正夢



 俺は男である。たとえ股間に女性器があっても、ペニスを持った俺は男である。
 しかし、最近の俺は思考パターンが大分女性化してきているみたいだ。突然、甘いものが欲しくなったり、ショーウィンドウに飾られたドレスについつい目が行ってしまう。
 ある時、夢の中で昼間目にしたドレスを着ていた。もちろん、その時の俺にはバストもあり女として振る舞っていることに何の疑問も、違和感も感じていなかった。俺は同じくドレスアップした同僚の女の子達とテーブルを囲んでいた。何かのパーティー?いや、それは結婚披露宴だった。ひな壇にはタキシードを着た同期の男が座っていた。相手はうちの課の女の子だった。スピーチにうとうとしかけた所で俺は夢から覚めていた。
 翌日会社にでると、とんでもない話しが飛び込んできた。夢に出ていた娘が結婚退職するという。相手は夢と同じく俺の同期の男だった。間もなく俺の元にも招待状が届いた。あれは正夢だったのだろうか?
 
 
 
 式の近付いたある日、俺は同僚の女の子達に声を掛けられた。結婚披露宴の打ち合わせと称して連れ出された先には男は俺ひとりだけだった。そこは着付けの教室に使われる和室だった。ぐるりと囲まれる。彼女達の中でリーダー的な娘が口を開いた。
「ここは防音設備が整っています。あなたは何も抵抗でません。」
「で、俺に何の用があるんだい?」
「披露宴の女声コーラスにあなたも参加してもらいます。」
「お、俺は見ての通り男だよ。」背筋に冷や汗が落ちるのを感じながら、そう答えた。
「では、それを証明して下さい。」言うが早いか俺は女の子達に押し倒されていた。身動きが取れないまま、ズボンとパンツが脱がされた。「さて、これは何でしょう?」彼女は股間に垂れていた糸をつまんで言った。その日、俺は生理の最中だった。彼女はタンポンのリードを見付けたのだった。俺は観念するしかなかった。そのまま丸裸にされた。「サイズは合いそうね。」と女の下着を付けさせられた。ブラウスを着せられ、タイトスカートを履かされた。そこには一人のOLが出来上がっていた。「今日はここまでにしておくわ。」そう言って解放された。が、それから毎日仕事が終わると俺は和室で女の服を着させられ、コーラスの練習と俺の女の子教育が施された。
 
 
 
 そのテーブルは会社の女の子達で占められていた。俺もドレスを着てそこに座っていた。余興のコーラスも終わり気が緩んだのか、俺も自然に女の子達のおしゃべりに加わっていた。「さぁ、独身の女の子達。集まって下さい。」と司会者が言った。俺達はきゃあきゃあ言いながら、花嫁の前に集まっていった。花嫁が後ろを向きブーケを放り上げる。それは俺の伸ばした手の中にすっぽりと納まっていった。
「じゃあ、今度はあなたの番ね♪」女の子達が囃し立てるその言葉と共に、新たなイメージが重なっていった。
 
 オルガンの音が鳴り響いていた。
 俺は純白のドレスを着ていた。目の前にはベールが掛かっている。俺の隣で腕を絡めているのは親父だった。俺の前の通路の先には祭壇があり、神父と白いタキシードを着た男が立っていた。
 
 
 
「ねぇ、この後空いている?」
 男の声に現実に引き戻された。俺はまた夢を見ていたようだ。これもまた、正夢だったのだろうか?声を掛けてきた男は夢の中でタキシードを着ていた男だった。俺は男に導かれるようにして二次会を抜け出していた。
 ホテルの一室で服を脱ぎ、シャワーを浴びていた。俺の裸体が鏡に写る。俺は女だった。たとえ股間にペニスがあっても、期待に女性器を潤ましている俺は女以外の何者でもなかった。
 
 俺はベットの上で彼を受け入れていた。俺は悦びに奮え、可愛い吐息を紅い唇から漏らしていた。
 
 
 

−了−


    次を読む     INDEXに戻る