再会

6.「ダーリン」



 
 
「お嬢さん?」
路を歩いていると、不意に声を掛けられた…
「偶然てあるものなんだね?今度は僕も覚えていたよ♪」
声を掛けてきたのはガルシアだった。
あまりの突然の事に、声もだせなかった。
「もし、用事が済んでいるのなら、一緒に食事でもしないか?」
彼の誘いに、自然と首を縦に振っていた。
 
「二人の再開に乾杯♪」
ガルシアの台詞に吊られ、ワイングラスを鳴らしていた。
「僕は君の事が忘れられなかったんだ。」
彼の視線が俺…私の心を貫いてゆく。ドクンと心臓が大きく脈打った。
「私も…」
私は何を言っているの?私の意志の及ばない所で肉体が勝手に反応している…
(ワタシじゃないわよ。貴女自身…貴女の中に生まれた「ミネルバ」がやっている事みたいね。自分に素直になれば違和感はなくなる筈よ♪)
そうだ。俺…私は「ミネルバ」なのだ。「私」はスパ衛星で出会ったガルシアを忘れられずにいた「女」なのだ。
「私も、もう一度貴方に会いたかった。貴方に会って確かめたかった…本当の私の気持ちを…」
「それで、解ったのかい?」
ガルシアが優しく微笑んでいる。
「う〜ん、難しいわね♪食事の後も一緒に居て良いかしら?」
「僕なら大丈夫だよ。とことん付き合ってあげるからね♪」
私達は再びグラスを重ね、とりとめもない話しと伴に食事をしていった。
 
 
 
ホテルのベッドで目覚めた時、隣にはガルシアの姿は無かった。
「ダ、ダーリン?」
アタシは不安のままに声を掛けた。
「起きたのかい?」
彼は窓の所にいた。
「あぁ、ダーリン♪」
アタシはほっとすると、ベッドから降り、彼の下に向かった。
「前みたいに、急にいなくなったらどうしようかと思ったわ。」
アタシは彼の腕を絡め取った。
「離したくない。」
彼はもう一方の腕で、アタシを抱き締めた。アタシも絡めた腕を放し、彼の腰を抱き返す。
彼の腕が後頭部に添えられる。アタシが彼の顔を見上げると、彼の唇がアタシの口を塞いだ。
長いキッスが終わる。
「アタシも離れたくない。アタシの艇に来ない?」
「ミネルバの?」
「貴方の艇を係留することもできるわ。ねぇ、一緒に行かない?」
「良いのかい?」
「貴方だから…」
アタシは再びガルシアにキスを求めた。
「風来坊はお嬢様には敵わないと言うことなのだろうな。」
とアタシを抱き締めた。
「そうと決まったら、支度を始めよう。先ずはシャワーを浴びてきなさい。そのままだと、いかにもホテルでシてきました♪と言い触らしているようなものだ。その間に、僕は荷物を片付けておくからね♪」
アタシはガルシアに背中を押され、バスルームに向かった。
 
 
 
 
 
 
 
「っこれは…ミネルバじゃないか!!」
ガルシアがアタシの艇を見て絶句していた。
「お嬢様だとは思っていたけど、自分の名前と同じ艦種の巡洋艦を自家用にしてしまうとは思ってもいなかったぜ。」とガルシアは艇(アタシ)を見入っていた。
 
「格納庫を開くからビーコンに乗せて頂戴。」
アタシはガルシアの隣でミネルバ(アタシ)を動かしていた。アタシの出したビーコンに艇が乗ったのが判ると、トラクタービームを作動させた。
「??」とガルシアが不思議がっている。ほとんどショックなくトラクタービームに捕まれたのだ。急に艇のコントロールが効かなくなったのに気づくだけでもガルシアが優秀なパイロットである事が窺えた。
「もう捕まったのか。この距離で正確だな。お前の所のクルーは相当優秀じゃないか。」
とガルシアは操縦棹から手を放し、シートをリクライニングさせるとアタシを抱き寄せた。
「あんたはトコトンお嬢様なんだな。」
「その分、世間知らずかもね♪」
「おぉ、否定しないな?」
「これがアタシだから…」
 
抱かれながら、アタシはガルシアの艇を格納庫に係留し、エアロックに連絡筒を伸ばした。
「着いたわね。」
とガルシアの腕を解く。先に立ち、エアロックを抜けブリッジに向かった。
ミネルバは既に係留地を離れていた。ブリッジの窓の外を星が流れてゆく。
「装置には触れないでね。アタシ用に調整されているから。」
(別に触れられても問題はないわよ。過剰シンクロは貴女と完全にシンクロできたので、十分にコントロールできるわよ。)
解ってる。でも、彼にはこの肉体以外の体をいじられたくないの。
「あんたが操縦するのか?」
とガルシアがアタシを見た。
「ええ♪それに、この艇にはクルーはいないわ。今、ミネルバの中に居るのはアタシとダーリンだけよ♪」
ガルシアはブリッジ内を見渡して、納得したようだ。
「じゃあ、今この艇を動かしているのは?」
「アタシ…と言っても自動操縦みたいな事をやってるのね。」
「流石に金があると、何でもアリなんだな。」
「そうでもないわよ。特に、人の心はお金で動かせない事が多いものよ♪」
「僕の事かい?まあ、金はあったに越した事はないが、今の俺を動かしているのは、お前自身の魅力だな。」
と軽くキスをする。
「ここでスるのも良いけど、やはりベッドの上が良いな♪案内してくれるかい?」
「んもう♪早速なの?」
「お前もそのつもりだったのだろう?」
「ダーリンたら…」
アタシはブリッジ下の部屋に彼を案内していった。
 
 

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