それは映画の1シーンのようだった。
ボクはカウンターに座っていた。
2杯目のカクテルが残り少なくなった頃だった。
ボクの隣に渋めのハンサムな男が腰掛けた。
彼はサングラスを外し、まじまじとボクを見た。
ボクも彼に負けないくらい格好をつけていた。
「失礼。貴女の美しさに見とれてしまいました。」
彼はマスターに合図した。
「宜しければ私に一杯奢らさせてもらえないかな?」
ボクは彼の方を見ないように言った。
「ありがとう。」
マスターが3杯目のカクテルをボクの前に差し出す。
グラスを掲げ、ボクは初めて彼の方を向きニッコリと笑みを返した。
男も水割りのグラスを掲げそれに応じた。
それはまだ宵の口。
ボクは彼にエスコートされてタクシーを降りた。
エントランスを抜け、エレベータで最上階に昇る。
何も無いと表現した方が良い程に整理された部屋を抜けるとキングサイズのベッドが悠々と納まるベッドルームだった。
上着を脱がされ、ボクは彼の腕に抱かれた。
濃厚なキスが交わされる。
ボクの手足から力が抜けるのと同時に、股間が熱くなった。
彼の掌がスカートの上からボクの熱い塊を圧し包む。
「だめ!!」
ボクは彼の手を外そうとした。が、彼は
「大丈夫。判っているよ。」
そう言って、再びボクの唇を塞いだ。
けれど、彼は何も判っていない…
ボクは悪魔と契約していた。
そう、ボクはどうしても女の子になりたかったのだ。
そんなボクに悪魔は言った。
「その望み、叶えてやろう。
但し、お前をオンナとして受け入れてくれる男が現われたならな。」
そして、その代償として『呪い』が掛けられた。
「お前が選んだ男が、お前をオンナとして受け入れなかった場合は…」
「だ、だめ!!」
ボクは必死に制止した。が、彼は一向に止まる気配を見せない。
スカートを剥ぎ取り、ベッドの上に押し倒す。
ボクの股間に顔を埋めると、ショーツの隙間から起立するボクのモノを口に含んだ。
ボクの抵抗はまるで効果がない。
彼の舌に刺激され、ボクの中から快感が吹き出しそうになる。
「あっ、あっ!!」
声を上げ必死に我慢するが、彼にはそれがヨガリ声に聞こえたようだ。
気分を良くして更に攻めたててくる。
「あ〜〜〜〜〜!!」
我慢の限界を超えてしまった。
(だめ、ボクの精液を飲んじゃ。だめ〜〜っ!!!!)
ボクの叫びは声にならなかった。
「美味しいね。」
ボクの股間から顔を上げ、彼が微笑んだ。
その顔が一瞬の後、凍りついた。
『呪い』が発動した。
ボクをオンナとして受け入れてくれなかった男。つまりはオトコとしてボクを抱いた男。
彼らは皆、好んでボクの精液を飲む。
そして、その精液を飲んだ男達に『呪い』が発動する。
急速に胸が膨らみ始める。
手足が白く、細くなってゆく。
節くれだった指先が柳葉のようにしなやかに変わる。
ボクの目の前で彼らは女の子に変わってゆくのだ。
ハンサムな男の顔がみるみる変化してゆく。
「あ〜〜〜。こ、声が変だ。」
彼は膨らんだ胸に掌を当てる。
「こ、これは何だ?」
そして、ごくりと唾を飲み込み、股間に手を伸ばす。
「な、無いっ!!!!!!」
彼女達は一様にそういう行動に走る。
そして、『呪い』の第2段階が始まる。
彼女は目の前にボクのペニスを認めると、うっとりと瞳を潤ませる。
可愛らしい顔で、頬を上気させ、口をだらしなく開いている。
催眠術に掛かったかのように、ゆっくりとボクの方にやってくる。
彼女は再びボクの股間に顔を埋める。
しなやかな舌先で攻めたてられ、ボクはあっと言う間に達してしまう。
唇の端から精液を垂らして顔を上げる。
ごくりと喉が鳴る。
飲み込んだ精液には催淫効果があるようだ。
直ぐにも、彼女の股間からはだらだらと愛液が滴り始めた。
自分の指を股間に滑り込ませ、床の上に身を横たえる。
空いた手でバストを掴む。
指先で乳首を弄ぶ。
「ああ、ああ」
淫らな声を上げ、床の上を悶え回る。
ボクは服を脱いで彼女の前に立つ。
「お願い。頂戴!!」
彼女はボクに哀願する。
その目はペニスに釘付けになっている。
このまま放っておくと、彼女が壊れてしまう事を知っている。
ボクはゆっくりと彼女の上に重なった。
彼女はぐっすりと眠っていた。
床の上からカウチに移動する。
ボクは彼女の身体から汚れを拭き取ってやり、着てきた服を彼女に与えた。
ブラを付け、ショーツを穿かせる。
ブラウス・スカートと身に付けさせてやる。
上着はハンガーに掛けたままにして、彼女の顔に化粧をしてあげる。
髪にブラシを当て、綺麗に揃える。
指先のマニキュアが乾いたのを確認してボクは彼女の部屋を後にした。
今宵もボクはカウンターに座ってカクテルを飲む。
ボクをオンナにしてくれる貴男を待ち焦がれて…