ミッション3



 その宇宙船は漆黒の宇宙をゆっくりと進んでいた。
「捕捉しました。コード#1826 船体には異常は見られません。」俺はそれだけを本部に報告すると、スラスターを吹かして前を漂流している貨物宇宙船に近付いていった。
 
 最近、貨物宇宙船の遭難が相次いでいる。俺の仕事は遭難した宇宙船の捜索と積み荷の確保であり、事故の原因調査までは含まれていない。が、どの宇宙船の内部も一様な状態であると、ついつい原因を勘ぐりたくなる。
 生命維持カプセル内で腐敗した乗組員。ベットの上で絡み合ったままの男女ニ体のアンドロイド。
 高級アンドロイドにはSEXの可能な性器が装着されていることは知っていたが、命令すべき乗組員が疑似冬眠中である。アンドロイドが自発的にSEXを始めたとでも言うのだろうか?そして、生命維持カプセル内で乗組員はどのようにして死に至ったのだろうか…
 そんな事を考えながら俺の船を貨物船の船体に固定していった。
 遭難した宇宙船が故障していたとしても俺の船は近くの宇宙港まで曳航してゆく馬力は持っている。しかし、自力航行出来るのであればそちらの方が効率的である。
 船体の固定を確認すると、俺はヘルメットを着けてエアロックから外に出た。非常用ハッチを開け身体を滑り込ませる。狭い非常用エアロックの中から爪先を使って入口のハッチを閉め、続いて頭の先の内扉に手を掛けた。
 宇宙船はまだ生きていた。空気が残っているだけでなく、新鮮に保たれている。人工重力も健在であった。通路は光りで充たされ、ダイナモの鈍い唸りが壁の向こうにあった。
 好奇心もあって、俺は直接ブリッジには向かわず、乗組員の船室に立ち寄っていた。
 まっすぐにベットに向かった。いつもならそこには男女のアンドロイドが絡み合っているのだが、女アンドロイドに組み伏せられていたのは、乗組員の干からびた遺体だった。男アンドロイドの姿はなかった。
 生命維持カプセルの部屋に向かう。いつもなら近付くにつれ高まる異臭はなかった。カプセルは奇麗に清掃され、そこに置かれていた。やはり、ここにも男アンドロイドの姿はなかった。
 続いてブリッジに向かった。パイロットシートに男アンドロイドが収まっていた。
 おかしい? いや、まだこっちの方が説明がつく。寝食を忘れアンドロイドとのSEXに明け暮れ、揚げ句に餓死してしまった乗組員と、人間の命令を忠実に守り続けた2体のアンドロイド。
 しかし、まだ謎は残る。いくら好きだと言っても餓死するまで続けられるものなのだろうか?そもそも、そこまで体力が続く訳もない。
 そして、アンドロイドだ。いくら人間の命令だとしても、その命令者を死に至らしめることは出来ないよう安全機構が組み込まれている筈である。生命維持カプセル内での死亡であればセンサーの不具合等説明が付けられるが、これは明らかに女アンドロイドの腕の中で息絶えた筈である。
 とにかく、事情を知っているのはアンドロイドであろう。俺は非常用制御回路を接続し、船内コンピュータを支配下に置くとアンドロイドを再起動させた。
「俺は回収業者のダ=T=ヒロだ。」アンドロイドが起動すると同時にIDカードを突き付けた。タイミングが遅れると不正侵入者として攻撃されることもある。事前にコンピュータを支配下に置いておいたのですんなりと認証された。が、俺が事情を説明させようとすると、「ヒロ様。貴方のお仕事は宜しいのでしょうか?航宙法第24条の規定によりますと…」
「わ、判った。」こいつは相当に頭の固いアンドロイドのようだ。俺は好奇心の充足を一時棚上げし、本来の任務のために操縦席に座ることにした。貨物宇宙船は俺の船を抱えたまま、最寄りの宇宙港に向けて動き始めた。
 
 動き始めてしまえば当分は何もすることがなくなる。棚上げしておいた好奇心の充足を再開できる。早速、アンドロイドに尋ねてみた。「キャプテンの死因は生命維持カプセルからの離脱時間超過によるものです。」「カプセルから離れるだけで生命の危険があるのか?単に食事を採り損ねての餓死とかと違うのか?」「通常の状態ではこのような事にはなりません。今回のミッションでは実験的に肉体の制御を船内コンピュータに移行しておりました。本来であれば制御を移行した肉体をカプセルから離脱させるようなことはありません。しかし、キャプテン自らがこのような状況を作られては手の打ちようがありませんでした。」「君が出来なくても、もう一体の女アンドロイドがいるだろう?現に彼は彼女の腕の中で死んでいるじゃないか。」
「ヒロ様、マリアはその時アンドロイドではなかったのです。」「アンドロイドではない?」「はい。我々は肉体制御移行中の仮体として利用できるようになっています。仮体として活動中は我々の介入は一切禁止されております。」「どういう事?」「あの時点のマリアはキャプテンご自身だったということです。」
「そ、そんな事が可能なのか?聞いたことないぞ。」「ヒロ様がご存じないという事は我々の関知するところではありませんが、肉体制御の移行技術は完成しております。」
 
 不意に眩いに襲われた。視界が揺れ動き、目の前の光景が一変した。
 
 干からびた男の顔が迫っていた。そこはブリッジではなかった。「ヒロ様、お気付きですか」スピーカからアンドロイドの声がした。身体を起こす。これが自分の肉体ではないことはすぐに気付いていた。胸から垂れ下がる双つの肉塊、頬に触れる髪の毛先。何より股間に挿入された異物の感触は、この身体がオンナのものであることを如述に物語っていた。
 ドアが開きアンドロイドが入ってきた。「ヒロ様。いかがですか、その身体は?」真っすぐに立ってもアンドロイドの胸しか見えない。「キャプテンはその身体に夢中でした。」アンドロイドの腕が俺の腰に廻される。「お、おい?」「ロビーと呼んで下さい。」更に身体が密着するとロビーのズボンの中に憤り勃つものの存在が感じられるようになった。「ロビー!」俺が見あげると、彼の顔が近付いて来る。あっという間に唇を奪われていた。それだけでぼーっとなり思考力が低下する。ロビーの舌が俺の口の中に割り込んで来ると、条件反射的に俺の舌を絡めていた。
 貪り合うようなキスを続けているうちに、いつの間にか俺は床の上に寝かされていた。
 ロビーが折り重なるように伸し掛かってくる。俺の膝を割り、腰を押し付けてくる。その前面には剥き出しのペニスが頑張っていた。二人の下半身が密着すれば当然のようにロビーのペニスは股間の割れ目に挟み込まれる。ロビーが2、3回腰を揺すっただけでスルリと俺の中に入ってしまった。
 俺の腹の中に異物が入り込んでいるのが判る。しかし、それは決して不快ではなかった。ロビーが腰を動かすと互いの性器の凹凸が快感を生み出してゆく。
 いつの間にか俺は女のように艶やかな喘ぎ声をあげていた。「マリア♪」ロビーが耳元で囁く。俺はそれが自分の名前であることを当然のようにして受け入れていた。「あぁ、ロビー。愛しているわ♪」俺が応えると、ロビーは更に激しく突き上げてきた。
 快感が頭中を白く染め上げてゆく。捕え所のない浮遊感と、満たされてゆく高潮感。これがオンナのエクスタシーへの昇り口だ。
「あん、あん、あん♪」俺は媚声を上げる。絶頂が垣間見える。
 
「あ〜〜〜〜っ!」
 嬌声を上げ、俺は女としてイッてしまった。頭の中で光が爆発し、真っ白に染め上げられたところで俺は気を失っていた。
 
 
 
 俺はベットの上に寝かされていた。疼きの残る股間に手を伸ばすと指先はしっとりと濡れた肉壁に挟まれる。それは俺本来の身体ではなかった。
 もう一方の手を胸に当てる。これが女の身体であることを再認識させられる。
「お目覚めですか?マリア♪」ロビーの優げな声がスピーカから流れてきた。「良かったらブリッジに来ませんか?別に急ぎの用ではありませんから、ゆっくりで構いませんよ。」
 俺は起き上がりシャワーを浴びた。身体を乾かし用意されていた船内着を身につけた。勿論、下着から全て女物であるがやむを得ない。パンツが見えそうなくらい短いビンクのミニスカートは男として鑑賞するには申し分ないのだが、男に見られる立場になってみると物凄く恥ずかしいものであることが実感される。
 着替えが終わると俺は鏡の前にいた。身体が覚えているのか、無意識のうちに俺は化粧をしていた。最後にルージュを引いた。
 ブリッジに着くとロビーが呼び寄せた。ロビーはシートに座ったまま俺をその前に跪かせた。彼の股間が目の前にあった。「ベルトを外せ!」俺はロビーが何をさせたいのか正確に理解していた。俺は喜々としてロビーの命令に従っていた。
 チャックを下ろし、トランクスの中から彼の萎えたペニスを引き出す。彼の股間に頭を近付けると、舌で導くようにしてソレを口に含んでいた。ペニスの付け根に口紅の跡が付く。俺は舌の表裏を使ってその先端に刺激を与えた。
 途端にむくむくと膨らんでいき、口の中に収まりきらなくなっていった。俺は手を添えて刺激を与え続けた。先端を口に含み吸引する。ハーモニカを奏でるように棹を咬える。
 一所懸命に奉仕するがロビーはペニスを怒張させたまま、一向に達する気配を見せない。が、それも当然である。男アンドロイドにはSEXの機能はあっても、射精することはない。持ち前のスタミナで女性をイかせてしまえばそれで使命は果たされるのだ。
 一方、俺の身体も疲れを知らなかった。しかし、中にある心には限界がある。行為を続けるうちに、こちらの身体も出来上がってゆく。股間に溢れた蜜はショーツをぐっしょりと濡らしていた。秘洞から疼きが拡がる。肉襞が獲物を待ち侘びて激しく打ち震える。子宮が熱く燃えていた。
 俺は耐え切れず、ショーツを脱ぎ去るとロビーの前に剥き出しの尻を突き出していた。コンソールとの間の狭い空間の中で身体を入れ換える。頭を下にしてロビーの股間を胯ぎ越す。ゆっくりと腰を降ろしてゆくと、ずぶずぶとロビーのペニスが俺の中に入ってきた。股間から悦びが拡がっていった。
 
 
「マリア、そろそろどいて貰えませんか?」そう言うなりロビーは俺の腰に手を掛けるとモノでも扱うかのように引き抜いて脇に転がした。「ぁあん♪」俺の叫びは痛みからのものではなかった。股間では肉襞が名残惜しげにヒクついていた。
「最終航程に入ります。元に戻っておいてください。」と、冷たく言い放つロビー。俺は彼の言った意味が解らなかった。しばらくして「元」とは俺の生身の肉体であることが判った。と同時に俺が男であったことも思い出していた。男に貫かれて歓喜していた自分を省みて自己嫌悪に陥る。「グズグズしていない!さっさと戻って下さい。」俺はせき立てられるようにしてブリッジを後にした。
 生命維持カプセルには俺の肉体が寝かされていた。操作盤から覚醒処理を指示した。実際に俺の肉体が起き上がるまでにはまだしばらく時間があった。
 俺は着ていた服を脱ぎ捨てるとシャワーの下に立っていた。勿論、この身体を奇麗にして返そうとしている訳ではない。最期の一瞬まで、この身体の与えてくれる快感に浸っていたかったのだ。
 湯滴の中、俺は壁に背をもたれ掛け股間に指を忍ばせていった。「あぁ♪」俺は時間の許す限りと、貪るように快感を追い求めていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺は次の獲物を追い求めていた。新しい装備に金を注ぎ込み過ぎたのでその分余計に働かなければならない。が、新たな装備は十分に俺を満足させてくれている。
 今も鈍い音が響いているだろう?俺の中でバイブが蠢いているのだ。
「あぁん♪」俺は幾度となく悦楽の吐息を漏らしていた。
 
 
 

−了−


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