俺は足下に置かれたソレを手に取った。
それは女性が寝間着に使用するネグリジェだった。
やつは何とか俺にこいつを着せたいらしく、空調の温度を下げていった。
この部屋には何もなかった。
ただ、壁の1面に鏡が嵌め込まれていた。
窓もドアもない。
そんな不思議な部屋に俺は全裸で立たされていた。
薄布1枚羽織っただけでこの寒さを凌げる筈もない。
やつの意図は俺にコレを着せたいだけなのだ。
今はやつの指示に従ってやろう。
ネグリジェの裾を広げ、被るように着てみた。
俺の行動に満足したらしく、やつは空調の温度を戻していた。
鏡にはネグリジェを着た男の姿が映っている。
半透明の生地を通して、股間のシンボルも見てとれた。
その映像が揺らいだ。
これは「鏡」のようで鏡ではないモノだ。
鏡の揺らぎが納まった後、そこに映し出されたのは俺の着ているものと同じネグリジェを着た女だった。
バストが突き出し、白い顔に赤い口紅が栄える。
半透明の生地を通して、股間の茂みが見える。
しかし、その「女」は鏡に映った俺のように、俺の動きを真似ている。
俺が近づけば彼女も近づく。
右手を上げれば、彼女の左手が上がる。
首を傾ければ、彼女もそうする。
そこに映る「女」が、鏡に映った「俺」自身と錯覚してしまいそうだ。
俺が掌を胸に充てると、彼女もそうする。
もう一方の手でネグリジェの裾を上げ、股間に添える。
鏡の中の「女」も同じようにする。
胸を揉めば、彼女も自分の胸を揉む。
股間を弄れば、彼女も自分の股間を弄る。
俺が身悶えれば、彼女も身悶える。
倒錯した感情が芽生えてくる。
俺はもっと「鏡」に近づいた。
ネグリジェをたくし上げ、股間を広げて「鏡」に向かう。
彼女も同じように股を広げる。
覗き込むと、そこには微かな雫のきらめかせた女陰が見てとれた。
俺が自分の股間に指を這わせると、彼女の指もまた股間に這い進む。
ゆっくりと指を立てる。
そして彼女の中に指を進ませた。
彼女は俺の指示通りに股間に指を咬えさせている。
俺は彼女の中で指を蠢かせた。
「あぁん♪」
俺が喘いでやると「鏡」の中の女も喘ぐ。
いや、
彼女を喘がせるには「俺」自身が喘がなければならないのだ。
彼女の媚態を見るためには、俺自身が媚態を演じなければならないのだ。
彼女が感ジているように、俺が感ジている表情を作る。
「あん、あん、ああん♪」
俺が喘いでやる。
彼女が喘ぐ。
「あん、あん、ああん♪」
隠されたスピーカから「女」の声が届いた。
「鏡」と同じように、俺の声が「女」の声となってスピーカから出てくるのだ。
気分が乗ってきた。
俺は良いように喘ぎだした。
女の喘ぎ声が部屋の中に充満する。
喘ぎ声は嬌声に変わる。
「あぁ、あぁ、あ〜〜〜〜ん♪」
(どうだ?気持ち良いか?)
「もっと、もっと頂戴♪」
(何が欲しいんだい?)
「意地悪。知っている癖に。」
(言わなきゃ判らないよ)
「貴男の…を頂戴…」
(俺の…なに?)
「…ペニ…ス…」
(どこに欲しいんだい?)
「あ、あたしのオ…マン……」
(なに?)
「あたしのオマンコに、貴男のペニスを入れて欲しいの!!」
(良く言った。ご褒美だ。)
俺は指を二本重ねて、濡れ傍る彼女の膣口に突っ込んだ。
「あっ、あっ、あ〜〜っ!!」
彼女は身を捩り、俺の指をその奥まで導いていった。
俺はそんな彼女の意図を無視するかのように、指を前後させる。
それが、彼女に悦感をもたらす。
次第に彼女の息が荒くなる。
俺も絶頂に向かってラストスパートをかけた。
「あっ………あ!!〜〜〜〜〜〜〜〜……」
俺のペニスから白濁した塊が飛び出す。
それは、彼女の顔に掛かったかのように「鏡」に貼り付いていた。
快感の余韻に浸っていると、
『よぉ。』
後ろから男の声がした。
(あっ)「あっ」
その声に微睡みから引き戻される。
鏡越しに彼女の後ろにやつが立っていた。
振り返る。
『随分お楽しみだったじゃないか?』
その一言で、この部屋がやつに監視されていた事を思い出した。
俺の痴態の一部始終をやつに見られたと知り、恥ずかしさに頬が紅潮する。
『しかし、そろそろ本物が欲しくなったんじゃないか?』
(本物?)「本物?」
『これだよ。』
やつがズボンを落とすようにして脱ぐと、トランクスの隙間から勃起したペニスが顔を覗かせていた。
『欲しいだろう?』
奴は俺の着ていたネグリジェに手を掛けると一気に剥ぎ取った。
そのまま床の上に押し倒す。
「鏡」の中で全裸の女がやつに伸し掛かられていた。
やつの舌が女の乳首を舐め上げる。
「あんっ」(あんっ)
女が喘いだ。
いや、喘いだのは俺だ。
「あん、あっ、あん♪」
やつはそのまま乳首を口に含むとチュウチュウと吸った。
そして、掌を胸から腹、股間へと移動させる。
俺の股間をやつの掌が撫で上げた。
『よしよし、充分濡れているな。』
やつは器用にトランクスを脱ぎ去り、股間に割り込んできた。
脚を抱え上げられる。
やつのペニスの先端が俺の股間を彷徨う。
そして捜し物が見つかった途端、一気に腰を密着させた。
俺の中にやつのペニスが挿入されていた。
『良い娘だ♪』
俺は無意識の内に両足でやつの胴体を挟んでいた。
やつが腰を動かす。
俺の中でやつのペニスが動いている。
「あぁ、あぁ、う〜ん♪」
俺は媚声を漏らしていた。
『いくぞ♪』
やつの動きが激しくなる。
俺の喘ぎ声は嬌声に替わり、再び絶頂に向かって上り詰めていった。
目覚めると、その部屋には俺一人だけだった。
床の上の服が畳まれて置かれていた。
俺は鏡の前でそれを身に着けた。
髪の毛の乱れを直し、スカートの裾を整えた。
鏡の脇にドアがあった。
俺はもう一度鏡の前に立った。
微笑んでみる。
愛らしい女の顔がそこにあった。
そして、俺はドアを開けた。