妖精


(1)
 
 たまたま立ち寄ったフリーマーケットで俺は1体のフィギュアに魅せられてしまった。
 雑然と並べられた雑貨の中、カーテンの布地に隠れるように彼女はたたずんでいた。店主は白髪の老人だった。俺の視線がフィギュアに向けられていると知ると、カーテンの中から彼女を取り出してくれた。彼女の背中には半透明の羽が付いていた。良く見ると金色の長い巻き毛に隠れた耳の先端が細く、明らかに彼女が人間でない事を物語っていた。
「気に入ったかい?」老人が声を掛けてきた。「千円でどうだい?」
 老人の言い値はこの美しい妖精のフィギュアには安すぎる。その躊躇を老人は勝手に解釈していた。
「どうだい、他の人形のだがドレスも付けてあげるよ。」そういえば、彼女は完全な裸体であった。細かなディテールは目鼻だけではなかった。バストの先端の乳首はもとより股間の割れ目までリアルに造られている。「これでどうだい?」老人は人形の服の詰まった透明なビニール袋を差し出した。
 俺はぎくしゃくと懐から財布を取り出し、1枚の千円札と彼女を差し出した。
「毎度♪」老人は紙袋に彼女と服の入った袋を入れ、「そうそう、この人形はこの機械で思い通りに動かすことができるんだよ。」そう言って、旧式のヘッドフォンのようなものも紙袋に入れていた。
 
 
 部屋に戻り袋から彼女を取り出した。
 老人はヘッドフォンのような機械で彼女を動かすことができると言っていたが、彼女の身体はモーターなどの機械が入っているとは思えない程に軽かった。どういう事なのだろうか?百聞は一見にしかずとも言う。俺はヘッドフォンのような機械を頭に付けてみた。脇にあるスイッチをスライドさせた…
 
 感電したようなショックを受けた。
 
 
 
 
 気が付くと俺は床の上に寝ていた。
 確か、椅子に座っていた筈だ。それに、この部屋には絨毯が敷いてありフローリングのような木が剥き出しになった床など無かった筈である。
 しかし、ここは俺の部屋には違いなかった。壁のポスター、天井の蛍光灯、本棚に積まれた本の背表紙、どれをとってもここが俺の部屋であることを示している。が、何か違和感があった。
 更にまわりを見ると、大きなビニール袋に女物の服が詰まっていた。その向こうに巨大な紙袋があった… いや、それらが大きいのではない。俺自身が小さくなってしまっているのだ。床と思ったのは机の上だった。巨大な紙袋はフィギュアを入れてきた紙袋だ。ビニールに入った服は一緒に貰った人形の服、そして俺は妖精になっていた。
 
 机の上の蛍光灯の台の金属が鏡の替わりになった。いや、鏡で確かめるまでもなく、今の俺の手足は色白で華奢であり、目の前に垂れてくる髪の毛はカールした金色をしている。なによりも、視線を下に向ければ女性特有の膨らみと愛らしい乳首が目に入ってくるのだ。
 それでも、鏡に映る自分の姿を確認したかった。
 
 フリーマーケットで見かけたそのままの姿が映しだされている。
 
 彼女には羽があった。
 意識してみると、背中にその存在を感じる。鏡の中で羽が動いていた。背中に意識を集中すると、鏡の中で羽が広がってゆく。身体が軽くなったような気がした。ちょっと跳ねただけで俺は宙を飛んでいた。意識して羽を動かすと、思った方向に空中を移動してゆく。
 俺は飛んでいた。
 
 天井近くまで舞い上がり、部屋の中を見下ろした。
 この部屋が俺自身の部屋であることを再度確認した。ベッドがあり、本棚があり、そして机と椅子…
 椅子の上には『俺』がだらしなく座っていた。
 意識があるようには思えなかった。俺自身がこうして居るのだからそれも当然である。俺はゆっくりと『俺』の上に舞い降りた。いつもは鏡越しにしか見たことのない俺自身の顔がそこにあった。鏡では見れない角度で俺自身を眺めている。目、鼻、口… ちょっと口臭が気になる。開け放たれた口の中に並んでいる歯には歯垢がこびりついていた。
 
 俺は再び舞い上がると洗面所に向かった。
 ドアに脚を踏ん張ってノブを廻す。羽の力で少しづつドアを引いて開ける。隙間ができるとそこに身体を押し込んでドアを開放した。照明のスイッチを入れると洗面台が光の中に浮き上がる。本物の鏡の前に立つと俺の全身が映し出された。
 俺は自分がフリーマーケットで買った妖精のフィギュアそのものになってしまっていることを再認識させられた。しかし、フィギュアとはいっても俺の意志で自在に動かすことができる。手足はもとより、指先の繊細な動きまで可能である。
 鏡に顔を近づけた。精巧に造られた目鼻口… 口の中には愛らしい歯が並んでいる。喜怒哀楽と鏡の前で百面相をする。整った顔が崩れると、愛らしい表情が垣間見える。青い瞳、虹彩や睫毛の一本一本がリアルにできている。
 舌を出し、唇を舐めあげる。淫らな表情に変わる。
 鏡から距離を取ると胸までが視野に入る。俺は両手で乳房を押し上げた。乳首がツンと上を向く。喉を震わすと「ぁあん♪」と甘い吐息が溢れる。
 俺の目の前で全裸の女が悶えている。俺は興奮した。女の顔が紅潮する。
 俺は左手で乳房を弄びながら、右手を滑り降ろしていった。胸から腹へ、へその穴の上を通って下腹部へ、股間の割れ目に指を這わせた。指先に力を入れると、俺の指は割れ目の中に沈んでいた。
 柔らかな肉の壁に包まれている。更に奥に進んでゆく。皮膚と粘膜の境目を超えた。そこはしっとりと濡れた秘孔だった。
 体液が供給され、指の摩擦が抑えられる。孔の中で指を動かす。チュクチュクと淫らな音が聞こえてくる。体液が孔から溢れ出る。大腿の内側を伝い降りてくる。指先が敏感な所に触れた。
「あっ、ああん♪」女の媚声が俺の喉から飛び立っていった。
 それは強烈な快感だった。快感ではあったが、俺がいままで経験したどれとも異質な快感だった。膝から下に力が入らない。俺は崩れるようにその場に座り込んでいた。八の字に脚を広げる女性独特の座り方になっている。俺の右手はそれでも股間から離れずに刺激を与え続けていた。
 鏡の中で女が瞳を潤ませている。唇を半ば開き快感にあえいでいる。
 その女は俺自身だった。
 左手で乳首を責めたてる。右手は激しく動き、快感を追い求めてゆく。
「あん、あん、あん、あん……」
 女は首を左右に振って快感を貪ってゆく。
「ああ、ああ、あああん♪」
 快感が増幅され津波のように身体を駆け上っていった。
「あっ、あっ、あっ、あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 俺の意識は快感に津波に押しつぶされていた。
 
 
 
 寒さに身体が震えていた。
 俺は全裸であることを思い出した。水道の蛇口を捻り弾ける水しぶきで下半身の汚れを落とす。飛び上がり、空中に浮かんだまま掛けておいたタオルで水滴を拭う。そのまま机の上に向かった。
 机の上には人形の洋服がビニール袋に詰まっている。封を切り中のものを取り出した。服だけではなく、靴やバックの小物まで入っている。服は様々な布地でできていたが、どれも高級そうなドレスだった。下着も幾つか入っていた。ブラジャーのようなものはなかったが、パンツとお尻まで隠れるアンダーシャツを着けた。シャツを着るときに邪魔になるだろうと思われた羽はいつの間にか消えていた。
 下着姿のままではどうにも落ち着かない。が、着るものはヒラヒラのドレスしかない。散々悩んだ末にピンク色の膝丈のものを着ることにした。アイドルのステージ衣装のようなそれが一番着易そうだったからと自分を強引に納得させた。
 
 服を着終わって一息点いた所に、ドアをノックする音がした。
「宏紀、居るか?」親友の三上勇一だった。
「お、おう。」と条件反射的に答えてからその失態に気付いた。俺のこの姿をどう説明すれば良いのだろうか?本来の『俺』は椅子の上でぐったりしているのだ。
 幸いにも、この身体の声が小さかったのか勇一は暫くするとドアの前を去っていった。が、ことはそれだけでは済まされなかった。俺は服が着れて一安心していたが、それどころではないのだ。俺はいつまでも妖精のままでいる訳にはいかない。どうにかして自分自身に戻らなければならないのだ。
 戻るにはどうすれば良い?
 この姿になった経過を逆に辿れば良いのだ。すなわち、ヘッドフォンのような機械に付いていたスイッチを切れば良い筈だ。あの機械は『俺』の頭に付いたままだ。この机からは目と鼻の先、一ッ飛びの所にある… が、服を着てしまった俺には羽を出すことができない。服を脱ぐか、このピラピラのドレスで机を降り、『俺』の身体をよじ登ってあの機械まで辿り着くかの二者択一となった。
 答えは自ずと定まってくる。
 俺はせっかく着込んだドレスを恨めしそうに脱いでいった。下着も脱いだが、さすがにパンツだけは穿いたままにすることにした。
 ようやくのこと、羽を広げる。トンとジャンプして飛び上がると『俺』の肩に降り立った。目の前に機械があった。スライドスイッチがそこにある。手を伸ばし、スイッチの端に手を掛けた。
 びくともしない。
 洗面所のノブやドアを開けることに比べればスイッチをスライドさせるだけなのだ、そう大きな力がいる訳でもない。どこかにロック機構がないか探してみたが、それらしいものは見つからない。本当に単純なスライドスイッチなのだ。試しに同じようなスイッチの付いているステレオコンポを操作してみた。ステレオはけたたましい音を発しだした。
 
 再びドアが叩かれた。
「宏紀、居るんだろ? 開けてくれよ。」さっきまで音のしていなかった部屋にステレオが鳴り響いているのだ。居留守を使う訳にもいかない。俺はドアに向かって飛んでいった。
 カチャカチャとチェーンを外す音を聞いて勇一はドアを叩くのを止めていた。ロックを外し、ドアを開いた。
 俺はドアノブにもたれていたため、勇一の目に止まることはなかった。勇一にしてみればドアが自動的に開いたように見えた。そして、椅子の上にぐったりしている『俺』を見つけた。慌てて靴を脱ぎ『俺』に駆け寄った。「宏紀?!」勇一は『俺』の身体を揺り動かす。
 俺はその間にもドアを締め、チェーンを戻していた。
 そして勇一の側に飛び戻った。
「ゆ、勇一!」俺はできるだけ大声で彼を呼んだ。キッと振り向いた勇一の顔が一瞬後に崩れた。
「な、何だお前は?」目の前にあり得ない生物=想像上の=妖精が飛んでいるのだ。彼の反応は当然のものとも言える。俺は必死になってこれまでの状況を説明した。
「とにかく、この機械を止めてしまえば良いんだろう?」勇一は『俺』の頭から強引にヘッドフォンのような機械を引き剥がした。
 一瞬、目の前が真っ暗になる。
 ポトンと何かが落ちる音がした。
 
 俺はゆっくりと目を開けた。俺は椅子に座っていた。振り仰ぐと勇一がヘッドフォンのような機械を手に俺を見つめていた。そして、彼の視線が床に向かう。俺はその先を追った。
 床の上に妖精のフィギュアが転がっていた。
 
 


(2)
 
「なぁ、頼むよ。」
 勇一が押しかけて来ていた。勇一は動く妖精に心を奪われていた。勇一の要請で俺の意識は幾度となく妖精のフィギュアに移されていた。あの機械が移せるのは俺の意識だけであって、いくら勇一がトライしてもあの機械は何も反応しなかった。
 勇一は妖精に合う服を幾着も調達してきた。俺が羽が出せないことを言うと、背中に羽を出せる切れ込みの入った服を持って来た。それは単に背中の布を切ったというよりは、背中の切れ込みを考慮したデザインになっている。どう考えても既製品ではない。
 俺は妖精になり、勇一の持ってきた服を着てやった。『俺』の頭からあの機械を外せば元に戻れることが判っていたので、暫くは勇一の願いを聞いてやっていたが、勇一の要求は次第にエスカレートしていった。
 最初は単に持ってきた服を着せるだけだったが、やがてあれやこれやとポーズを付けさせてきた。持ってくる服がドレスからセクシーなものに変わってゆくと同時に、とらせるポーズも官能的なものを要求してきた。それだけなら良かったのだが、妖精の肉体がその官能的な動作に刺激を受けてしまったのだ。我知らずのうちに妖精の喉から艶かしい喘ぎ声が漏れていた。股間が熱くなり、湿り気を帯びてきた。勇一がその徴を目敏く見つけていた。
「カンじてるのかい?」勇一が軽く息を吹きかけてきた。俺のうなじを吹き抜ける暖かな風に俺は身悶えていた。「ぁああ、あん♪」脚から力が抜け、俺は座り込んでしまった。
 勇一は毛筆を取り出して、俺の身体のあちこちを刺激し始めた。
 気が付くと俺は着ていたものを全て剥ぎ取られ、勇一の前に全裸の姿を晒していた。脚が開かれ、股間の秘所が彼に覗かれている。その間も毛筆の刺激は続いている。俺の意志を無視するように、俺の手は乳房を覆い、指先でその先端を弄んでいる。もう一方の手がそろそろと下に伸びてゆく。指先が股間を割って入り込んでゆく。快感を貪るように俺の手が動いていった。
 勇一の視線が突き刺さる。それさえも快感と感じ取ってしまう。
「あっ、あっ、あっ、ああ〜〜〜〜〜♪」俺は嬌声をあげ、一気に頂きへと昇り詰めていった。
 
 気が付いたとき、俺の廻りに異臭が漂っていた。俺の身体に粘りけのあるモノが貼り付いていた。栗の香を放つ白い粘液の正体に気付くのに一瞬の時間を要した。
 勇一を見ると慌てて股間に手を伸ばしていた。ズボンのチャックが開いて見たくもない他人のペニスが覗いていた。勇一はティッシュを手に後始末をしていた。俺は込み上げてくる恥ずかしさと怒りを押さえつけた。
「勇一、俺にもティッシュをよこせ。」
 無言で渡されたティッシュで身体の汚れを拭うと、俺は洗面所に飛んでいった。蛇口を捻ると冷たい水が流れだす。その冷たさに一瞬ひるむが、身体の火照りを納めるためと言い聞かせて水の流れに身体を押し込んだ。
 タオルで水滴を拭っていると、ガチャガチャと音がした。慌てて飛んでゆくと、勇一が外に出ようとしていた。
「お、おい。待てよ!!」俺は勇一の前に廻り込んだ。その俺の身体を勇一が握りしめた。奴の目が潤んでいる。「はなせよ。」俺の叫びに指が開かれた。ズルリと落ち掛かるところを羽を広げて押し止めた。「ご、ごめん…」勇一の言葉は力なかった。
「とにかく、俺を元に戻してくれ。」俺の言葉にロボットのように振り返った。勇一の手が『俺』の頭の機械に掛かった。
 目の前が真っ暗になった。
 
 気が付くと、ドアは開け放たれ勇一の姿はどこにも無かった。
 それから暫くの間、勇一は姿を現さなかった。そして今日、久しぶりに勇一が現れたのだ。
「なぁ、頼むよ。」と言われたが、先日の痴態の後である。もう一度あの快感を味わってみたいという誘惑を押し殺し、俺はかたくなに断り続けた。
「大丈夫。今日のはおとなしいやつだから、この間のようなことにはならないよ。」そう言って袋から取り出したのは童話に出てくるお姫様が着るようなドレスだった。もちろん背中には羽を出す切れ込みが入っている。また、飛ぶことを考慮して、軽めの生地で造られていた。
 いつの間にかそれを着てみたい気持ちに傾き始めていた。が、気を取り直して「だ・め・だ」と声に出す。勇一は暫く考えた末、「これは使いたくなかったんだ…」と言って袋の中からあるものを取り出した。
 それは、あのヘッドフォンのような機械だった。
 いつの間に勇一の手に渡ったのだろう?俺は慌てて機械を隠しておいた箪笥に駆け寄った。引き出しを開けると中には妖精のフィギュアと一緒にちゃんと機械が収まっていた。
「そこにあったのかぁ。」俺の肩ごしに勇一の腕が伸びていった。
 奴の手が機械を掴んだ。「許せ」と言って奴は俺の頭に機械を被せていた。
 
 俺は箪笥の引き出しの中にいた。
 勇一は『俺』の身体を抱き抱えていた。俺は飛び上がり勇一の後を追った。彼は『俺』の身体をベッドに横たえると、その脇に自分も横になった。彼の手にはもう1つの機械があった。彼はそれを自分の頭に被せた。そしてスイッチを入れた。
 勇一の身体はビクリと震えるとそのまま動かなくなった。
 その直後、がさごそと音が発せられた。勇一の持ってきた袋が蠢いている。袋の口からポンポンとドレスが投げ出されてきた。その後、袋の端に掌が現れた。それは俺のこの身体と同じような大きさの手だった。その手を支点にそいつが姿を現した。
 
「よう宏紀。俺が判るか?」それはもう1体の妖精フィギュアだった。俺と違ってしっかりと服を着込んでいる。そしてそいつは『男』だった。
「勇一か?」俺は勇一と思われる妖精の前に舞い降りていった。「な、なんで…」
「決まっているだろう。お前が余りにも美しすぎるのがいけないんだ。俺はもう自分を抑えきれない。お前を俺のモノにしたい。だから俺も妖精になった。」
「何を馬鹿なこと言っているんだ。」
「そうだ。俺は馬鹿だ。もう心の箍が弾け飛んでいるんだ。俺は俺自身の欲望のままに生きることにしたんだ。」そう言って勇一は俺を抱き締めた。そのまま俺の唇を奪う。ガーンと脳天を突き抜けるショックを受けた。
「宏紀、愛してるぜ。」その言葉だけで俺の両脚から力が抜けていった。勇一が羽を広げる。俺を抱き抱えたまま部屋の中を上昇していく。自分の力でなく宙を舞う心地好さに全身からどんどん力が抜けていった。勇一の逞しい腕に抱えられ、金色の髪を風になびかせる。
 俺はもう『女』になっていた。
 
 机の上のクッションに横たえられた。勇一の愛撫が続く。始めて他人の手で秘所が弄ばれる。
「あぁん。あん♪」俺は素直に勇一の行為を受け入れていた。
「愛してる。愛してる。愛してる…」勇一の口から紡がれる言葉はルーンのように俺の心をとろけさせてゆく。俺の肉体は全てを受け入れる準備を完了していた。
「来て♪」俺は勇一にささやいて言った。
 勇一はあっと言う間に服を脱ぎ去っていた。彼の股間には逞しい逸物が備わっていた。
 勇一が肉体を密着させる。俺の開かれた股間に降りてくる、
 俺の膣の中に彼のモノが侵入してくるのを感じていた。
「ぁあ、ああん♪」俺が喘ぐと、俺の中で彼のモノが打ち震えた。
「行くよ。」勇一はその言葉と同時に腰を動かし始めた。俺の中で彼のモノが挿抜される。彼の動きに合わせて俺も腰を揺すり始めた。
 快感が波紋のように広がってゆく。
「あん、あん、あん、あん、あん…」
 部屋の中には俺の喘ぎ声と二つの肉体が奏でるリズムに満たされていった。
 やがて、俺の中のモノに変化が現れてきた。硬さと太さが増してきた。勇一の息が荒くなる。
「あ、あっ、あ…」勇一の口からも声が漏れる。
 その瞬間、俺の膣が彼のペニスを締め上げていた。
 ドクン!! と、巨大は塊がペニスの中を突進してきた。そして、俺の膣の中に放たれる。
「あ、あ、あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
 俺は嬌声を上げ、一気に頂きを飛び越えていった。
 
 


(3)
 
 ベッドの上には腐乱した2つの屍が転がっていた。
 死因は餓死であった。
 目につく外傷もなく、冷蔵庫には食料が充分に詰まっていた。
 だれもが首を傾げた。
 
 そして、もう一つ机の上のオブジェに悩まされる。
 それは男と女の2体の妖精のフィギュアであった。
 2体はまさに男と女として性交の只中にあった。
 
 何があったのだろうか?
 答えを出せる者はどこにもいなかった。
 
 
 

−了−


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