの声がした。
母さんは「真子」と呼んでいた。この世界での俺は「真人」ではなく「真子」という女の子として認識されているのだ。
俺は自分の身体を見た。が、どこから見ても「男」の身体である。このまま「真子」の部屋にいたら「不審者」とされてしまう…
幸いにも靴は手元にある。窓から出て行くことは可能だ。
と、カーテンを開ける…俺はそこが三階である事を思い出した。
(どうする?)
と自問する間に部屋のドアが開いてしまった。
「真子?何やってるのよ。居るんだったら、降りてきて手伝いなさいな。」
俺は母さんの顔を見ていた。そこにあったのは呆れ顔でしかなかった。
俺を「不審者」ではなく「真子」として見ているとしか思えなかった。
これ以上母さんの要求を拒絶していては、逆に不審がられる。自棄ぎみに階下に降りてゆくと、
「ほら、エプロンして♪」
と俺にエプロンを着けさせ、料理の支度を手伝わせ始めた。
夜になり、帰ってきた父さんも、俺を「真子」として扱った。
「女の子なんだから、母さんにもっと料理を教えてもらうんだな♪」などと、完全に女の子扱いしている。
俺は適当に相槌をうち、早めに食事を終わらせると「真子」の部屋に戻っていった。
朝になる。
学校は休む訳にはいかない。しかし、学校に行くには制服を着なければならない。
ここにあるのは女子の制服だけだ…
「オハヨー♪真子。」
「お早うサン♪」
クラスの女の子達が、何の躊躇もなく俺に声を掛けて来る。逆に男子は極力「無視」を決め込んでいるようだ。
例外が親友の和哉だった。
「お早う♪今日も可愛いね。」
そう言って俺の額にキスをしていった。
「ヒューヒュー。朝から暑いね?この夫婦は♪」と男子の一部が騒ぎたてる。
他のクラスメイトは見慣れた光景なのであろう、何の反応も見せなかった。
学校でも、俺は「西野真子」という女子生徒として認識されていた。ついでに言えば、和哉とは公認のカップルらしい。
「どうした?元気ないじゃないか?」
授業が終わり、帰ろうとすると和哉が声を掛けてきた。
「悩み事でもあるなら聞いてやるぜ。うちに寄ってかないか?」
俺は流されるように和哉の家に行った。
「取り敢えず、気持ち良い事して、頭を空っぽにした方が良いな♪」
部屋に入り鞄を置くと、和哉はそう言って俺を抱き締めた。
そのままキスを求めてくる。
俺には男同士でキス…それも唇を合わせるようなキスなど、しようとも思わない。が、彼にとって、俺は恋人の女の子なのだ。これまでにも日常的に行われていたに違いない。
俺は抵抗することもできずに、和哉に唇を奪われていた。
頭がクラクラした。
しかし、それは決して不快なものではなかった。身体の芯が温められ、チョコレートのようにドロドロに溶けてゆくような感じがした。
気がつくと、ベッドの上に倒されていた。既に制服は脱がされ下着姿にされていた。彼には見えているのだろうか?ブラジャーのカップは潰れ、真っ平らな胸に巻かれているだけである事を。ショーツは俺のペニスでもっこりと膨れている事を。
「んあん…」
それでも和哉は執拗にブラの中に手を入れ、乳首を刺激する。そこから、快感のようなものが沸き上がる。
俺は女のような喘ぎ声をあげてしまった。
「ああ、いつもの真子が戻ってきたね?」
そう言って和哉の手がショーツの中に潜り込んできた。その指は、俺のペニスに触れることなく、股間を摩りあげてゆく。これまで感じた事のない快感に喘ぎ声が漏れる。
彼の指に愛液のようなものが絡みつき、クチュクチュと淫らな音がし始めていた。
「そろそろ良いかな?」
和哉はそう言って俺の股間からショーツを剥ぎ取った。脚がM字に広げられる。和哉の勃起したペニスが俺の股間に突き立てられた。
ヌプッ♪
俺のナカに和哉のペニスが侵入してきた。
「あん、ああん!!」
快感に俺は艶声をあげていた。
俺のナカで和哉のペニスが暴れている。その快感に頭の中が真っ白に塗り込められてゆく。
「あん、あん、あん…」
和哉のリズミカルな動きに合わせて俺の媚声が続く…
「ああ、良いぞ♪い、いきそうだ!!」
和哉の動きが変化する。そして…
「ぅうっ!!」
とうめくと和哉のペニスから精液が放出されていた。
和哉が離れる。
俺の股間からペニスが抜き取られ、後を追うように、中に溜まっていた精液が漏れでていった。
その時になって、俺は俺が和哉を受け入れていた部分に思い至った。男同士であれば、使われる穴はアナルしかない。しかし、今、和哉の精液が溢れてきているのは、そこではなかった。現に、垂れてゆく精液が肛門を通過してゆくのを感じている。
俺の股間には、女のように「男」を受け入れるための膣が存在している?
「どうした?」
俺の行動に違和感があったのか、和哉が声を掛けてきた。
「な、何でもないよ。」そう言って、股間に伸ばしかけた手を戻すと、和哉が再び俺の乳首を弄りだした。
「あ、ぁあん♪」と俺は喘ぎ始める。
快感の連鎖が再び始まる。
和哉の手が俺の乳房を揉みあげ、俺は女のように悶え、ヨガリ声をあげる。
女みたいに…いや、俺はもう、完全に「女」だった。俺の肉体は最初から「女」だったのだ。俺だけが「男」だと誤認していたのだ!!
俺…あたしが「女」であることを認めた時、
世界が変わった…
快感があたしを支配する。
快感の高みへと、ぐいぐい押し上げられる。
「あ、あ、あっ♪ イイ〜〜〜!!」
あたしは絶頂を迎え、歓声をあげていた。