並行世界



気が付くと、俺はベッドの上に寝かされているようだった。
目を開けると、そこは見慣れた「俺」の部屋だった。
「成功したのか?」
俺は自分の身体を確認してみた。
どこか違和感があるように感じたが、そこにあったのは確かに「俺」の肉体だった。
既に、もう一人の「俺」は姿を消していた。奴が男に戻れたかどうかは俺の知る所ではない。
俺は「俺」の日常が戻った事に安堵していた。

 
 
が、日が経つに連れ、俺の中の違和感がどんどん大きくなっていった。
そして…
 
その日は朝から下腹部がシクシクと痛みを訴えていた。
その痛みは昼飯時にピークを迎えた。
食事を途中で放りだし、よたよたとトイレに向かった。
家以外では、殆ど使った事のない個室のドアを開けた。清潔に磨きあげられた洋式の便器があった。
ズボンを降ろし便座に座った。
俺の腹の中から「違和感」の源と思われるモノが排出されていった。
それは大便でも、ましてや小便でもなかった。
覗き込んだ便器の内側は鮮血に染めあげられていた。
 
俺はしばらく、その場を動けなかった。
「生理」
その二文字がこの事象にはもっともしっくりした。
「男」の俺には縁のない事象である。が、その可能性を俺は否定できなかった。
 
俺の前に現れたもう一人の「俺」は女だった。世界を改変した際、女になってしまったと言った。元に戻すため、奴はもう一度、世界を改変したのだ。
その際に奴の女性化と同じような事が、俺自身に起きないという保証はどこにもないのだ。
 
ペーパーと噴水洗浄器で跳ね散った汚れを落とした後、俺は綺麗になった股間に手を伸ばしてみた。
俺の外見は「男」のままである。胸も平らで体毛も濃いい。股間にはペニスがあり、そこから小便をしている。
が、ペニスの裏、肛門との間に裂け目が生じていた。指を送り込むと、胎内に潜り込んでゆく。
そこが「膣」なのだろう。その奥には子宮があり、生理の源を生み出していると想像できた。
 
教室に戻ると、皆は食事を終えて外に遊びに出ていた。俺の席の所だけ、食べかけの昼飯が残されていた。
このまま食事を再開する気にもなれず、俺は荷物をまとめると職員室に立ち寄り、早退する旨を告げた。
 
 
 
コンビニで生理用品を買い、そのまま家に向かった。
服を脱ぎ、ベッドに潜り込んだ。
身体を…心をリラックスさせ、俺は再び股間に手を伸ばしていった。
「男」のシンボルは確かにそこにあった。が、その向こうには膣口が開いているのも事実だった。
指を入れる。暖かな肉壁が指を圧し包む。刺激を与えると、肉壁が湿り気を帯びてきた。
抵抗が減り、指を前後に動かすのもスムーズになった。
弄っていると、快感のようなものを感じるようになった。
 
胸に手をあてると、乳首が硬く尖っていた。今の俺には、女のような乳房はなかった。が、乳首に触れると、そこからも快感が生まれるのが判った。
「んああん♪」
女のように喘いでみた。
俺の声は、何故か女のように艶っぽく響いてきた。
俺は今、「女」を責めている。乳首に爪を立てると「あああん♪」と「女」が喘ぐ。
「女」の膣に突っ込んだ指を動かすと、愛液がクチュクチュと淫音をたてる。
「あふぁ、ああん♪」
女の艶声に俺もノッてくる。
膣を乳首を存分に責めたてる。
「んあん、ああ〜ん♪」
快感が俺を支配してゆく。
「もっと強くぅ〜♪」
俺は指の動きに注文を付ける。
俺の膣で蠢く指が激しさを増した。
「あっ!!そ、そこっ♪」
ある一点で強烈な快感が湧き起こった。
指は着実にそのポイントを責めてきた。
「あん、ああ〜ん!!」
俺は快感に嬌声を上げる。
「ああ、イイッ!!」
快感がどんどん増幅してゆく。
「イク?イっちゃうの?」
目を瞑ると、快感の頂がすぐ側まで来ているのが判った。
俺を責めたてる指が更に勢いを増した…
 
「あ、あ、あ、ああ〜〜〜ん!!」
最後にそう叫んで、俺は意識を手放していた。
 
 
 
 
 
日に日に、俺は「女」になってゆくのを実感していた。
乳首が大きくなり、胸が膨らんでゆく。敏感になった乳首がシャツに擦れて痛みを訴えるのでブラジャーを着けざるをえなくなった。
股間にも変化は現れていた。ペニスは勃起しても、精液を吐き出すことはなかった。そして、ペニス自体も次第に小さくなってゆき、股間に穿たれた溝の中に没していった。
規則正しく生理が訪れる度に、俺の女性化が進んでゆく。
 
スカートを穿いてみたくなった。
お化粧をしてみたくなった。
男の子に興味が湧いてくる。
あたしを見て欲しい。
手をつないで欲しい。
キスして欲しい。
抱いて欲しい…
 
 
 
「ねえ♪」
あたしは親友の和哉に声を掛けた。
「これから遊びに来ない?」
和哉は「西野真人」という昔からの親友の意識で、ほとんど考えることもなく「良いよ。」と答えていた。
けれど、今日のあたしは違っていた。
マニキュアも綺麗に塗れている。控えめだけど、お化粧もばっちり。唇もウルウルに輝いている。
下着も気合いを入れてきた。
 
そう、今日こそは和哉に抱いてもらうのだ!!
 
そう思っただけで、股間に愛液が染みだしてきた。
これまで何度も夢に見ていたのだ。女になった自分が男に抱かれて、最高の快楽を享受する…その相手の男性は和哉しかいない。
 
「な、何か部屋の雰囲気…変わってない?」
あたしが女性化してから、和哉をこの部屋に入れたことはなかった。だから、あたしの部屋が「女の子の部屋」になって戸惑っているのだ。
「ねえ、ここに座って♪」とベッドの端に誘う。
その隣にあたしも腰を降ろす。もちろん、身体を密着させるようにしてね♪
彼の腕があたしの肩に回った。あたしは彼に顔を向けるとゆっくりと瞼を閉じた。
唇に彼の唇が触れる。軽く開けた口の中に彼の舌が入ってきた。
あたしも舌を絡ませ、そのままベッドに倒れ込んだ。
スカートの中に彼の手を誘い、ショーツを脱がしてもらう。あたしも彼のスボンから硬くなったペニスを引きだす。
 
あたしは彼の上に跨ると、あたしの中に導いていった…
 
 
 

−了−

 

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