なりきりゲーム



 いつも通っている道も、こうやって見ると新鮮に感じる。「どうだい?」洋子が聞いてきた。「えぇ、あなたの言う通りね。」僕は女言葉で返事をする。僕等は今、あるゲームの最中だった。ゲームとは言っても勝ち負けがあるわけではない。僕等がゲームをしている事を他人に悟られないか?と言うスリルを味わうのだ。
 
 ゲームの中での僕は「洋子」だった。階段から落ちた拍子に「博」と身体が入れ替わってしまったという設定だ。だから僕は二人だけの時は女言葉を使い、他の人がいる所では僕が洋子であるとばれないように「無理して」男言葉を使うのだ。
 ゲームの中で、僕は女の子の視線で見、女の子の視点で考えてみることにした。あたしの隣にいるのは、あたしの姿をした博君だ。姿は女の子でもやはり男の子だ、頼りになる。あたしが不安にならないように気遣ってくれている。遠回りにもかかわらずあたしを「博」の家まで送ってくれている。
 
「じゃあ、また明日。困った事があったらいつでも電話してくれて良いからね。」そう言ってあたしの姿の博は去っていった。門を閉め、玄関の前に立つ。博君の家族の前でバレないか心配だけど、これはどうしても通らなければいけない関門なのよ。と自分に言い聞かせ、ドアを開いた。
「た、ただいまぁ〜」と玄関で靴を脱いでいると、博君のママが台所から「おかえりなさい。」と返事を返した。あたしは極力顔を合わせないように二階に昇り、博君の部屋に入った。机に鞄を置き、ベットに腰を下ろした。部屋の中を見渡す。「男の子」の部屋には違いなかったが、噂に聞くよりは奇麗に片付いていた。
 枕元にはグラビア雑誌が積まれていた。好奇心から、その中の一冊を開いてみた。(ドクン)女の人の裸体が目に入った途端、心臓が大きく波打った。下半身に痛みが生じた。ズボンの前が膨らんでいる。大きくなろうとするオチンチンをズボンが邪魔しているのだ。あたしはズボンのベルトを外し、パンツと一緒に脱ぎ去った。博君のオチンチンを目の当たりにする。男の人のモノを見たのは小学生の頃にパパとお風呂に入っていた時以来だと思う。あたしはそっとオチンチンに触れてみた。
 
 ビクリとあたしの身体の一部であるにもかかわらず、あたしの意志とは別個にソレは動いた。あたしは博君のオチンチンを握っていた。前後に動かすと気持ちが良かった。あたしの手の中で博君が喜んでいる。男の子の高まりが迫っていた。あたしは慌ててティッシュを取った。
 オチンチンの中を熱い塊が通り抜けていった。あたしの手の中に白い粘液が吐き出された。と同時に興奮が褪めてゆく。女の子のあたしが男の子の性衝動に駆られてしまったことに、軽い背徳感が残っていた。
 
 
 
 
 
 
 あたしは女の子だったのだ。背徳感から逃れるため、あたしは自分の胸に手をかぶせた。女の子としてイクことができれば、あたしはまだ女の子でいられる。なんの根拠もないが、あたしはそう信じ込んでしまった。
 微かな乳首の突起に爪を立てた。「あぁん♪」ちょっとは違うが、感じることができた。乳首を弄んでいると、だんだんと胸が膨らんできたような気がする。あたしはあたし本来の肉体をイメージした。股間には膣口があり、膣が子宮へとつながる。左右に卵巣があり毎月の生理の元となるのだ。
 
 エッチな事を考えると次第に股間が濡れてくる。せつなくて股間に指を伸ばす。指先に愛液が絡む。更に指を奥に進めると、指は肉壁の中に割り込んでゆく。あたしは膣の中に指がいるのを感じた。いずれは男の人のペニスを受け入れるのだ。ペニスの替わりに指を動かす。
 
 あたしは女の子の絶頂に向かってまっしぐらに突き進んでいった。
 
 
 

−了−


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