返還


(1)
 
 私は全裸で鎖に繋がれた少女の前に立った。
 手にした紙袋からソレを取り出す。
「これが何だか判りますか?」
 少女は恐怖に震えていた。
「この張形はあなたのペニスで型をとったものですよ。」
 少女の姿を与えられた男…元彼の目が見開かれた。
「ねぇ♪ 見覚えがあるでしょう?」
 元彼は首を横に振った。
「あなたのペニスはもう跡形もなくなってしまった。ですから、これをあなたにお返ししましょう。」
 元彼の少女は身体を強ばらせていた。
「あらぁ♪ そんなに硬くなっていては元の所に返せないじゃありませんか。」
 私は元彼の前に屈み込んだ。
 元彼は鎖に阻まれながらも必死で抵抗している。
「そんなに暴れていると、綺麗なお肌が傷ついてしまいますよ。」
『これは、俺の身体じゃない!!』
 弱々しくも抵抗する声は愛らしい少女の声だった。
 
 
「仕方ありませんね♪」
 私がスイッチを入れると壁の中に仕込まれたモーターが回り始める。
 キリキリとチェーンが巻き取られてゆく。
 それにつれ、少女の手足が伸ばされてゆく。
『や、やめろ!!』
 元彼の抵抗は何の足しにもなっていない。
 私の前で元彼の股間が露わになってゆく。
 そこには瑞々しい少女の性器が備わっていた。
「あらぁ〜困りましたねぇ♪」
 私はさも、たった今気づきました というよにわざとらしく言った。
「このままではペニスを返そうにも、貼り付ける場所がありませんねぇ♪」
 私は張形の根元を元彼の下腹部に押しつけて言った。
 元彼は逐一私の行動を追っていた。
「そうだ。反対向きにすれば良いんじゃない?」
 私は張形を握り直した。
『い、厭っ!!』
 元彼の叫びはレイプされようとしている女の子のものと同じに聞こえた。
 
 
 私は張形の先端を少女の入り口に触れさせた。
『だ、駄目っ』
 そのまま2〜3度、裂け目をなぞるように往復させる。
『お、お願い…』
 今だ開発されていないそこは、なかなか濡れてこない。
 私はジェルを塗り込んだ。
『止めて…』
 元彼の目から涙が落ちていた。
「さぁ、いきますよ♪」
 わざとらしく声を掛ける。
『……』
 私はグイと張形を押し込んだ。
 少女は必死に痛みを堪えていた。
 私は押し込んだまま待っていた。
 少女が呼吸をし始める。
 私は元彼に声を掛けた。
「どうです♪ 女の子になった気分は?」
 
 
 私は張形を動かし始めた。
 最初は微かな振動を与える。
 それはゆっくりと大きなうねりへと変化してゆく。
 私は身に着けたテクニックの全てを注ぎ込んだ。
 少女の緊張が徐々に解けてゆく。
 やがて小さな喘ぎ声が漏れてきた。
 私は何も言わなかった。
 慎重に張形を動かし続ける。
 私のテクニックに少女の肉体は正直に応えてくれる。
 張形を動かすとチュパチュパと液体の音が混じりだす。
 喘ぎは言葉にならない媚声に変わってゆく。
 既にテクニックを要する期間は終わっていた。
 私は少女の肉体の上げる要求に従って張形を動かしてやるだけだ。
 私は満足感に満たされる。
 放っておいても少女は絶頂に達するだろう。
 鎖の拘束を解いてやると、自らの掌で乳を刺激し始めていた。
『ぁ、あ、あっ、ああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 嬌声を上げ、少女はその場にぐったりと横たわっていた。
 
 
 私は気を失っている元彼に、彼の着ていた服を着せてあげた。
 変化した肉体は服のサイズに合わず、傍目からみれば滑稽である。
 しかし、いきなりスカートを穿かすのも気の毒ではある。
 一応、女の子の服を一揃い、彼自身の張形と一緒に紙袋に入れておいた。
 車に乗せ、彼の自宅に運ぶ。
 服を着たままベッドの上に転がしておいた。
 
 to be continue.
 
 


(2)
 
 目ざまし時計の音が朝を告げていた。
 俺はベッドの上にいた。
 どうやら服を着たまま眠ってしまったようだ。
 それにしても、昨夜の記憶がほとんどない。
 どうやって家に辿り着いたのか想像もできない。
 
 しかし、それ以上に奇怪しな記憶が残っている。
 夢の中の出来事にしては細部までしっかりと思い出されるのだ。
 
 俺が『女』にされてしまった。
 
 なんて、夢にしても唐突過ぎる。
 だが、俺の股間から発せられるモノが挟まったような違和感は何なのだろうか?
 胸の上に何かが乗っかっているような感じがするのは?
 
 ゆっくりと起き上がった。
 胸の上に乗っていたものは重力に従って俺の胸を引っ張っていた。
 なんだか服がぶかぶかになったような気がする。
 ベッドを降りて洗面所に向かった。
 
「………」
 鏡の中に女の子がいた。
 顔に手を当てる。
 女の子も同じようにする。
 
 この部屋には俺以外誰もいないのだ。
 だとすると、鏡に映っているこの女の子は俺自身に違いない。
(『夢』は『現実』だった?)
 
 確認するまでもない事だったが、俺は服を脱いでいった。
 この服は俺が昨日ずっと着ていたものだ。
 しかし、その下から現れたのは正真正銘の女の子の肉体だった。
 
 鏡に映っていた顔はもちろんの事、ずっしりと重いバスト、股間の茂みの奥には何もない。
 割れ目の中には女性器が存在しているのだろう。
 モノが挟まったような違和感がそこを発信源としているようだ。
 
 とにかく、これが『現実』なのだ。
 俺は全裸のまま、ベッドの上に戻った。
 ふと見ると、見慣れない紙袋が置かれていた。
 中には女物の衣類が一式入っていた。
 お揃いのパンティとブラジャー。パンストや肩紐で吊るすようなアンダーシャツの代わりのような下着。どれも柔らかな生地でできていた。
 ワイシャツよりも柔らかなシャツ。ブラウスというものなのだろうか?
 その上に羽織るのであろう、淡い紫色のカーディガン。
 そして、スカート。
 女物のサンダルまで用意されていた。
 
 
 しかし、さらに紙袋の底から『夢』=『悪夢』の続きが蘇ってきた。
 『夢』の中で俺を貫き、さらに快感を与え昇天させられた忌まわしい張形だった。
 俺はそれを手に取っていた。
 これは、俺自身のペニスを型に作られたものらしい。
 そう思うと、無下にもポイとは捨てられない。
 
 しげしげと眺めてみる。
(これが俺のペニスなのか?)
 普通では見ることのできない角度から見てみると不思議に感慨深い。
 
(これが俺の中に入っていたのか?)
 また、別の想いが沸いてくる。
 それは条件反射のように俺の肉体に変化をもたらした。
 
 ジュッ!!と股間から体液が吹き出してきた。
 下腹部が熱くなる。
 頬が紅潮し、乳首が硬くなっていた。
 
 股間がむず痒い。
 そろりと手を伸ばす。
 指先に熱い雫が絡みつく。
(濡れている?)
 
 頭の中ではこれ以上進んではいけないと警告を出し続けているが、俺の指は俺の意志を無視してその先に進んでゆく。
「あんッ♪」
 俺の口から愛らしい喘ぎが漏れる。
 指の腹が敏感な所に触れたのだ。
 
 俺の指は通りすぎた敏感な所を探し始めていた。
 それは直ぐにも見つかった。
「あっ、あぁ…」
 それはもう喘ぎではなかった。
 媚声・嬌声へと変わってゆく。
 いつのまにか攻めたてる指が増えていた。
 体液は止めどなく溢れていった。
 
 
(欲しい♪)
 俺の中でそんな想いが沸き上がってきた。
 自らの指だけでは充分ではなかった。
 
 ベッドの上を彷徨う俺の手があるモノに触れた。
 張形だった。
 俺の手は躊躇なくそれを掴んでいた。
 
「あ〜〜〜あ、あうぅん♪」
 俺は満足の媚声をあげていた。
 俺の中に俺のペニスが挿入されているのだ。
 
 突然、スイッチが入った。
 俺の中でペニスが悶え始めた。
「な? あ、あんっ♪」
 驚きと悦びの入り交じった衝撃が俺の中を走り抜けていった。
 
 そらから先は糸の切れた凧のように、もう止めどもなく昇っていくしかなかった。
 
 
 to be continue.
 
 


(3)
 
 それは、一つの、そして大きな選択肢だった。
 俺はこのまま全裸でいる訳にもいかない。
 そして、服を着ようとした場合、今まで通りの自分の服を着るか、この女物の服を着るかだ。
 ひとつに、今の俺の肉体はどうみたって今までより小さくなっている。
 何を着てもぶかぶかに違いない。
 それに、今の俺の顔はどこから見ても女の子にしか見えない。
 こんな顔でスーツを着れば、どこかのTVコマーシャルに出てくる娘と変わりはない。
 着て着られない事はないが、違和感甚だしいに違いない。
 
 しかし、こちらの女物の服はどうなのだろう。
 わざわざここにあるのだから、サイズはぴったりなのだろう。
 頭の中はともかく、無骨な男が女装するわけでもない。
 今の俺には一番しっくりくる服の筈である。
 あとは『俺』の心一つなのだろう。
 
 考えた挙げ句、俺は一つの妥協点を作り上げた。
 とにかく、いまの肉体では下着類は女物を着るしかないのだろう。
 その上で、俺の持っている服の中からユニセックス風のものを探して着てみる事にした。
 
 が、ブラジャーの付け方が判らない。
 背中のフックがなかなか掛からないのだ。
 次第に腕が疲れてくる。
 一旦外してみた。
 腕が上げられないので、腰の所で巻いてみる。
 今度はフックを正面にして掛けてみた。
(ちゃんと止まるじゃないか)
 そして閃いた。
 フックを止めたまま腰の回りをぐるりと廻す。
 そのまま胸の所まで擦り上げた。
(OK、OK。)
 肩紐に腕を通し、カップの中にバストを納めるとなんとか出来上がった。
 
 次にパンストに手がける。
(確か、爪先まで丸めてから穿くんだったけ?)
 右足、左足とストッキングの薄い皮に包まれてゆく。
 そこここにできた弛みと歪みを直してゆく。
(女はこんな面倒な事を毎日やっているのだろうか?)
 そんな事を思っていると、お化粧だってあるのよ と突っ込まれそうだ。
 
 シャツの代わりの下着を頭からかぶった。
 GパンとTシャツは俺のものを着た。
 鏡に映る姿はやはり女の子だった。
 俺のTシャツも胸の膨らみで押し上げられると、また別ものに見えてしまう。
 しかし、ズボンはあくまでも男物だった。
 違和感丸出しである。
 
 仕方なく、スカートを手にした。
 ズボンを脱ぐと、下着にTシャツだけのセクシーな女の子が鏡に映っていた。
(このスカートを穿いてしまうと、もう男に戻れないのでは?)
 俺は意を決してスカートに足を入れた。
 
 鏡の中に映っているのはどこから見ても女の子だった。
 化粧はしていなくても瑞々しい肌と健康的な紅い唇が何も問題ないと言っていた。
 アクセサリーも追々揃えていけば良い。
 
 それよりも、明日から着るものを揃えておかなければいけないわ。
 下着だってこれ1枚しかないんだし、スカートももう2〜3枚はあると良いわね。
 ジーンズもちゃんとサイズを合わせておきたいし、Tシャツももっと可愛らしのが良いのよ。
 
 あたしはバッグにお財布を入れると、サンダルを穿いて外に出ていた。
 
 
 to be continue.
 
 


(4)
 
「如何でしたか? 女の子の生活は♪」
 私は元彼に声を掛けた。
『今度は何なのよ!!』
 元彼はすっかり女の子の雰囲気を身に付けていた。
「ほぉ、大分女の子が板に付いてきましたね。」
 私は少女の顎に指を掛け、押し上げて言った。
 少女は目を細め睨み付けてきた。
「残念ですが、試用期間が過ぎましたので返還させていただきます。」
『返還?』
 少女は何のことか解らず、戸惑っていた。
「そうです。その義体はサンプルとしてあなたに貸しだされたものなのです。この先、契約していただければ、あなたの好みに合わせた義体をオーダー致します。」
『サンプル?借りている?』
 少女は必死になって考えていた。
『じゃあ、この肉体を返したら、あたしはどうなるの?』
「元の肉体に戻っていただくことになります。」
 私は男の肉体を取り出して言った。
『いやっ!!』
 少女は叫んでいた。
『あたしはこのままのあたしでいたいの。契約でもなんでもするから、このままでいさせて!!』
「それはできません。あなたがその義体をオーダーしたとしても一旦は元の肉体に戻っていただくことになっております。」
『どうしてもできないの?』
 瞳を潤ませ上目遣いで見つめてくる。もう女の子の武器を使いこなしている。
「わかりました。しかし、契約のためにも一度は元の肉体に戻っていただかなければなりません。もちろん、契約行為が終われば再びその義体に戻してさしあげます。」
『ほんとう?』
 少女の瞳がキラキラと輝いている。
「確認しますが、契約後は元の肉体は義体の材料として還元されますので、お返しすることができなくなります。よろしいですね?」
『かまわないわ。』
「それでは契約の証を契らせていただきます。」
 私は少女の義体から男の肉体に彼を移した。
 既に男の肉体の一部は義体の材料として徴収されている。
 彼の股間にあったモノはきれいに消え失せていた。
 その跡に私は契約の証を突き立てた。
「あ、あぁん♪」
 男は女のように身悶えている。野太い声で女のように喘いでいる。
 契約の証が彼の体内に呑み込まれてゆく。
「あぁ、あぁ、あああ〜♪」
 男の肉体が女のエクスタシーを感じているのだろうか?
 契約の証は男の内側から彼の肉体を義体の材料として吸収し始めていた。
 既に手足は消失していた。
 大きく身を捩らせ、男は絶頂を迎えていた。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………・・・・・・・」
 意識を失った彼を再び義体に戻してやる。
 吸収し尽くされた男の肉体は頭を残すのみとなった。
 
 少女が意識を取り戻す。
 その目が最後に消えてゆく男の肉体を捉えていた。
『終わったの?』
「いいえ、これからですよ。」
 私はにんまりと微笑んだ。
「契約の内容はよく確認しないといけませんよ。」
『??』
「あなたはその少女の義体を手にいれました。しかし、その義体はあくまでもサンプル用なので、定期的なメンテナンスの必要があります。その方法をこれからご説明します。」
『ど、どういうこと?』
 少女の顔にあせりの色が浮かんでいる。
「何、簡単なことですよ。週に1回、必ず新鮮な男の精液をその体に取り込むだけです。その可愛らしい口からでも、淫らしい下のお口からでも。あなたにとっては大した事はないでしょう?」
 少女の思考は停止してしまったようだ。
 私は更に続けた。
「さぁ、先ずは練習してみましょう♪」
 私は少女の口をこじ開けると、自分の立派なモノを突っ込んでいた。
 
 
 to be continue.
 
 


(END)
 
 俺はやつの精液を呑まされていた。
 それが、この少女の肉体を維持する唯一の方法だというのだ。
 性的な快感を与えられることなく、ただ精液を呑まされる。
 やつのペニスが俺の口の中を蹂躙している。
 
 股が開かれた。
 未だ濡れていない所に無理やり押し込んでくる。
 底無しの精液が俺の膣の中を満たしてゆく。
 義体と呼ばれる少女の肉体はやつの精液を貪欲に吸収していった。
 
 
 
 
 やつの言うとおり、この肉体は男の精液を必要としていた。
 精液を取らずに1週間が過ぎてしまうと、急速に老化が始まるのだ。
 老化とはいっても、少女から女性へと成長する訳ではない。
 肌がカサカサになり、髪の毛の艶が失われ、ズルズルの抜け落ちてゆくのだ。
 
 俺は吸血鬼が乙女の血を必要とするのと同じように男の精液が必要だった。
 精液が吸収されると、肌も瑞々しさを取り戻し、髪の毛も豊かになる。
 全てがリフレッシュされる。
 
 しかし、それはまた、俺の心にも影響を与えてしまうようだ。
 身も心も女の子になっていたところに精液のリフレッシュが掛かると、俺の心もまた元の男の心に戻ってしまうのだ。
 心は男のまま、女の体に他の男のペニスを咬わえこむのだ。
 そして、男の精液を絞り出すために、俺は『女』を演じなければならないのだ。
 
 確かに快感はある。
 独りで慰めているうちはその快感を100%自分のものにできるのだが、男の心を持ったまま他の男に抱かれている図は何度経験しても受け入れられるものではない。
 精液を得なければならないという義務感だけが男に抱かれるのを許している。
 その中で得られる僅かな快感に俺はすがりついていた。
 
「あぁ、あぁ、イクゥ、イッちゃう〜♪」
 俺は偽りの媚声をあげて男の上に跨がっていた。
 男は俺の腰を押さえてグラインドする。
 俺の中で男のペニスが蠢いている。
 俺は股間の力を加減しながら、男を限界に導いてやるのだ。
 
 男の精液が俺の中に放たれた。
(これでしばらくは生き延びられる)
 ベッドの上で横たわる俺がそんな事を考えているとは知りもせずに男は身支度を始めていた。
「じゃぁこれ。約束の…」
 男は紙幣を数えて机の上に置くと、犯罪者が現場から逃げ去るようにコソコソとホテルの部屋からでていった。
 
 俺もまた身支度を整える。
 姿見に映る『俺』はいつまでも若く、美しい。
 この先、10年も100年もこのままなのだろう。
 
 俺はテーブルの上から紙幣を取ると、俺の仕事着であるセーラー服のポケットに押し込み、まだ宵の口の街に戻っていった。
 
 
 to be continue?
 
 
 

−了−


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