「うれしい。けど、あなたの期待には応えられません。」
「何故?!」
「だって、あなたはオトコですもの……」
「?」
プロポーズは意味不明の理由によって断られた。
呆気にとられるボクの前をミユキはスタスタと歩き去っていった。
腰まで届く黒髪が風を孕んでサラサラと音を立てて街の雑踏に紛れてゆく。
ミユキは一度も振り向いてはくれなかった。
そのまま一時間以上その場に立ち尽くしていたと思う。
そして、決心した。
「ヨシ、今日限りでボクはオトコをやめる!!」
半年後、ボクは再びミユキの前に現れた。
ミユキの隣には背の高いスポーツマン・タイプの男がいた。
(ミユキはボクよりもあんな男を選んだのか?)
男を無視して、ボクはミユキに詰め寄った。
「ボクはオトコを捨てた。もう一度ボクのプロポーズに答えてくれ。」
「あなたはまだオトコよ。彼に嫉妬しているでしょ?」
そう言ってミユキは男と手を組んで去っていった。
更にもう半年が過ぎた。
ミユキの隣にはまた別の男がいた。実業家タイプの好青年だ。
「オトコは捨てられた?」
ミユキが言った。
が、ボクの耳にミユキの声は届かなかった。
ボクにはミユキの姿も目に入っていない。
ボクの目はただ一つ、ミユキの隣にいる男に注がれていた。
「よかった。とうとうオトコを捨てられたようね。ご褒美に彼をあげるわ。」
そう言って、ミユキは一人その場を去っていった。
が、もうボクにはミユキの事などどうでも良くなっていた。
男の腕が優しくボクを包み込む。
今度はボクがプロポーズを受ける番だ。