それは、僕が車を持っていなかったのが発端だったのだろうか?
彼女に「温泉に行こう」と言われ、彼女の車に乗って行った。
高速道路を降り、幹線道路からも外れて、国道とは名ばかりの道を走っていた。
「お願いがあるんだけど♪」
彼女が言った。
「これから行く温泉なんだけど、女同士の格安チケットで予約しちゃったのよね♪」
僕もある程度は予想がついていた。
彼女はたまに僕に女装させるのだ。
後部座席にはそれに必要な道具の入った鞄が置かれていたのだ。
しかし、これまで女装は部屋の中だけだったのでなんとか許容範囲だと自分に 納得させていたのだが、女装で温泉に行くという事は泊まっている客や旅館の従業員に僕の女装姿を晒す事になるのだ。
「…や、止めようよ。」
無駄とは知りつつも、一応拒絶してみる。
「なら、ここから歩いて帰ってね。」
彼女は道端に車を止めた。
「…判ってるのに…」
「だったら、さっさと着替えなさいよ。」
僕は従うしかなく、後部座席の鞄を開いた。
「ようこそ、おいで下さいました。」
女将と思われる恰幅の良い女性が迎えてくれた。
後ろにはこんな山奥にはもったいないくらいの綺麗な仲居さんたちが並んでいた。
僕は彼女の後に付き従うだけだった。
荷物は彼女が宿帳に記帳しているあいだに車から運び出されていた。
宿の人との交渉は全て彼女任せだった。
貸し切り風呂の予約もしているようだ。
いくつかのコースが紹介され、それを選んでいる。
「では、こちらへ。」
仲居さんに促され、僕達は部屋に案内された。
「ふぅ。ねぇ、もう脱いでいい?」
女装姿が人前に晒される時間を少しでも減らしたいと、彼女に聞いてみた。
「そうね、いいわよ。」
思いの外、簡単に許してくれた。
が、
「せっかくの温泉なんだから、浴衣に着替えましょうよ。」
そして取り出されたのはピンク色の花柄がプリントされた浴衣だった。
ビジネスホテルなどにあるような、青の縦縞の浴衣しか想像していなかった僕は一瞬思考が停止してしまった。
「着付けは任せてね♪」
どこを見ても、僕の想像していた浴衣は見当たらない。
「当たり前でしょう?レディースパックなんだから。女の子受けする浴衣しか置いてないわよ。」
「…」
「ここでは、あなたは女の子なんだから♪ さぁ、一緒に着替えましょうね♪」
しばらくの後、僕は彼女とおそろいの浴衣を着て畳みの上に座っていた。
「あのぉ〜」
僕はおずおずと尋ねた。
「せっかく温泉に来たんだから、お風呂入りに行きません?」
彼女は、えっこれから?と言ったような顔をした。
「そぉね、貸し切り風呂も予約してあるけど、大浴場もいってみたいわね。」
そこで、彼女がにやりとした。
「もしかして、男湯を使おうと思ってるんじゃないでしょうね♪」
「だって僕はオトコ…」
「あなたはここでは女の子なのよ。入るんだったら女湯に決まっているじゃない。」
「そ、そんな…」
「だから、貸し切り風呂を予約しておいたの。時間になったら一緒に入ろうね♪」
「は、はい…」
僕はそう答えるしかなかった。
「お茶、煎れましょうか?」
何もしないでいるのに居たたまれず、僕は座卓のお茶セットに手を伸ばした。
「ありがとう。」
そう言いながら彼女はニヤニヤと僕の方を見ていた。
「そう言えば昔の歌にこんなのがあったよね♪
浴衣の〜君は〜って
知ってる?」
「い、いいえ。」
「ねぇ、膝枕してよ。」
「な、なにを唐突に?」
「これも歌にあったんだ。
君の膝枕に〜って」
「は、はぁ」
そしてしばらくの間、彼女は僕の太股に頭を乗せて転がっていた。
やがて、電話が鳴った。
「お風呂の準備ができたって。」
僕達はタオルを持って貸し切り風呂に行った。
脱衣所で服を脱ぐ。
「やっぱ胸ないねぇ〜♪」
浴衣を脱ぎ欠けの僕に抱きついてきた。
「けど、お肌の艶は良いのよね。」
人指し指をうなじに這わせる。
「このあとエステも予約してあるんだ。一緒に行こう♪」
もちろん、僕が断れる訳がない。
「わ〜っ♪ 露天風呂だ♪」
すりガラスの扉の向こうから彼女の声が聞こえた。
僕もタオルで胸と股間を隠して扉を開けた。
視界が開けた。
空が広がっていた。
山々の連なりは緑に彩られている。
「早くおいでよ。」
打たせ湯もそこそこに、彼女は湯船に飛び込んでいた。
「はぁ〜〜♪ ゴクラク、ゴクラク♪」
彼女は伸ばした脚を広げ、畳んだタオルを頭に乗せていた。
「ねぇ、オジサン入っていない?」
「良いじゃない。二人しかいないんだし。」
「女の子ならもう少し恥じらいというものがあっても…」
「その点あんたは合格だね。オジサン欲情しちゃうかも♪」
僕は何も言えず、空を眺めていた。
「で、エステってこのままで行くの?」
再びピンクの浴衣を着せられていた。
「そうよ。あなたは女の子なんだから。ショーツも膨らませないようにがんばってね♪」
エステルームには白衣のお姉さん達が僕らを待っていた。
交渉はみんな彼女任せで僕はじっとしている他はなかった。
彼女は最後にこう付け加えた。
「彼女、胸がないのを相当気にしているの。よろしくね♪」
お姉さんとの間に無言の密約が交わされたようだ。
僕はベッドの上に導かれた。
「特性のハーブティーです。先ずはこれで心を落ち着かせて下さい。」
暖かな紅茶は内側からぽかぽかと温めてくれる。
温泉で温められた身体との相乗効果で、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
「終わったよ♪」
彼女に声を掛けられて目が覚めた。
既に浴衣を着せられてリクライニングチェアに座らされていた。
「仕上げにこのジューズを飲んでだって。」
差し出されたフルーツのミックスジュースのようなものを受け取った。
ストローに口を付ける。
甘い香りが口の中に広がった。
「おいしい♪」
そう言ってから僕は違和感を覚えた。
そうだ。声が違う。
「あ、あ、あっ!!」
確かに僕の声なのに、僕の声じゃない。
裏声ではないが、かなり高い声に聞こえる。
そう、まるで女の子の…
違和感はそれだけではなかった。
鏡に顔を映すと、元々女顔と言われていたが、更に愛らしくなっている。
それは単に眉毛を整えられたとか、パックしたとかいうエステでの効果以上のものがある。
「ね、エステって良いでしょう?」
「こ、これってどういうこと?」
「まぁ、魔法のエステとでも言ったところかな?ほら、ここもばっちりでしょう♪」
「キャッ!!」
僕は思わず叫んでしまった。
彼女の手が懐に差し込まれ、ムギュと掴んだ。
掴まれたのは僕の胸だった。
彼女の手を振りほどいて、浴衣の上から触れてみる。
僕の胸にはバストができていた。
彼女に掴まれた跡がまだ痺れたように感じる。
(もしかして?)
と、浴衣の裾を割って股間に手を差し込んだ。
「…ナイ……」
意気消沈している僕に彼女は明るく語りかける。
「良かったね♪ これで大浴場にも気兼ねなく入れるでしょう?」
いつの間にか、僕は大浴場の脱衣所にいた。
もちろん女性用の方だ。
まわりには数人の一般客が何の気兼ねもなく、裸体を晒している。
「早くしなさいよ。」
そう言う彼女も他の女達の一人だった。
ボーっと立っている僕の浴衣の帯を勝手に解いてゆく。
袷が広げられると、鏡の中に全裸の女の子が映っていた。
これが僕だ…
「ほらほらほら!!」
腕を引っ張られるとタオルで隠そうとする努力も虚しく僕の秘所が晒される。
「あ、あ、あ…」
僕は何の抵抗もできず、女湯に連れ込まれてしまった。
「ねぇ、背中流してあげる。」
もちろん彼女の申し出を断ることは不可能であった。
スポンジにボディーソープが注がれ、僕の背中に擦り込まれてゆく。
しかし、それだけで済む訳がない。
滑った振りをして僕の真新しいバストに手を伸ばしてくる。
いつしかスポンジではなく、直接掌で触れてくる。
触れるだけではない。揉んだり、捻ったり、様々な刺激を与えてくる。
僕は声をあげないようにじっと我慢していた。
「よく頑張ってるわね。」
それは彼女のほめ言葉なのだろうか?
「でも、これまでよ♪」
彼女の指先がすーっと腰から滑り込んできた。
「あっ、あぁ…」
思わず声が出る。
彼女の指が僕の股間に食い込んだ。
そこにはいつもの肉棒の代わりに敏感な花弁が存在していた。
「や、やめて…」
彼女の耳元に訴える。
「いや♪」
それが彼女の答えだった。
僕は必死で堪えた。
そしてそのままイかされてしまった。
僕は大浴場の洗い場の片隅で始めての女の子を経験した。
僕達は食事を挟んで3回も風呂に入った。
その度に僕はイかされている。
「夜は長いのよ♪」
と、彼女が言っている。
部屋の襖を開けると、布団が敷かれていた。
「さぁ、夜の部を始めましょう♪」
僕は布団の上に立たされた。
両手を上げさせる。
「いくわよ!!」
彼女が言う。
「そーれー♪」
掛け声とともに、浴衣の帯が引っ張られた。
僕はその場でぐるぐる回るしかない。
そしてその場に倒れてしまった。
その上の彼女が伸し掛かってくる。
「あ〜れ〜くらい言いなさいよ。」
そう言いながら、僕の身体から浴衣を剥ぎ取っていった。
大浴場で散々開発された僕の女の子はもううるうると濡れてきていた。
「良い娘ね♪」
彼女が僕の股間に顔を埋めた。
「あ、あぁ!!」
彼女の舌が僕の股間を嘗めあげた。
部屋の中なので、他の人を気にしなくて良いと思うと、我慢することができない。
快感がストレートに嬌声に変わる。
自分の発する声に更に刺激される。
ピチャピチャと音がする。
「あ、あ、あぁ…」
僕は快感に翻弄されていた。
(んん?)
これまでとは異なる感覚があった。
今、彼女の口は僕の乳首を責めたてている。そして、彼女の右手が僕の股間にあった。
彼女の指が股間の割れ目から、中に入れられたようだ。
僕の肉体が異物を感じ取っていた。
多分、そこに膣があるのだろう。
彼女の指が蠢く。
次第にそこが熱を帯びてくる。
これまでにも増して愛液が溢れてくる。
そして、彼女の指先が求めるものを捜し当てた。
「ひッ、あ、あ〜〜〜〜〜!!」
僕は全身で反応していた。
彼女は更に責め続ける。
僕の頭の中が真っ白に染め上げられていった……
雀の声がした。
朝日が窓から差し込んでいる。
僕はゆっくりと起き上がった。
胸を見る。
そこには形の良い乳房があった。
下から掌を当てて持ち上げる。
適度な重さがあった。
「僕はもう、女の子?」
つぶやき声も愛らしかった。
「3日間ね。」
いつの間にか彼女も目を覚ましていた。
「薬の有効期間は3日間なの。あと2日もすれば元に戻ってしまうわ。」
僕は彼女の言うことが理解できないでいた。
「だから、帰る前にもう一度お風呂に入ろう♪」
全てが彼女のペースだった。
来たときは女装だったが、帰りは女装ではない。
もちろん、着ている服は同じものだけど、今は詰め物をせずにブラを付けている。
来たときは男の子、帰りは女の子。
女の子としての快感も充分に開発されてしまった。
来たときはカップル、帰りは…
女の子同士でも、カップルには違いない。それに、僕はどんな姿になっても男の子だと思っている。
ハンドルを握る彼女を見る。
格好良さにドキッとする。
昨晩、彼女に抱かれた快感を思い出していた。
僕は…
男の子、だよね?