テープ



 股を大きく開いた。
 体内に押し込んだペニスの上に肌色のテープを貼り付ける。
 
 股を閉じるとそこには奇麗な割れ目が出来ていた。かねてから用意していた女物のショーツを履くと、それはピッタリと下半身を覆ってくれた。次ぎにバストを手に取った。乳首の先まで精巧に造られている。アルコールを含ませたコットンで胸を拭き、左右を確認して貼り付けた。説明書にはそのまま3分間押し付けているようにと書かれていた。時計の秒針を3周分追い続けた。そして、手を離すとズシリとした重みが胸に届いた。体温で軟化する素材が地肌との境目を判らなくさせていた。
 
 ブラジャーを着けると胸の重みが分散されかなり楽になった。と同時に今まで重力に支配されていた部分が持ち上がり、思った以上に胸を豊かに見せていた。トレーナーを着ても胸の膨らみがはっきりと判る。ジーパンを履いて鏡の前に立つと、胸だけが女のアンバランスな男の姿が写し出された。髪を梳き、前髪を下ろして女の子みたいな髪形にすると中性的な感じになった。更にリップクリームで唇に艶を出すと、女の子に見えなくもない。
 
 スニーカを履いて外に出てみる。少し歩いただけだが、不審に見られてはいないようだった。電車に乗って隣町のショッピングセンターに向かった。そこには女の子の服がたくさんあった。可愛らしいワンピースがあったので試着してみた。背中のファスナーが上げられるか心配したが、楽々と手が届いてしまった。
 鏡の中に女の子がいた。「良く似合ってますよ。そのまま着ていかれますか?」トレーナーとジーパン姿に見兼ねた店員がそう申し出てきた。さらにワンピースに合う靴下と靴も用意されていた。全て揃えても予算以内だったので、すぐに首を縦に振り、代金を支払った。外見は女の子になっているが、声は男のままなので喋ることができない。それでも何とかなってしまうのが、今の世の中なのだ。
 
 喫茶店に入り、これまでどうしても注文できなかったストロベリーパフェを頼んだ。もちろんメニューを指さし、一言も喋らずに済ませた。しばらくして目の前にパフェが置かれた。やはり男の姿でコレの前に座るのは恥ずかしい。女の子になれた幸せをかみ締めながらカッブのアイスを掬った。
 
 
 
 
 街を歩いていると次から次に声を掛けられた。片端から断っていったが、気が付くと手の中は様々なティッシュや試供品、そしてチラシで一杯になっていた。そのどれもが女性向けのものであり、自分が女の子として見られていることが解った。
 
 
 
 
 パフェでお腹が冷えたのか、トイレに行きたくなった。公園の中に公衆トイレを見付けた。迷わずに女性用の方に入った。スカートを捲り上げショーツを下ろして便器に座ると、おしっこが堰を切って迸った。ペーパーでお尻を拭いたとき、違和感を感じた。ペニスを押さえていたシールが外れていたのだ。にもかかわらず女の子のようにおしっこできたのはなぜ?
 
 家に飛んで帰り、ショーツを脱いで股間を鏡に写してみた。シールは端の5ミリだけが地肌に接していた。しかし、シールで造られた割れ目はそのまま残っていた。おしっこの出てきた穴が見付かった。ペニスはどこに行った?更に割れ目を押し開くと膣口のようなものがあった。指を入れると下腹部に侵入してくる異物として感じられた。体液が滲みだし摩擦を減らす。
「あうっ!!」
 思わず声を上げていた。指が敏感な所に触れたのだ。
 思わぬショックの後には若干の傷みと見知らぬ快感が残っていた。
 
 もう一度、今度は優しく触れてみた。快感だけが波紋のように広がってゆく。
 
 
「あ、あぁん♪」
 
 
 無意識に発っせられた喘ぎ声は、もう男の声には聞こえなかった。
 
 
 

−了−


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