ミッション2



 「キャブテン、警告音が鳴っていますよ。」
 俺の腕の中でミドリが言った。「大丈夫だよ。たかがフィルターの目詰まりだ。2〜3日放っておいても問題ないさ。」俺は頭の中に流れ込んでくる情報を一瞥して、そう答えると憤り勃った肉棒をミドリの中に突っ込んでいた。
 
 
 ここは長距離貨物輸送宇宙船の中である。俺はこの船の船長であり、唯一人の乗組員である。俺が組み敷いているのは船の備品であるアンドロイドのミドリだ。貨物船の乗組員の仕事といえば、定時での各計器の読み取り以外には何もない。残りの殆どの時間を独りで過ごすには精神的負担が大きすぎるとの配慮から、何でもこなせる超高級のアンドロイドが各船に常備されることになったのだ。それがミドリのような美女揃いときては、空き時間にする事はSEX以外に考えられなかった。
 更に今回は俺達の方も疲れを知らない体を与えられている。本来の俺の肉体は生命維持カプセルの中で滋養液に浮かんでいて、俺は船のコンピュータを介してこの身体を遠隔操作している。実質的には俺の脳がアンドロイドの体に移植されたようなものだ。ミドリと同じ疲れを知らない体で、俺は寝食も忘れてミドリとのSEXに明け暮れていた。
 
「キャプテン。これ以上警告音を無視されるのでしたら、強制執行モードに移行されます。ご自身の肉体は相当危険な状態になっています。」警告音は俺の肉体の入っている生命維持カプセルからのものだった。俺はミドリの言う強制執行モードとやらを見てみたい気もしたが、ミドリの場違いな程の冷徹な態度に動かされた。ミドリは俺の腕から開放されると全裸のまま部屋を飛び出していった。
 俺も船内着を着てから、少し遅れてカプセルの置いてある部屋にたどり着く。ドアを開けると饐えた臭いが鼻を衝いた。ミドリが裸のままカプセルに取り付いている。床には汚れきった滋養液が溢れていた。「キャプテン!」ミドリが俺の気配を感じたのか声を掛けてくる。「シャワー室に行って下さい。時間がありません。急いでご自身の肉体を洗浄願います。」
 ミドリに言われるままにシャワー室に行くと、そこには汚れきった滋養液にまみれた俺の肉体が転がされていた。近付いて良く見ると汚れは滋養液だけではなかった。そこここに白い塊が付着していた。俺はシャワーのノズルを手に取ると、水圧をMAXにして俺の肉体に吹き付けた。水流が汚れを押し流してゆく。そして、なんとか時間内に生命維持カプセルに戻すことができた。
 
 
 数日後、再び警告音が発せられた。俺は自分の肉体を洗いながら「面倒臭いなぁ。なんとかならんのか?」と愚痴をこぼしていると、「キャプテンの肉体にかなりの負担が掛かりますが、それでもよろしければ処置致しますよ。」とミドリが言う。俺はあまり考えもせずに「すぐにでもやってくれ。」と返事していた。
 
 ミドリの行った処置のお陰で、以後の航程は警告音に悩まされる事なく快適に過ごすことができた。
 やがて最終航程を迎える。規則に則り俺は自分の肉体に戻ることになった。
 
 滋養液が排出されてゆく。カプセルの蓋が開き光が差し込んでくる。「ご気分はいかがですか?」ミドリが心配そうに覗き込んでいた。俺はミドリを押し退けるようにカプセルの縁に手を掛け、身体を起こした。久し振りの生身の肉体ということで多少の違和感はあったが、そう大きな問題とも思えなかった。「大丈夫。問題ないよ。」と言ったが、言ったそばから違和感が増大してゆく。
「立てるのでしたらシャワーを浴びてきてください。私は新しい船内服を用意しておきます。」ミドリの助言を受けシャワーを浴びる。浴びながらも付きまとう違和感に悩まされる。それは伸び放題の髪の毛ではない。寝たきりで筋肉が衰え、痩せ細った四肢ではない。何か根本的な所でおかしいのだ。タオルで水気を拭っているとミドリが長い髪をタオルに包み俺の頭の上にまとめあげてくれた。俺はバスタオルを腰に巻き、ミドリの用意した着替えに手を伸ばした。が、そこにあったのはピンク色の船内着だった。「なんでここにお前の服があるんだ?」
 
「いえ、これはキャプテンのですよ。サイズも合わせてあります。」とミドリ。この会社はオーナーの趣味で女性の船内着はピンクのミニスカートに統一されていた。ミドリの用意したものは正にそれであった。「これは女の船内着だろう?」と言ったが、「そうです。警告音の対策としてキャプテンの性別を女性に変更したので船内着もこちらになります。」とミドリ。
 俺はようやく違和感の正体にたどり着いた。腰に巻いたバスタオルを外すと、確かに股間には何もない。鏡に映すと、腰がくびれ尻の張った女の体型になっていた。良く見ると胸も膨らみかけている。「どういう事だ?」「大丈夫ですよ。栄養が行き渡ればすぐにでもCカップ位にはなりますよ。」「ちがう!!」俺は下に向けていた視線をミドリに振った。「何故、俺が女にならなくちゃならないんだ?」睨んでみたがアンドロイドが相手では効果も期待できない。「先程も言いましたように生命維持カプセルの目詰まりを防止する処置です。目詰まりは精液によるものでしたので、精液を放出しなくても良いようにキャプテンの性別を変更させていただきました。」
「…も、元に戻せ。今すぐに元に戻すんだ!!!」
「それは出来ません。まもなく最終航程です。生身の乗組員が操船を行うよう規定されています。性別の再変更は次の航海で行って下さい。」
 
「誘導ビーコン確認。進路クリアー。」自分の口から出てゆく女の声に尻がムズムズする。結局ピンクのミニスカートをはかされ、化粧までされてしまった。
「好い感じですよ、キャプテン♪」ミドリがほほ笑みかけてくる。「早速のデートの誘い、受けてみても良いんじゃないですか?」「バカ言うなよ。俺は男だ!」相手が女だと管制官の態度も違う。妙に優しく、親切である。こちらが下手に出ていると、果てはデートの誘いまでしてくる始末である。「構わないじゃないですか?キャプテンは誰が見ても女性ですし、その姿も次の航海まで。オンナを楽しめるのも今のうちですよ。」ミドリがイミシンな笑みを浮かべる。俺は昨夜の痴態を思い出して顔が上気するのを感じた。
 
 
「では、私と勝負しませんか?」ピンクの船内服を強硬に拒み続ける俺にミドリが提案してきた。「女の服は女性がそれを身につけて快適にいられるよう考えられているのです。女性の身体が男性のものとどれだけ違うのか知っていただきます。」「で、何を勝負するんだい?」「ずばり、SEXです。先にイかせた方が勝ちです。しかし、キャプテンは生身の身体ですから30分の制限時間を設けます。それまでに勝負が着かなかったら私の負けとします。」「良いだろう。」俺達はベットの上に場所を移した。
 ミドリが服を脱ぐ。サイドテーブルにはどこに持っていたのか様々なバイブが並べられていた。「さぁ、来て♪」ミドリがベットに横たわる。俺はいつものように伸し掛かっていった。
「あ、ああん♪」ミドリはいつものように喘ぎ股間を濡らしている。俺はいつものようにミドリの感じる所を攻め上げていった。ミドリは悶え昂揚してゆく。
 と、そこで俺の動きが止まってしまった。いつもであれば、ここで俺の肉棒を突き立ててやるのだが、今の俺にはそれがなかった。仕方なく指を使う。一本では話しにならない。二本、三本と増やすが太さは良いが長さが足りない。俺はサイドテーブルにミドリが用意したバイブに手を伸ばした。スイッチを入れるとバイブはうねり始めた。
 ミドリの動きに変化があった。絶頂の前触れである。しかし、変化はそこまでだった。いつもなら程なく達してしまうのだが、今回はこの前触れの状態で停まっている。いや、彼女の興奮が冷めてきていた。
 ミドリの閉じられていた瞼が開かれた。「さぁ、もうすぐタイムリミットね。今度は私からやらせてもらうわね♪」
「ひゃうっ?」俺は思わず声を上げていた。ミドリの手が俺の股間を撫で上げたのだ。
 ミドリの指技は既に濡れ始めていた俺の股間に愛液を滴らせる。「むグ、むァ」俺は漏れ出ようとする喘ぎ声を必死で押し止める。が、次から次に押し寄せる快感に俺の意識が耐えられなかった。
「うグッ、ァ、あ、ああ〜〜〜」
 俺の頭の中は真っ白になっていた。
 
「気が付いた?」ミドリが声を掛けてきた。「私の勝ちね。」「あ、ああ。」俺は頷くしかなかった。「じゃあ、まだ時間もあるし続きをやらない?」「えっ!」「今度はじっくりとイかせてあげますね♪」
 ミドリが再び伸し掛かってくるのを、俺は拒絶できないでいた。ジュンッと股間に蜜が滲みでてくる。ミドリに触れられただけで快感のさざ波が広がってゆく。攻められれば喘ぎ声を止められない。一度知ってしまった快感には逆らえない。 俺はいつの間にか自ら快感を求め始めていた。
 
 
 宇宙船はゆっくりと港に導かれていった。係留索に絡み捕られる。荷物室のハッチが開いてゆく。「後は私がやっておきますから、キャプテンはお支度してきて良いですよ。」俺は鏡の前に立ち、つい先程届けられたばかりの箱の中のドレスを胸に当てていた。あの管制官からの贈り物だ。いつの間にか俺はそいつとデートすることになっていた。
 映画を見て、食事をして、軽くアルコールが入った所でホテルのベットヘ。いつもと変わらぬデートの手順だ。が、今日の俺は女の子をベットに押し倒すことはしない。押し倒される女の子が俺自身なのだから…
 
 気が付くと、俺はショーツをほんのりと濡らしていた。
 
 
 

−了−


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