それは遠い昔の記憶…
その夜、水分を取り過ぎたようで尿意に目が覚め、半分眠りながらトイレに向かった。
どういう理由か、トイレに失敗し小水の水溜まりの中で泣いていると
「ああ、今日は満月の夜だったわね♪」
と薄衣一枚羽織っただけの女の人に優しく抱き締められたのだった。
僕は母の事は覚えていないが、多分彼女が僕の母であったのだろう。
濡れた寝間着を剥ぎ取り、風呂場に連れていかれた。
彼女もまた裸になり、僕に湯を掛け、汚れを洗い流してくれた。
その時が僕の記憶にある唯一の女性の裸体だった。
僕には父も母もいない。
唯一親代りの伯父さんは、その昔、父の元で働いていたという。
十数年前の災害で僕の住んでいた村が崩壊したという。
僕の親族は皆、災害の犠牲となってしまったらしい。
僕の親族ばかりではなく、村で難を逃れたのはほんの一握りだったらしい。
その生き残った人々も散り散りとなり、今ではどこで暮らしているのかもわからなくなっていた。
伯父さんは村を離れて住んでいたが、父への恩義から、奇跡的に生き残った僕を引き取って、ここまで育ててくれたのだ。
僕の脳裏には幼い頃の、母と思われる女性の発した「満月の夜」という言葉が奥深くに刻み込まれていた。
だから、満月の夜になると、ベッドの中で身動ぎもせずに「その時」を待っていた。
それは伯父さんにも言えない、僕だけの秘密だった。
それは満月の夜、午前0時になると、僕の肉体が「女」になる…ということだった。
マンガや小説の題材にはなるが、実際に男が女になるなんて事はあり得ないのだ。
勿論、僕の知る女性の肉体は、あの時の母の姿以外は写真等でしか知ってはいない。
が、男のシンボルが無くなり、溝が穿たれ、そこに指を入れられる器官があるのだ。
これが、女の肉体でなくて何だというのだろうか?
それに、股間だけではなかった。
中学に上がる頃から胸も膨らんできたのだ。
ポチリと突き出た乳首に触れると、アアン♪と淫声が漏れそうになる。
そして、胸の膨らみも、乳首の大きさも…そこから得られる快感も、年齢が増す毎に大きくなっていった…
とはいえ、3時になれば男のシンボルが復活し、胸も元通り平らになるのだった。
伯父さんは僕を大学にも通わせてあげると言ってくれている。
が、いつまでも伯父さんに甘えてばかりもいられない。
僕は中学に上がる頃から勉強だけは人一倍頑張ってきた。
高校では奨学金をもらって、少しでも伯父さんの負担を少なくしたかったのだ。
そして、高校では勉強と併せてアルバイトを始めていた。
とはいえ、勉強ばかりしていたので、体力が殆どない。
力仕事などできる筈もない。
家庭教師の話もあったが、貧弱な体躯では生徒にバカにされるだけだった。
女子ならウェイトレスみたいな職種も選べるのだが…
(女子なら?…)
僕はよくオカマとバカにされていた。
貧弱で色白で背もそう大きくない。
女装すれば女子として通るかも…
なにせ、月に一度、三時間だけではあるか、僕は本物の女にもなっているのだ!!
試しでやってみて家庭教師のアルバイトは散々だったが、アルバイト料は手にしていた。
僕はそのお金でリサイクルショップに行き、女装の為の服を手に入れた。
もともと声も高めだったので、言葉遣いに気を付ければ「女子」で通る筈…
…通ってしまった。
僕は放課後と休みの日にウェイトレスのアルバイトを始めた。
休みの日は問題ないが、放課後は制服のままではお店に入れないので、途中で着替えてからお店に向かうことになった。
(伯父さんとは朝御飯の時くらいしか顔を合わせないので、家には女の子の姿のまま帰っても問題はなかった)
店長から夏休みの間、避暑地の系列店の応援に行ってもらえないかと相談された。
その高額なアルバイト料に目が眩み、後先も考えずにOKしてしまった。
よく聞くと泊まり込みとの事だった。
勿論、通える距離ではないし、宿泊場所も店で手配し、経費はお店で出してくれるという。
「休みもあるから、バカンスを楽しむのも良いよ♪これは良く働いてくれた君へのご褒美でもあるからね♪」
まあ、合宿のアルバイトと考えれば夏休みに家を空けても問題はないだろう。
休みの日はほぼ一日中女の子の格好をしているので、2〜3週間女の子を続けるのも問題はない。
ただ、店長のいう「バカンス」が問題である。
朝夕は多少布地の多い服でも問題はないが、日中…それも避暑地の中を若い女の子が涼しげな格好をしていないのは変に思われる。
当然、涼しげな格好は胸元が大きく開いたものが定番である。
が、僕の胸が「男」の胸である事は隠しきれない。
「貧乳」といい張っても、男と女ではやはり違うのだ。
(これが満月の夜みたいになっていたら…)
満月の夜であれば(三時間ではあるが)、僕の胸はどんな女の子にも退けは取らない!!
…って、何を僕は威張ってる?
それでも、僕は買ってきた、胸元の開いたサマードレスを着てみていた。
…
ジッ!!
…
その時、僕の腹の奥に何か疼くものがあった。
それは満月の夜、変身の前触れの疼きに似ている?
もし、満月の夜のように僕の胸が膨らんでくれたら、このドレスもさぞ映えただろうに…
ジジッ!!
疼きが増していた。
そして、次の瞬間…
僕の胸は見事に膨らんでいた。
(今はまだ満月の夜ではないのに…)
僕の肉体は満月の夜と同じに女の肉体に変わっていた。
変なタイミングで女の肉体になってしまった為か三時間が過ぎ、午前3時を回っても元に戻る事はなかった。
仕方なく、胸を締めつけるようにして制服を着て学校に向かった。
夏休み間近で暑い中、上着を着て少しでも膨らみが目立たないようにした。
寝不足もあって、体調不良の言い訳が通ったが、明日からはどうしようか…
放課後になりアルバイトに向かう。
いつものように着替えるが、今日はブラの中に詰め物をする必要がない。
僕の胸がしっかりとカップの中に納まった♪
「何か良いコトでもあったの?」
と皆に聞かれたが、ちゃんと女の子の肉体で女の子の服を着ていられるとこが嬉しいとはさすがに言えなかった。
次の朝も僕は女の子のままだった。
夏休み前で授業もほとんどない。ましてや今日はプールの日だった。
僕は学校には行かずに朝から女の子の格好で出歩いていた。
行き先はコスプレ用品を扱っている店だ。
女の子が男装する際に使うナベシャツというものを手に入れる為だった。
さすがにこういうものはリサイクルショップでは手に入らないと思う。
ふと見ると、コスプレ?なのか、僕の学校の女子の制服そっくりなのが展示されていた。
思わず「試着して良いですか?」と聞いてしまっていた。
「どうぞ♪」と言われ、今更断るのもおかしいので、手にした制服を持って試着室に入っていた。
(今の自分は「女」なんだ!!)
と、何度も自分に言い聞かせながら制服に着替えていった。
鏡の中には、まるで違和感のない女子高生が佇んでいた。
「まるで、あつらえたようじゃない♪」
と褒められる。
悪い気もしない。…って、僕はコスプレをしに来た訳ではないのだ!!
慌てて着てきた服に着替えると、ナベシャツを手にレジに向かった。
「貴女が男装するの?」
と、あからさまに「似合わないわよ」という目で僕を見ていた。
家に戻り、早速ナベシャツを着け、その上からワイシャツを着てみた。
昨日のように上着で誤魔化すまではないように見えたが、いかんせん「女の子」が彼氏のシャツを着ている風…にしか見えなかった。
夏休みまでの数日を、なんとかナベシャツで乗りきった。
当然の事ながら、僕の肉体は男に戻る気配さえ見せてくれない。
僕は本物の「女の子」として夏休みの泊まり込みアルバイトに向かった…
違和感はまったくなかった。
誰も僕が本当は「男」であるなどとは思いもしていないのだろう。
(実際、裸にされてもわかりはしないこだ♪)
とはいえ、同じバイト仲間の女の子達と一緒にシャワーを浴びたりするのも憚られるので、なにかと理由を付けて時間をずらしたりしていた。
が、彼女達にはそんな僕の気遣いなど判る筈もない。
バイトを始めての最初の休日に、皆でプールに行く事になってしまった。
「水着を持ってきていない…」
と言うと、一瞬「持ってきていて当然でしょ?」という雰囲気になったが、そのままショップに連れていかれ、皆の着せ替え人形として遊ばれそうになった。
「こ、これにするっ!!」
と手近にあった水着は真っ赤なビキニだった…
「っあ…、あれ何?」
そこにはひっそりと佇む資料館かあった。
これまで何度か皆とこの辺りに買い物に来ていたが、資料館の存在には気付くことはなかった。
が、何故か今、無性に気になってしまっていた。
水着を買うという目的は達成されている。
僕は皆と別れて、独り資料館の扉を開けた。
普通ならもう閉館時間を過ぎているに違いない。
中は非常灯しか点っていなかった。
が、僕が入ると奥の展示室が明るくなっていた。
僕は真っ直ぐに奥の展示室に向かっていた。
その部屋の中で一ヶ所だけスポットライトが当てられている展示物があった。
(お守り?)
古ぼけた布地の小さなな袋状のものだった。
それは、この村の総領の家に伝わる儀式的なお札だという。
跡継ぎを身籠った時にその時の総領から受け継がれるという…
周りには何の囲いもなかった。
大事なものであればガラスケースででも覆われているものである。
スポットが当たっているというのに、何とも無防備であろう。
そう、手を伸ばせば触れることもできる…
ビクッ!!
僕の肉体を電気が駆け抜けていった?
僕の指先から…
僕の指先がそのお札に触れていた。
慌てて手を引っ込めた。
そして、違和感を感じる。
(?)
胸が軽くなっていた…
股間に何かある?!
それは、ここしばらく遠ざかっていた感覚だった。
僕の肉体が男に戻っていたのだ。
慌てて合宿所に戻った。
皆が持って来た水着を見せあっているのを横に僕は部屋に直行した。
(男に戻っている…)
何故?と問えば、あのお札の所以としか考えられない。
が、今はまずい!!
彼女達は絶対に僕が買ってきた水着を着せたがるだろう。
よりにもよって水着だ。
何の誤魔化しようもない。
僕は男に戻れなくなった時の変身の感覚を思い出そうとした。
下腹部にジッと疼きが生まれる。
ソコに意識を集中させる。
ジジッ!!
と疼きが増してゆく…
そして、僕の胸に膨らみがあった♪
僕の肉体は女に戻る(?)ことができていた。
僕は陽の光の下に水着姿を晒していた。
「女の子」として、皆と水の中に戯れている。
キャッキャとはしゃぐ声が響いていた。
疲れてビーチチェアに戻ってはトロピカルドリンクで喉を潤し、活力が戻ると再び水の中に飛び込んでゆく♪
陽が暮れる前には服に着替えて「その時」を待った。
夕焼けが薄れ、闇が近付いた頃…
ど、どーーーん!!
花火が打ち上がった♪
翌日の夜、僕は再び資料館に向かった。
一昨日の夜と同じように、闇の中にお札だけがスポットライトに浮かび上がっていた。
違う…
ライトなんか点ってはいない。
辺りは闇に包まれている。
僕がお札に意識を向けた時だけ、闇の中にお札が浮かび上がるようだ。
「勝手に入ってきてはいけないよ♪」
男の声がし、室内に明かりが灯った。
僕が声のした方を向くと
「旦那様?」
と年老いた男が驚きの表情を見せていた。
「す、すみません。ドアが開いていたので…」
「開いていた?それ以前に結界が張られているのに… 話しを聞きたいな。事務所でお茶でも飲まないか?」
「君は見る程、旦那様の若い頃にそっくりだ♪」
「旦那様って、男の方ですよね?」
「これは失礼。若いお嬢さんに男に似ているなどと…それは、旦那様が女性になられていた時の姿に似ているということです。」
「女性に?」
(つまり、僕と同じように女になったり、男に戻ったりしていたということ?)
老人はお札のことについて、説明文に書かれていなかったことまで聞かせてくれた。
そして、その村が災害で失われ、その記憶を残したいと資料館を建てたと聞いた時…
「…その村って、僕が生まれた村なのかも…」
と告白していた。
「貴女は旦那様のお孫さんでしたか…少し待っていてください。」
と、老人は展示室からお札を持ってきた。
「これを体に触れさせてみて下さい。」
と老人がお札を差し出した。
一昨日のことを思い出す。
これに触れて僕は男に戻ったのだ。
彼の目の前でそんな事になって大丈夫なのだろうか?
「貴女が旦那様のお孫さんであれば、どのような変化が起こるかは存じております。そうでなければ何も起りません。」
もはや、それ以外の選択肢は残されていないのだろう。
僕は彼の手からお札を受け取った。
ビクッ…と、一昨日と同じように肉体の中を電気のようなものが走り抜けてゆく。
しかし、その後はお札を持った掌から暖かさが広がってきた。
一昨日のように男に戻ることもなかった…
「では、お札を机の上に戻してください。」
言われた通りにお札を机の上に置き、手を離した途端、変身が始まった。
「やはりそうでしたか…」
老人は納得したように男に戻った僕を見ていた。
「どうぞお札を持っていてください。」
お札を手にすると僕は再び女の肉体に戻っていた。
「そのお札を身に付けている間は女性となっています。貴女がどうやってお札の能力なしに女性になっていたかは存じませんが、そのお札は本来の所有者の元に戻ったことになります。」
次の日、再び資料館に行こうとしたがどこにも見当たらなかった。
他の娘達にも聞いてみたが「そんなのあったっけ?」と一笑にふされた。
それが夢でも幻でもないことは、僕の手元にあるお札が示してくれている。
そして、お札は確実に僕の肉体を男に戻してくれた。
彼はこのお札を僕に渡すためだけに、あの資料館を存在させていたようだ。
その使命が終えた時、資料館もその存在を止めてしまったのだろう。
現実離れした話ではあるが、そもそも僕の肉体自体が現実離れしたものなのだ…
合宿のアルバイトを終え、もとの生活に戻っていた。
お札のおかげで、容易に男に戻れるようになったとはいえ、夏休みの間は何かと女の子の姿で過ごすことが多かった。
そして、いざ新学期が始まる…と、男子の制服を着ようと男に戻った…?!
鏡には男の「僕」が映っていたが…日焼け跡がどうみても「女の子」だった。
ビキニの水着はもとより、ノースリーブのサマードレスなどで過ごしていた記録がしっかりと肌に刻み込まれていた。
服を脱がなければどうってことはないが、何かの拍子にワイシャツから透けて見えはしないかと気が気ではなかった。
いつでも女になれるようになったとはいえ、満月の夜に変身してしまうことはこれまでと同じだった。
お札や自分の意志での変身と違い、満月の夜の変身はこれまで通り午前3時には男に戻っていた。
どんな仕組みなのかはわからないし、医者に診てもらってもどうにもなるものではない。
僕の血統に掛けられた「呪い」のようなものと考えれば、「お札」が効果をもたらすのも納得できよう。
高校の卒業を機に伯父さんの元から独立することになった。
就職先も決まっている。
ただ…
僕は男子としてではなく、女として働くことを選んだ。
お札を封印し、自らの意志で女になってしまえばもう男に戻ることはないのだ。
僕はこれから先、24時間365日を女として…女のままで過ごすのだ。
そうすれば「呪い」は表に出ることはない。
僕は女として生き、恋をして、結婚し、子供を産み…女としての幸せな人生を全うするのだ!!
とはいえ、その為には相手が必要である。
当然、僕の相手は「男性」ということになる。
しかし、肉体は女になっても僕の意識は依然として男のままである。
本当に男を好きになって、子供を産むことまでできるのだろうか?
(子供を産むためには性行為をする必要があり、僕は女として男に抱かれるのだ!!)
しばらく女として生活していれば、そのうち男に対しての恋愛感情も生まれるに違いないと、今は楽観的に考えるしかないのであろう。
勿論、会社には男性社員は沢山いる。
高卒の新人ということで何かと声を掛けてはもらえるが、僕は型通りの対応をすることで精一杯だった。
そんな中、女性の先輩…鹿乃子さんがいつも優しく僕をフォローしてくれていた。
一緒に食事をするようになり、時々休みの日にお招ばれすることもあった。
何度かお泊まりとなることもあり…
そんな中で僕は鹿乃子さんから「オンナ」の快感を教えられた♪
どうやら鹿乃子さんはレズビアンらしく、かねてより若い女の子…僕のことを狙っていたようだ。
僕はオンナの快感を教えられた…というより教え込まれて、週末はほとんど鹿乃子さんの所で過ごすようになっていた♪
「月が綺麗ね♪」
と鹿乃子さんは明かりを消した部屋の窓からカーテンを開け放した窓の外を見て言った。
明かりは消えていても月明かりが部屋を照らし、鹿乃子さんを妖しく浮かび上がらせていた。
今夜は満月だった。
僕はもう満月の日を気にすることはなくなっていたので、改めて満月を見て…
「綺麗…」
と呟いていた。
「今夜は特別だから♪」
と鹿乃子さんが耳元で囁いた。
「そろそろね…」
と時計を見る。
時計は午前0時を告げようとしていた。
「驚かないでね?」
と肉体を重ねてきた。
(?!)
鹿乃子さんは左手で僕の乳房をまさぐり、右手で首筋を愛撫している。
いつもなら濡れ始めた僕の股間に彼女の指が優しく割り込んでくるのだが…
彼女が腰を密着させると、何か太いモノがソコに割り込んできた?
「まだ処女だったっけ?ごめんね、貴女のハジメテをいただくわね♪」
太いモノは更に僕の膣を侵入してゆく…
「さすがにに若い娘はキツいわね♪」
僕は両脚をM字に開かされ、その間に鹿乃子さんの腰が下ろされていた。
まるで、男がするように腰を振ると、僕の中に入っているモノが膣の中を刺激してまわる。
「ンア…アアンッ!!」
僕はいつものように喘ぎ声をあげるが、僕の感じている快感はいつも以上のものがあった♪
「っあ…ゴメン!!」
何かが僕のナカを満たしていた。
「いつもならスキンを付けるし、最後は外出しなのに…」
鹿乃子さんが肉体を離すと、僕の股間をドロリとした塊が垂れ落ちていった。
それが、僕の愛液に絡まった男性の精液であると即に理解はできていた。
が、この状況とはなかなか結び付かない。
鹿乃子さんが女性であることはこれまでのレズ行為で確認できていた筈だ。
が、僕から離れた彼女の股間には「ペニス」としか言えないモノが存在していた。
否…
股間だけではなかった。
彼女の胸からは乳房が消え失せ、筋肉質の胸板と変わっていた。
胸だけではない。
彼女の全身が筋肉を纏い、剛毛に覆われていた?
「ゴメンなさい。満月の夜になるとどうしようもなくなってしまうの…」
午前3時…彼女の肉体は元に戻っていた。
「私の事は嫌いになっても文句は言わないわ。そして、万一の事になっていたら、ちゃんと責任は取るから!!」
そう言われていた。
多分、僕の頭の中ではパニックを起こしているに違いない。
が、それとは別に冷静に状況を見ている自分がいた。
そう…
(そこに「僕」と同じようなヒトが居たんだ♪)
そして(このヒトとなら♪)との想いが湧く。
「責任?」
その言葉にはいくつもの意味が被さっている。
そして、その中には「僕が妊娠するかも知れない」という意味もあった。
「大丈夫よ♪」
意味もなく、僕は妊娠していないとわかっていた。
普通なら安全日かを確認するのだろうが、僕は自分の生理周期さえ忘れがちだった。
僕が大丈夫とは言っても、実際に生理が来たことわ告げるまでは鹿乃子さんは不安な日々だったに違いない。
次の週末。僕は一旦自分の家に戻ってから鹿乃子さんの所に向かった。
あの「お札」を体に触れないようにして持ち出してきたのだ。
「あたしも鹿乃子さんに秘密にしていたことがあります…」
そう言って僕は鹿乃子さんの前で全裸になった。
そしてお札を取り出した。
お札の能力がまだ活きていることを実感する。
そして、テーブルの上にお札を置いた。
「えっ??」
鹿乃子さんが驚きの声を上げた。
僕の肉体は男に戻っていたのだ。
「あたし…僕は、男にも女にもなれるんです。元々は鹿乃子さんと同じように満月の夜に…鹿乃子さんとは違い、男から女になっていました。」
そしてお札を手にして、僕は女の姿になる。
「これは僕の一族に掛けられた呪いだと聞いていました。そして、子孫を残す為にこのお札があるのだとも…」
そして、ここしばらくやっていなかった自分の意志での変身を試みた。
「ただ僕の場合、お札がなくても大丈夫なんです。」
と元の姿に戻り、今度は直接触れないようにしてお札を持ち上げた。
「もしかしたら鹿乃子さんにもお札の能力が効くかも知れません。手に取ってみませんか?」
僕は会社を辞める事になった。
表立って「寿退社」とは言っていないが、隠しきれないお腹の膨らみに誰も異論を唱えることはなかった。
勿論、結婚式は挙げていない。
鹿乃子さんはウェディングドレスを着たかったかも知れないけど、相手が僕なのだからそんな事を言う筈もなかった。
「次はわたしが産もうか?」
とは言ってくれるが、
「子育てに専念する為にも会社を辞めたのだから、二人目も自分で産みたいわ♪」
と僕の考えを伝える。
鹿乃子さんは鹿乃子さんで、今は転職の準備を進めている。
今度は24時間男性として生活してゆくのだ。
僕とお腹の子を養うにはその方が良いと鹿乃子が決断したのだ。
そう…お札を身に付けていれば、鹿乃子さんは男でいられるのだ。
「お札のおかげで、男になったときのどうしようもない性衝動が抑えられている♪」
とはいえ、毎晩のようにお札で男になって僕を攻め立てるのは…
思い出しただけで僕の股間は潤み始める♪
「お幸せにね♪」
同僚を代表して鹿乃子さんが僕に花束を渡してくれた。
「今度ともよろしくお願いします…」
と小声で応える。
もしかしたら、これが僕達の結婚式なのかも知れない♪