幼なじみ



 俺と勝と夕子は幼稚園の頃からの腐れ縁…良く言えば幼なじみだった。勝とは今もって『親友』と言える付き合いをしているが、夕子とは小学校の高学年あたりから次第に距離をとるようになっていた。それは思春期を迎え「男」と「女」を意識しはじめたためだとも言える。だからと言って、夕子とは今もって友達であることには間違いはなかった。
 少なくとも俺にとっては…
 
 
 勝から相談を持ちかけられたのは夏休みに入ってすぐの事だった。俺たちは街を見下ろす高台の公園にいた。「僕は夕子の事が好きなんだと思う。」勝は一方的に切り出した。「それは『友達』としての『好き』じゃない。男として女の夕子が好きになったんだ。それは間違いない。だけど、この事を夕子に告白することで、それが断られるにしろ受け入れられるにしろ、僕たちの関係がこれまでと同じではいられなくなると思っている。僕はそれが怖かったんだ。」
 ここまで言われて俺はどう言えば良い?
「それは勝自身の問題だよ。俺が口を出す問題じゃない。だが、何時かは訪れる問題でもある。俺たちがこのままでいられる保証はどこにもないんだ。」
「良いのか?」勝の問い質す瞳が俺を貫く。
「俺は何も言えない。」俺は勝の視線から逃れるように、見晴台の手すりに手を掛け街を見下ろした。勝も俺の脇に並んだ。二人して夕焼けに包まれ始めた街を眺めていた。
 
「あっ!!」勝が叫んだ。すぐに俺も勝と同じモノを見ていた。夕日の中に輝くモノがあった。
「UFO?」勝の問いに答えるより先に俺たちは強烈な光に包まれていた。
 
 
 
 
 数日後、俺は夕子から相談を受けた。
 先日のUFOらしきものを見た後の記憶が定かではなかったが、勝は夕子に告白した事は聞いていた。昨日も図書館に行くときにデートしている二人の姿を見かけている。傍目には順調そうな二人ではあったが、俺には問題を抱えている事が手にとるように判っていた。
「どうも勝の様子が変なの。」夕子の疑問は当然であった。UFOを見た俺達はただ見ただけでは済まされなかったのだ。記憶にはないが、俺達に訪れた変化はUFOによるものに違いなかった。
 その変化は俺よりも勝の方が顕著に現れてしまったのだろう。二人ともその変化を隠してはいたが、間近にいる夕子には隠し切れないようだ。
「どう『変』なんだい?」判ってはいたが俺は夕子に聞いてみた。「勝から告白されたのは知っているわよね。あたしも特に断る理由もなかったんで付き合い始めたんだけど、何か違うのよね。」
「何かって?」「そうねぇ、言ってみれば二人でいてもデートって感じがしないの。気心の知れた、そう『女友達』っていう感じね。彼には何か同性のような気安さがあるの。」「で、君は物足りない訳だ。」「な、なにョ!まるであたしがSEXに飢えた淫乱女みたいな言い方じゃない。」「そ、そこまでは言っていないよ。で、これは俺からのアドバイスなんだがね…」
「何よ。」「いっその事、勝を『女』にしてみないか? 一度、女同士になってみれば勝が『男』だって事がはっきりするんじゃないか?」「そういうモンなの?」「まぁ、ダメ元で試してみては?」
 俺はそう言って夕子を帰した。もちろん俺にはその結果がどうなるかは手に取るように判っている。俺は窓のカーテンを閉めると鏡の前に立った。俺と同じことが勝の身にも起きている筈なのだ。俺は服を脱いだ。俺の胸にはテープがきつく巻かれている。その縛めを外すと、双つの肉塊が現れる。
 俺達はUFOで『女』にされてしまったのだ。
 
 
 
 ドアをノックする音がした。
 開くとそこには目を泣き腫らした女の子が立っていた。愛らしいピンクのワンピースに花柄のポシェットを下げている。俺はすぐにこの女の子が勝であることに気が付いていた。「入れよ。」俺は勝を部屋に入れた。コーヒーを淹れひとまず勝を落ち着かせる。
「で、何があったんだい?」優しく問いかけてやると、勝はゆっくりと顔を上げた。「ボ、ボク…どうしたら良いんだろう? どんどん男じゃなくなって行くんだ。身体だけじゃない。頭の中まで女の子になっちゃうんだ。夕子にこの服を着てと言われて、喜んでいるボクがいるんだ。スカートを穿いて、お化粧して、どんどん可愛くなっていく自分を喜んで見ているんだ。」
「良いんじゃないか? 勝は充分に可愛いよ。」「でも、それじゃぁ夕子の彼氏にはなれないんだ。この格好で街を歩いていると幾人もの男達から声を掛けられるんだ。中にはカッコいい男の子もいて、胸の奥がキュンとなっちゃうんだ。ボクの隣に夕子がいるのに、その男の子に抱かれている自分を想像しているんだ。夕子がいるのに他の見知らぬ男に抱かれたがっているっておかしいよね?」
「じゃあ、俺が抱いてやろうか?」えっ?と勝の顔が上がる。もちろん俺の身体も勝と同じように女になっているが、勝はそんなこととは思ってもいない。『男』の俺に抱かれる自分を思い描いているのだ。
「男同士なんだよ。」と勝。「一度、女になりきってみたらどうだい? そうすれば自分がどこまで男であるかはっきりすると思うよ。」と俺。しばらくの逡巡の後「わかったよ。」と言ってポシェットを肩から外した。
 
 
 
 俺は服を着たまま勝だけ裸にした。
 ベッドの上に寝かせ脚を広げさせた。勝の股間には昔見たオチンチンの影さえない。そこは完全に女の子のものになっていた。俺は開かれたクレバスにふっと息を吹きかけてやった。
「あんっ♪ ダメ、くすぐったいよ。」俺は勝の抗議を一切無視して更に顔を股間に近づけた。充分に湿らせた舌先で勝の割れ目をなぞり上げる。「ひゃん♪」悶える勝の身体を両手で抑え込む。舌先を硬くして割れ目の中へと押し込んでゆく。鼻の頭が勝の陰核に触れた。
「ぁっ!! ぁあ、ああん! あふん♪」適度な刺激が勝を興奮させてゆく。勝の股間はいつしか俺の唾液以外のもので濡れはじめていった。
 股間の責めを右手に任せ、今度は胸の蕾に攻撃対象を移していった。勝の胸は俺よりも発達していた。俺の胸は未だ脂肪の塊が集まっただけのものだが、勝の胸には立派に乳首も隆起していた。
 舌先で突つき、舌の上で転がし、口に含み、歯で挟む。勝の身体はどんな刺激も快感に変えてしまえるようだった。刺激を与える度に股間の潤いが増してゆく。指を動かすとクチュクチュと淫靡な音を発ててくる。俺は残った左手を勝の首筋に這わせ、勝の性感帯を次々と開発していった。
 勝は女のように悶え、媚声を発して悦感の階段を昇り始めていった。
「あっ、あっ、あっ…」勝が小刻みに打ち震え、絶頂を迎えようとしていた。
 俺は勝の膣に差し込んだ指先をリズミカルに動かし続ける。
「あぁ、ああ、あああ…」俺の指技だけで勝は昇り詰めようとしていた。
「ああ、あっあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪」勝は嬌声を上げ、快感の渦に呑み込まれていった。
 
 
 
 ドアをノックする音がした。
 夕子だった。「勝、来てるの?」夕子の視線は勝が履いてきた女物の靴に注がれていた。俺を押し退けるように上がり込む。すぐに乱れたベッドに眠る勝を見つけていた。「あんた、勝とシたの? 男同士で?」「夕子も感づいているだろう? 勝はもう『女』だ。」俺は勝に掛けたバスタオルを外した。その行為に反応して、勝が寝返りを打つ。勝の股間が露わとなった。
「う、うそ…」夕子は力なくその場にしゃがみ込んだ。「君はこのまま『彼女』と付き合い続けることが出来るのかい?」
「ん、ううん?」勝が目覚めようとしていた。「誰か来てるの?」次第に勝の意識がはっきりとしてくる。「ゆ、夕子さん?!」勝は傍らに座り込んだ夕子を認めると同時に、今の自分の姿を思い出していた。
「きゃん!!」と叫んでバスタオルで前を隠す。その仕種は女の子そのものだった。「ま、勝?」夕子が顔を上げる。二人の視線が交錯する。部屋の中を沈黙が支配する。俺は息をひそめ成り行きを見守っていた。
 先に声を出したのは夕子だった。「もう、あたしより彼の方が良くなったの?」「そ、そんな事はない。僕は今でも夕子が好きだよ。」「本当に?」「身体はこんなでも、心はまだ男のままだよ。」「じゃあ証明シて?」勝はベッドを降りると、全裸のまま夕子を抱き締めた。
 
 
 
 とりあえず、二人は仲良く帰っていった。勝はこれまで通り男女の交際を続けていけると思っているようだが、どう見てもレズビアン…それも勝の方がネコになっている…にしか見えない。
 まぁ、二人の事はこれで片付いたが、問題は『俺』自身の方だ。散々仲睦まじい所を見せつけられた俺は溜まりに溜まっていた。ただせさえ勝をイかせただけのストレスが残っているのだ。不発弾を山と抱えている状態だ。
 さすがにここまで来ていると、自分の手技だけで納めるのには無理がある。俺は隠しから機械を引きずり出してきた。ローションを塗りスイッチを入れると、その機械は鈍い音を発てて動き始めた。
 俺の股間が疼いている。俺はズボンのベルトを外し、パンツと一緒に擦り降ろした。股を開き、機械えお股間に押し当てた。そこはローションも必要ない程に濡れていた。
 
 UFOの洗礼を受けたのは勝一人ではい。俺の身体もまた勝と同様に変化を遂げている。
 既にペニスは跡形もなく消え失せ、俺の股間は女そのものになっていた。性的興奮が高まると俺は股間を満たす欲求に支配されてしまう。なんでも良いから股間の穴を満たして欲しくなるのだ。俺は先ず指で慰めてやる。更に欲求が高まると挿入する指の本数を増やしてゆく。そして最後には機械…バイブレータの出番となるのだ。
 
 官能の漣が俺の肉体を震わしてゆく。バイブは俺の肉体を大きく揺り動かす。俺は胸に巻いたテープを解き乳房を開放する。突き出した乳首に触れると、雷に打たれたように快感が全身を貫いてゆく。俺はその身体全てを性感帯に変えていた。媚声を上げ、見悶える。
 俺は『女』だった。バイブに貫かれ、快感に愛液を溢れさせている。「もっと、もっと♪」俺は快感を追い求めるようにバイブを更に奥へと挿入してゆく。乳房を揉み、絞り上げる。そこかしこの性感帯を刺激して廻る。陰核を摘み上げる。
「んあっ!! あああ、ああん♪ ああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
 俺は一気に昇り詰めていった。
 
 
 
 俺は自分が『男』であると認識している。しかし、俺の肉体は『女』だった。いくら拒絶しても肉体が『男』を欲していた。指もバイブも代替品でしかなかった。『男』に抱かれ、貫かれる。ただそれだけの事を俺の肉体は欲求して止まない。しかし『男』である俺には到底許容できる行為ではなかった。なら女であればよいのか?ペニスを持った女に抱かれるのには抵抗はないのか?
 俺の思考はそこで足踏みを続けていた。
 そんな時1枚の写真が目に止まった。風俗店で働く女の子だった。いや、正しくは女の子ではない。俗に言うニューハーフだ。彼女の股間にはペニスが存在しているのだ。写真に続く文章を読み進んでゆく。彼女は女性にも人気があるらしい。女同士として、男女として、様々なバリエーションで愛の営みを提供するのだそうだ。
 俺はその店の扉を開けていた。迷わずに彼女を指名した。
 
 彼女は『男』の俺に抱かれていた。が、彼女は『男』として俺を貫いていた。彼女のペニスが俺の中にあった。温もりが伝わってくる。それは自分の指や機械では味わう事の出来ない感覚であった。それだけで俺はイってしまったようだ。
 
 俺の中で彼女が動いていた。優しく俺を抱いている。彼女の温もりが俺のわだかまりを徐々に溶かしたていった。俺は『女』として抱かれていた。悦楽の雲に包まれ浮かんでいるような感じがする。ただ、股間で繋がれた1点だけが現実との接点だった。
 『男』が力をみなぎらせてゆく。俺のまわりに浮かび漂う悦楽の要素が俺を中心に収斂し始める。
 俺は悦楽の力に突き上げられていた。どんどん高く、更に高みへと。「あん、あん、あん♪」俺は声をあげていた。『男』の動きが更に激しくなる。その先に頂きが見えてきた。「ぁあ、いく、いく、いく!!」俺は股間を締めつけ、その先に手を伸ばす。その最後の絶妙の瞬間『男』が俺の中に精液を放出した。俺は一気に高みのその先まで飛ばされていった。
 
 
 
 俺は胸に巻くテープを手に迷っていた。
 もう一方の手にはプレゼントされたブラジャーがあった。『その身体を得るためにどんな苦労をしているのか知っている?』彼女はそう言ってこれを俺に渡したのだった。『少なくとも、その身体を故意に崩そうとする行為はあたしたちに対する冒涜だわ。』
 俺はテープを離しその胸にブラジャーを巻き付けた。その上に服を着るとその大きさがひと廻りもふた廻りも大きくなったように感じられた。が、肩に掛かっていた重みもとれ、胸元が軽く、開放された感じがした。
 
 
 
 待ち合わせの場所には既に勝と夕子が立っていた。お揃いのミニスカートを穿いている。
「お待たせ♪」俺が声を掛けると二人とも目を丸くして凍りついていた。
 ショーウィンドウには3人の若い娘が写っている。
 3人は仲良しの幼なじみだ。「男」も「女」も関係ない。これ以上ない友情で結ばれた『親友』なのだ。
 街の中を彼女達の明るい笑い声が走り抜けていった。
 
 
 

−了−


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