U.F.O.



 真夏の日差しの中、防波堤の上でゴロリと横になる。寂れた海水浴場の隣の浜辺には誰もいない。遠く民家の開いた窓から高校野球の実況中継が流れ出て来ていた。入道雲は沖に湧き、頭上には雲一つない。太陽の輻射熱が直接身体を焼いてくれる。そんな青空をフッと影が過った。正午の太陽は真上にある。その太陽と僕の間に何かが挟まった。太陽が黒い影の中に隠れる。
(UFO?)
 科学とか超常現象とかに疎い僕でもUFOぐらいは聞いた事がある。すなわち、空飛ぶ円盤=宇宙人の乗り物であり、乗っている宇宙人との出会いをファースト・コンタクトと言う。宇宙人には良い宇宙人と悪い宇宙人がいて、たいがいの場合宇宙人に捕らえられ、運が良ければ記憶は消されるものの生きたまま無事に帰してくれる。
(と、いうことは僕もこのUFOに捕まってしまうのだろうか?)
 黒い影がゆっくりと降下してくる。その中央に丸い穴が開いた。
(話では、そこから牽引ビームが照射され、下の人間を包み込むとUFOの中に取り込むらしい。)
 が、話の通りとはなかなかいかないらしい。UFOの中央に開いたと見えた穴はUFOの内部に続くものではなかった。UFO自身がドーナツ型をしており、UFOが傾いたため、中央に穴が開いたように見えたのだった。そもそも、UFO=空飛ぶ円盤は平たい皿がそのまま浮いているのが一般的な形態と言われている。ドーナツ型もあるようだが、それとても回転軸が重力方向に一致=すなわち、常に穴が見える形で飛んでいると言われている。が、こいつはタイヤのように回転軸を重力方向に直交させているのだ。
 UFOがだんだん大きくなる。高度を落としているようだ。それにつれてUFOの本来の形も判明した。ドーナツ型と見えたのは少々早とちりのようだ。UFOには3つの穴があった。そのうちの2つが重なってドーナツ型に見えたのだ。
 穴はUFOの側面に2つ、上面一杯に1つ付いている。穴は真円ではなく、その縁がよじれている。どちらかと言うとUFOに穴が開いているのではなく、穴を囲むようにUFOの本体が組み立てられていると言える。それは鋼鉄の塊という表現からは程遠く、紙や布で出来ているように見える。
 実際、そいつは布で出来ていた。
 何のためにそいつが落ちてきたかは判らない。が、そいつはUFOなんかではなく、もっと日常的なものだった。そう、それは女性用下着の『ショーツ』だった。誰が、どうやって落としたかは判る訳もない。(UFOが落としたかもしれない)
 パサリ
 と、音をたててそいつは僕の顔の上に落ちてきた。あれほどの上空から落ちてきたとは思えないほどショックはなかった。まるで横に立った女の子がポンと放り投げたようだ。顔の真上に落ちたそいつを掴んで、僕はむっくりと起き上がりそいつの正体を確認した。傍から見ると何と見られるだろう。砂浜で大の男が女性用下着をしげしげと眺めているのである。ふ、と気づき僕は辺りを見回した。幸いにも人影はなかった。僕は立ち上がると、そいつを丸めてズボンのポケットに放り込み家に帰った。
 家とはいっても、僕は自宅から少し離れたアパート(看板にはマンションと書いてあるが)に住んでいる。大学受験の際に勉強部屋と称して強引に勝ち取ったぼろ部屋である。ぼろではあるが、ここは誰にも干渉されない僕の『城』である。ここでなら空から落ちてきたこいつを詳細に調べられる。
『UFOの落とし物』という線も捨てられずに調べてみたが、どうみてもそこいらにあるものと違わない。(とは言っても、僕が女性用下着にそんなに詳しいわけではない)ただひとつ、新品同様の白さにも係わらずメーカー名の入ったタグやそれに類するものが見つからないのが心の隅に引っ掛かっている。
 そいつにはシミひとつなく、新品同様に見えたが(変態的とは思いつつも)匂いを嗅いでみると、微かに甘い香りがする。その匂いを確かめようとさらに鼻を近づけ、そいつの中に顔を埋めた途端…
「パチン!!」と何かが弾ける音がした。
 後で思うとそれは僕の「理性」の弾けた音だったのかも知れない。いつの間にか僕はズボンを脱いでいた。頭の中はもやが掛かったみたいで、正常な思考を追うことが出来なくなっていた。僕はショーツに足を通していた。パンツはズボンと一緒に脱ぎ捨てていた。ショーツの小さな布が僕の裸の下半身を被った。不思議なことに硬くなった息子を強引にショーツの中に収めると、途端にフッとその硬さが霧散してしまった。萎えてしまったわけではない。ショーツの中で息子が消えてしまったのだ。ショーツの上から触れると本当に何も無くなっている。すっきりとした下腹部は女性のよう…?
 よく見るとショーツの下から出ている2本の脚から脛毛が消えている。ショーツの上は胸にしろ腹にしろ黒い剛毛に包まれているのだが、ショーツから下は綺麗さっぱり、すべすべの白い肌になっている。まるで女の脚?いや、ショーツから下は女の脚そのものだ。自分の脚とは思えない。肉の付き方がまるで違う。足首の細さがそれを決定付けている。さらに、ふくらはぎから引き締まった太股へ、そして女性らしさを強調するヒップラインにつながる。が、ショーツから上は自分自身=男の身体である。姿見の前に立ち、その異様な姿を映し出す。腰から上を強引に無視すると、下着姿の女の人が見えてくる。ごつい男の掌が太股を撫で上げる。内股伝いに近づいてくる。白いショーツに包まれた大事な所に指先が届く。が、すぐには触れない。大きく迂回してヒップを被う。鷲掴みにしてその感触を堪能した後、再び秘部に接近する。指の腹で大事な割れ目を確認する。
「?」確かに、そこには割れ目があった。
 僕はベッドの上に這い上がり、大きく股を開いた。ピッタリと肌に張り付いたショーツはしっかりと割れ目を描いている。さらに分泌された体液が薄い布をさらに密着させる。布の上から割れ目を押し開いてゆくと、そこには女性自身が姿を現してきた。ドクドクと熱い液が溢れてくる。太股の隙間から指を差し込むとねっとりと愛液が絡みついてくる。そのま秘部に滑り込ませる。スッと指先が咬え込まれると同時に、下半身に異物が押し込まれる感覚があった。それが自分自身の指先でありその感覚の発信源が僕の女性自身であることは容易に想像がついた。感じる事など有り得ない感覚に戸惑いつつも、僕はのめり込んでいった。それは『不快』とは正反対の感覚だった。
 知らぬ間に僕は2本目の指を滑り込ませていた。肉壁を2本の指が執拗に愛撫する。強烈な刺激に僕の身体はベッド上をのたうち回る。あまりの快感に声が出そうにになるのを必死で堪えるが、想像上の耳が艶めかしい喘ぎ声聞きつける。その声に刺激され、更に下半身が熱くなる。
 頭の中が真っ白にになって、アクメに達した。

 まどろみの中、悦楽の余韻に浸りながら考える。しかし、それはこのショーツがUFOの落とし物かどうか?という次元のものではなかった。今となっては、このショーツが誰のものであろうと関係なくなっていた。ただ一つ、このショーツの機能その一点に考えが集中している。現時点で判っていることは『このショーツを穿くと下半身が女性化する』という事。そして、女性のSEXは男のそれよりも数倍も心地良いという事。考えている事は、もっと女性化出来ないだろうか?ということ。うまくすれば100パーセント女性化できるに違いない。つまり、このショーツを通った部分が女性化するのだから全身をすっぽりショーツに通してしまえば良いはずだ。しかし、いかに伸縮度の高いショーツといえどもそのままで成人男性の胴体をくぐらす訳にはいかない。
 そこで、股の部分を切り取ってしまうことにした。
 一度脱いでしまうと効果が切れてしまうかも知れないと、ショーツを履いたままハサミを取り出した。濡れた股部をつまみ上げ、ハサミを入れる。ジョリッ!!と音を立てて布が切断される。パチリとハサミが閉じる。ペロリと布がめくれると、その下に肉の割れ目が現れた。股部を切っただけではショーツの効果に影響はなかった。ハサミを放り投げ、ズリズリとショーツをひきづり上げる。剛毛のない白く引き締まった腹が現れる。ウエストはキュッとくびれている。ごくりと唾を呑み込み、一気に胸までたくし上げると、双つの肉塊がポロリとこぼれ出た。もちろん胸毛などない。ふくよかな乳房の先端に愛らしい乳頭が顔を出している。ちょっと触れただけで、ツンと硬くなる。
 右腕、右肩、左腕、左肩と抜いていくとショーツの残骸が首にまとわり付く。スポッ!!と音をたてて頭を抜いた。目の前は姿見。だが、目を開けるのが怖い。不思議なショーツに全身を通した僕はどんな姿に変わったのだろうか?幸いにも、下半身をぶらつく息子の気配はない。胸に手を当てれば、柔らかな双房が確認できる。恐る恐る瞼を開けた。
 目の前には僕がいた。
 姿見に写された僕の姿は全くの別人といって良い。さすがに髪の毛はどうにもならずに男の時のままだが、ふっくらとした顔の輪郭、細い首筋,腕,指先。豊かな胸元,引き締まったウエスト,むっちりと張り出したヒップ。だが、顔の造りに若干の痕跡があり、元が僕であることが辛うじて判る。
 鏡の中の女性は淫蕩に微笑むと、『僕』の乳房を愛撫し始めた。指先が乳頭を揉みしだく。耐えきれずに僕は吐息を漏らす。その声も艶めかしい『女』の吐息だった。
 再び女性自身を弄ぶ。が、100パーセント女性化したにもかかわらず、先程のようには燃え上がっていかない。何故だろう?一つだけ考えられることがある。さっき女性化していたのは下半身だけ、腕を始めとする上半身は男のままだった。しかし、今は全身が女性化している。女の指で愛撫されるのと男の指で愛撫されるのでは感じ方が違うのではないのだろうか?さらにこれが男性自身なら……
 イケナイ考えが頭を過る。が、今の僕にはそれを押し止める力が失われていた。
 幸か不幸か、アパートの隣の部屋の出水大介は僕の呑み友達だった。いつもベランダを伝っては互いの部屋を行き来し飲み明かしている。僕は裸のままベランダの柵を乗り越えるとズカズカと大介の部屋に乗り込んでいった。大介はベッドの上に大の字で寝ていた。さっきまでは見ようとも思わなかった他人の男性自身であるが、今の僕は喜々としてそれを欲していた。ズボンのベルトを外し、パンツと一緒にひんむく。ベッドのスプリングを利用して尻の部分からズボンを抜き取ると、裾に手を掛け一気に抜き取った。大介の下半身が剥き出しとなった。黒い茂みの中に彼の息子が鎮座している。僕は萎えた彼にそっと手を添える。その先端に顔を近づけ濡れた舌先で2〜3度つついた。ピクリとそいつが反応する。思い切って口の中に彼自身を包み込み、舌や喉頭を使って刺激を与えてやる。すると、口の中でそいつがどんどん膨れてゆくのが判る。ある程度硬さがでてくると、今度は指も併用する。会陰から肛門に向けて刺激を与える。コリコリを睾丸をいたぶる。そして十分な硬さになった所で大介の上に馬乗りになり、僕の大事な所に彼自身を押し当てた。そいつの先端が合わせ目に触れた瞬間、パチリと大介の目が見開かれた。
「だれだ!?」怒声とともに僕は突き飛ばされた。ベッドを転げ落ちた僕の前に大介は仁王のように立ちはだかった。
「僕だよ。と、言ってもわからないよね。隣の洋一だよ。」
 半信半疑だった大介もドアの鍵を確認し、開いたベランダの窓を見て取り合えず話しを聞いてくれるようになった。が、これまでのいきさつを全て話しても完全に納得するまでには至らなかった。とうとう最終手段として、あのショーツを引きづり出してきた。百聞は一見にしかずと大介の脚にショーツを通した。みるみる女性化する脚に驚き、さらに下半身の変化を目の当たりにしてようやく納得した。いわれもせずに上半身裸になると、自分からショーツを引き上げ、大介もまた変身してしまった。変身した大介はかなりの美人である。もともと体格の良い大介がそのままの身長で変身したため、モデル並のプロポーションになっている。顔の造りも身体とバランスがとれている。
「フウム」変身後の自分自身を検分し、納得したように頷いた。
「で、洋介はこれで何をしようとしたんだね?」
 大介の顔が近づいてくる。彼(彼女)の唇が僕の唇を塞ぐ。そのまま二人は裸のまま床の上に折り重なった。男同志の時には考えられないことだ。大介の指が前技もなしにもぐり込んでくる。(とはいっても、僕自身は既に充分濡れていたのでなんの問題もないが)唇の間から女二人の喘ぎ声が洩れてゆく。他人に愛撫される。というシチュエーションが男性自身なしでも充分に二人を燃え上がらせた。これで大介が男のままだったら、僕はどうなっていたのだろう。そんな事を考えながら、二人してアクメに向かって登っていった。

 P.S.程なく僕は大介の男性も受け入れた。その時のことはまた、別の機会に……

−了−


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