「神様。 ボクの願いを叶えてください!!」
勿論、神殿の中に入って、神様の前でそんな事を言える度胸など持っていない。
神殿を見下ろす高台の木々の影に隠れるようにして手を合わせていた。
勿論、普通に願いが叶うとは思ってもいない。
同性に恋をするなど、禁忌である事は充分に理解している。
(けれど…)
もし、ボクが女の子であったならば、こんなにも苦しむことはなかっただろう。
普通に親友に「好きです」と告白すれば済むことなのだ。
手作りのお菓子を持っていったり、ハンカチに刺繍を入れてあげたり…
同性であっても、そんな事をする事には何も問題はないのだ。
が、
「好きです」の一言だけは、決して言ってはならないのだ。
ボクが「男」のままでいる限りは…
だからボクは神様にお願いする!!
親友に「好きです」と言っても良い存在に「ボクを変えてください!!」と…
「ボクを『女の子』にしてください!!」
ボクは何度も神様にお願いしてきた。
ボクが親友を恋愛対象として認識してしまったその日から…
その日、親友が高熱を発して寝込んでいた。
お見舞いに行ったが、「伝染するかも知れない」と追い返されてしまった。
そして三日後…
親友は姿を消してしまった。
誰も何も言ってくれない…
「神様。 どうか、親友を無事にボクの元に返してくれませんか?」
神殿を見下ろす高台の木々の影に隠れるようにして手を合わせていると…
カサッ…
下草が音を発てた。
振り返るとそこには見知らぬ女の子が立っていた。
(見知らぬ?)
その娘の顔には、どこか親友の面影があった。
「何をお願いしていたの?」
彼女はそう言った。
「いなくなってしまった大好きな親友が戻って来ますように って…」
「その親友さんの姿が変わってしまっていたとしても?」
「大丈夫♪ ボクには彼がどんな姿になっても…」
ボクは目の前の女の子をぎゅっと抱き締めていた。
「大好きだよ。 愛している♪」
ボクがそう言うと、親友の愛らしい瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた…
ー了ー