朝の清々しい風に誘われて、砂浜に降りていった。
 静かに波の音がさざめく。すでに高く舞い上がった陽の光がキラキラと水面に反射している。寄せては返す波の音が、軽い眠気を誘う。今日はいつもと違う一日になるような予感がした。

 朝の心地よい空気を吸って爽快になったところで、仕事場に戻る。システムを起動すると明るくなったディスプレイに会社からのメッセージが届いていた。今日のノルマと昨日までの仕事の評価だ。入社以来私はコンスタントにノルマをこなしているのでAランクの評価をずっと維持している。(とはいっても飛び抜けた成績ではないので、その上のクラスに評価されることはないし、私もこれ以上の評価を貰おうとは思っていない)作業用シートを広げ、昨日の続きに取りかかる。朝の散歩のせいか、頭の中がスッキリとしていて、一晩のブランクを感じさせない。スラスラと作業が進んでいく。この分では、昼過ぎには今日のノルマをこなしてしまいそうだ。実際、宅配ピザで昼飯を済ませてしばらく仕事をし、弟からの久々の電話を受けた頃には今日のノルマはほぼ完了していた。
 弟からの電話はたまたま近くを通るからうちに寄るからとの連絡だ。弟も大学に入ってからは実家にも近寄らず、ましてや仕事の為といってこんな田舎に引っ込んだ私の所になど来たことすらない。そんな弟からの突然の電話である。私はそくさくと仕事を片付け、部屋の整理を始めた。とはいっても男の独り暮らし、お客を迎えるには3日がかりで掃除しなければなるまいがそこは身内のこと、ちらかった雑誌を整理するだけが精一杯、仕事の為に広げた資料の山を崩さずとも何とかなるだろう。
 お茶を呑むスペースだけは確保できたというところで、外に車の音がした。この辺りで自動車が走るのは明け方に市場を往復する業者の車ぐらいのものである。こんな時間に、それも商用車のガタガタのエンジン音ではなく、スポーツカーの腹の底に響く音は普通ではありえない。これが弟のものであることは容易に想像がつく。

 サンダルを突っかけ、弟を迎えに出た私の目の前には一人の美女が立っていた。他に誰もいない。車の中にいるのかと覗き込むが、真っ赤なスポーツカーは2人乗りだが助手席に人のいた気配はない。
 再び彼女を見る。どこかで会ったような懐かしさはあるものの、さっぱり記憶にない。
「兄さん。」彼女の口からその姿とはかけ離れた太い声がした。可能性として考えられるのはただ一つ。
「浩二か?」
「うんU」今度は彼女の姿に見合った鈴の音のような声が帰ってきた。
「ごめんなさいU兄さん。こんな姿になってしまったボクだけど…」俯く女の姿が無償にいとおしく思えたのはイケナイことなのだろう。
「ま、まあ良く来た。とにかく中に入れや。」私の招き入れたのは本当に弟なのだろうか?

「浩二、元気してたか?」お茶を入れながら弟に話しかけるが、どうも不自然な気がする。
「兄さんこそ、家には帰っていないのでしょ?」
「まぁ、そうだが。それより父さんたちは知っているのか?」
「コノこと?」と、スカートの裾を摘む仕種がとても色っぽい。
「もちろん言ってないわ。兄さんにもどうしようかと思ったんだけどこの際だからと立ち寄ったの。」
「今、何してる?大学なぞ行っていないのだろう?」
「うん。やっぱりお水で働いているわ。お店ではヒロコって呼ばれているのよ。」
「ヒロコか。まぁ、その姿で浩二はないわなぁ。もてるんか?」
「もちろんナンバー・ワンよ。」
「すごいんやなぁ」
「兄さんも一度寄ってみて。安くしとくからU」
「兄弟からもゼニ取るんか?」
「商売は商売よ。」
「そりゃまあ、そうだが…ところで今晩はどうするんか?泊まっていくか?」
「もちろんそのつもりで来たんだけど…」辺りをみまわして口ごもる。少し考え込んだ後、
「昔みたいに、兄さんの布団に一緒していい?」私は《一瞬》答えをためらった。これが昔通りの弟ならば何も考える事はないのだが、今の浩二の姿にはためらわざるを得ないものがあった。

 浩二が散歩に出ている間に部屋を片づけたが、やはり布団を2組並べるだけの余裕は作れなかった。そうこうしているうちに、浩二が両手一杯に買い物袋を抱え戻ってきた。「夕食はまかせてU」という浩二の料理の腕はなかなかのものだった。テキパキと台所を動く浩二の後ろ姿が気になりつつも、私は表面上は何事もないようにしてテレビを見ていた。
 夜も更け、風呂に浸かり一日の疲れを癒す。いつもであれば一人布団にくるまり大いびきを欠くのであるが、今夜の布団には先に風呂を出た浩二が居る。先程飲んだ薬のおかげでそれほど戸惑わずに浩二を見ることができる。この薬は浩二からもらったものだった。いくら兄弟とはいえ今の浩二の姿はどこから見てもうら若い女性そのものだ。ただでさえ興奮気味の所へもってきて、風呂上がりの浩二は瑞々しい裸体を見せつける。浩二は昔のように一つの布団で寝ようというのだ。男の生理はいかんともしがたい。どうしようもなくなっていた私に「楽になるわよ」といって浩二がその薬を差し出したのだ。

 布団にもぐり込んだ私の腕に浩二は豊満な乳房を押しつけてくる。
「お薬は良く効くでしょう」
「ああ、どんな事が起きても落ちついていられるようだ。」
「何故だかわかる?」
「薬のせいだろ?」
「そうだけど、この薬が直接神経に働きかけているわけじゃないの。」
「で?」
「兄さんはあたしのカラダに反応したんでしょう?」
「…」
「恥ずかしがることなんかないのよ。男と女の間では当然のことなんだから。ただ、兄さんにはあたしたちが兄弟だという引っ掛かりがあって素直になれなかっただけなの。でも、この薬はそんな兄さんのこだわりを無くしてしまうの。」
「無くす?」
「そう、今のあたし達は兄弟でも異性でもないわ。だから兄さんも平気でいられるようになったの。」
「どういうこと?」
「こういうコト!!」と、浩二は伸しかかるように身体を密着させてきた。
 浩二の左手がパンツの中にもぐり込む。指先が私のカラダの内に押し入ってくる。
「あァ!!」雷に打たれたように電流が身体の中を突き抜けてゆく。私の肉体はいつの間にか変化していた。在るべきものがなくなり、在りうべからざるものがそこに在った。
「兄…いえ、お姉ちゃん。いかが?」私は答えることができなかった。答えようと口を開く度に悦楽の吐息が喉を塞ぎ、言葉にならない。浩二…ヒロコの巧みな指使いになすがままになっていた。
「あたしにもシてU」幾度となく達した後、ヒロコは私の手を自分の花園に導いていった。すでに、どうすれば感じるかは自分の肉体で判っている。ヒロコが私にするように同じことをヒロコにしてあげる。
「ア〜〜〜〜〜っ」ヒロコの口からも言葉が失われた。ふたりの嬌声がハーモニーとなって部屋の中に響き渡った。

 けだるい朝の目覚め。昨夜はいつの間にか寝てしまっていた。私もヒロコも全裸のまま布団の上に横たわっていた。私の身体は変化したままである。私の胸にらは大きく膨らんだ双房が見て取れる。脱ぎ捨てられたパジャマの上着を羽織ると、乳首の先端が布に触れた。昨夜の快感が甦ってくる。ジュッ!!と下半身が熱くなる。そこもまた、元には戻っていなかった。掌を当てると指先に雫が絡みついてきた。
「お姉ちゃん?」眠たそうなヒロコの声。ふと、生まれたときから姉妹であったような錯覚に陥る。
「ごめんネ、起こしちゃった?」あどけないヒロコの頬にチュッとキスをすると、ヒロコの両腕が私の首に絡み付く。私はそのままヒロコの上に倒れ込んだ。
「何するのよU」
「決まっているじゃない。お姉ちゃんも物足りないでしょ?」
「朝からそんなコト」
「アソコはそうは言っていないわよ。」ヒロコの掌が私の股間に触れる。
「イャんU」クスクスとヒロコ。
「イケナイ娘ねU」
「お姉ちゃんこそU」私は身体と共に内面までも変化しているようだ。我慢できずにヒロコの裸体に咬みついた。互いに秘部を慰め合う。一気に高みへと駆け登ってゆく。

 もう、元には戻れない。私は甘美な罠に嵌まってしまった。気がつくと、掌が股間を漂う。
「アアァ…」
 今日も素晴らしい一日になりそうUUU

−了−


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