並行世界



「おい、起きろよ♪」
男の声がした。
 
俺はベッドの上に寝かされているようだ。
目を開けると、鏡で見慣れた「俺」の顔があった。
そこは見慣れた「俺」の部屋だった。
「成功したのか?」
俺はもう一人の「俺」に確認した…と同時に物凄い違和感を感じた。
俺の発した声は「俺」の声ではなかった…彼女と同じような、甲高い「女」の声のように聞こえたのだ。
「ど、どうなったんだ?」
ベッドから体を起こした。
「世界は元に戻ったようだね。ただひとつ、あんたの存在を除いてな。」
「お、俺?」
「そう。俺自身は男に戻れたが、逆にあんたの方が女になってしまったんだ。」
「そ、そんなあ〜。もう一度改変できないのか?」
「これ以上の改変は無駄だと思うね。それに、俺もそう長くこの世界に留まっていられないみたいだ。」
「う、嘘だろ?」
「嘘を言っても始まらないだろう?それよりも、時間が来るまでお楽しみしてみないか?」
「お楽しみ?」
「俺が女だった時に考えていた事があるんだ。」
「考えていた事?」
「ああ、確かに女の体は感じ易い。」
「感じ…って?」
「解るだろう?その体でオナニーすれば即に解るよ。けれどそれだけじゃ物足りなく思っていたんだ。」
「物足りないって?」
「実際に男とヤったらどんな感じがするのかなっ?て」
「ち、ちょっと待て、お前は何を考えているんだ?」
「何をってエッチな事に決まっているだろう?お前は俺なんだから、俺と同じ事を考える筈だ。だから、俺ができなかった事をやっておいてあげようと言うんだ。有り難いだろう?」
「それって、俺がお前…俺自身に抱かれるって事か?」
「他に何かあるか?さあ、時間がないんだ。さっさとヤろうぜ♪」
「お、俺には拒否権は…」
「そんなものある訳ないだろう?大丈夫、感じる所は判ってるからさ♪」
彼の指が俺の首筋を撫であげた。
「ヒャぅン♪」
俺は変な叫び声をあげていた。触れられた指先から、これまでに感じた事のない…快感がもたらされたのだった。
「どうだい?気持ち良いだろう?」
俺は身をくねらせて彼の指から逃れようとするが、彼の指は俺の肉体から次々と快感を引き出していった。
「だ、駄目…止めてぇ、変になっちゃう…」
「良いんだよ、それで。快感に身を任せるんだ♪」
俺の身体は、彼の与える快感に勝手に反応し始めた。
「ぁあん、あ〜〜ん♪」
女のような喘ぎ声をあげてしまう。
下腹部がジンジンと疼き始め、熱くなった股間が愛液に濡れ始めていた。
 
「準備は良いようだな?」
そう言うなり、彼は俺の上に伸し掛かってきた。脚を抱えられ、股間が開かれる。その中心に彼は腰を押しつけてきた。
ヌッ!!
俺の膣に「俺」のペニスが侵入してきた。
「あんっ、ああん♪」とヨガリ声が出てしまう。
「お前、ナカナカ良い感じだぞ♪そっちも感じてるか?」
彼の問いに、俺は答える事ができなかった。今、俺が何か言おうとすれば、その全てがヨガリ声になってしまいそうだった。
「じゃあ、コレはどうだ?」と彼が腰を縦横に振り始めた。
あまりの快感に俺の意識が飛び始める。
気が付くと、俺は淫らな女の声で嬌声をあげていた。
堪らない快感の先に頂きが見え隠れする。
「ああ、イくぅ。イっちゃう〜♪」
無意識のうちに俺はそう叫んでいた。
「そら、フィニッシュだ!!」
熱い塊が俺の膣に放出された。そのいくばくかは子宮にまで到達したかも知れない。
快感に媚声が上がる。
「あ、あ、あ、あ〜〜〜〜!!」
 
快感に俺の意識が薄れてゆく…
どこか遠くで彼の声がした。
「タイムリミットだ。機会があったらまた会おう♪」
 
 
 
気が付くと俺は独りだった。彼は消えてしまっていた。
「女」になってしまった俺を残して…
 
違和感の残る股間に手を伸ばした。指先に「俺」の愛液と精液が絡み付いた。
更に手を進める。
そこには膣があった。
指を入れると、俺の股間に侵入してくる異物として感じる事ができた。
 
「あ、ああん♪」
艶声があがった。
俺の手がオンナの敏感な所に触れてしまったようだ。
痺れるような快感が肉体の芯を通り抜けていった。
 
俺はもう一度そこに触れてみた。
「んあん、ああん♪」
俺は素直に喘いでみた。
「俺」がオンナの快感に染められてゆく。
俺は指を送り、快感を求め始めていた。
それが「女」のオナニーである事に気付いたのは、大分時間が経ってからだった。
 
 
 
ひとしきり快感を堪能した俺だが、そこに物足りなさを感じていた。
(男に抱かれた方がずっと気持ち良い♪)
俺は彼に抱かれていた時の快感を思い出していた。
(誰か、彼の代わりに俺を抱いてくれる奴はいるかなぁ?)
俺は携帯電話を手繰り寄せると、アドレス帳の最初の番号に架けていた…
 
 
 

−了−

 

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