芋虫



 芋虫を見掛けた。
 
 俺は無意識の内にそいつを蹴飛ばしていた。芋虫の飛び込んだ先は車の頻繁に行き交う道の真ん中だった。そいつはあっという間にトラックのタイヤに踏み潰されていた。
 その夜、芋虫の呪いが降り懸かってきた…
 
 眠ろうとベットに向かうと、その上に芋虫がいた。そいつは俺を見留めると、爆発したかのように触手を広げた。俺はあっという間に投網のように広がった触手に包み込まれてしまった。四肢が拘束される。唯一動かすことが出来た首を、夜空を写す窓ガラスに向けると鏡のように現在の俺の状況を映し出していた。
 首から下は繭のように触手に圧し固められていた。繭の中では盛んに触手が動き廻っていた。俺の皮膚感覚ではとうに服は消失していた。触手は直に俺の身体に触れている。そして粘土細工のように俺の肉体をこね回していった。
 蝶が羽化するように繭が割れた。窓に写された俺の肉体はどう見ても女の身体だった。
 
 うねうねと触手が纏わり付いてくる。女の身体にされた俺の股間に触手が入り込んでくる。クリトリスが刺激され、俺は女のように嬌声をあげてしまう。股間は俺自身が滴らせる愛液で濡れていった。「あぁん♪」俺の膣に侵入した触手の表面が変形し、俺の内から絶妙な快感をもたらしてきた。窓に写される淫蕩な女体が自分自身の物であると知りつつも男の本能が欲情を誘う。纏わり付く触手に乳首を始めあらゆる敏感な所を攻められ女の肉体が悦楽に喘ぐ。その拷問にも等しい強烈な快感に、俺の意識は即に吹っ飛んでしまった。
 
 
 
 翌朝、目覚めると触手の戒めは解かれていた。が、俺はまだ女の肉体のままだった。取り合えず着れるもの着て買い出しに行くことにした。
 あの場所が近付いてきた。と、急に下腹部が痛みだした。下痢とかの類いの痛みではない。下腹部が圧迫されるのだ。ズボンのベルトを緩めると、見る間に俺の腹は妊婦のように膨れていった。痛みに耐え切れず、俺はしゃがみ込んでしまった。そこは調度、昨日俺が芋虫を蹴飛ばした所だった。
 痛みが絶頂に達する。腹の中のモノが膣口に移動していった。妊婦が出産するように、俺の股間から産まれ出てくるものがあった。パンツの中に収まりきらなかったものがズボンの隙間から溢れ出る。それは小さな芋虫の大群だった。
 
 
 
 
 気が付くと芋虫はいなくなっていた。お腹の痛みも消えていた。芋虫の呪いもこれで終わったのだろう。と、アタシは立ち上がるとスカートの裾に付いた砂埃を払い落とした。
 
 
 

−了−


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