満月の夜



あぁ…
今夜は満月だったorz…
俺はこの呪われた肉体を恨みつつ、一度着た寝間着を脱いでいった。
 
時計が午前0時をまわる…
ぞわぞわと皮膚が波打ち、毛髪がぶわっと広がる。
「う、うぅぅぅ…あっ、ああん!!」
俺の前には全身を映せる鏡が立て掛けてある。
そこに映る姿は…
 
 
俗な小説であれば、そこには獣毛に被われた異形の姿が映し出されるのだろう。
だが、俺の一族に掛けられた呪いは、鏡の中に妖艶な美女の姿を映し出すのだ。
肉体の変化の苦しみに喉を突くのは、狼の遠吠えのような勇ましいものではない。
聞こえて来るのは艶かしいオンナの喘ぎ声以外の何物でもなかった。
 
変身は満月の夜の午前0時から3時まで続く。
その間、俺の肉体は「刺激」を求めて…具体的に言えば「オトコ」を求めて疼き続けるのだ。
少しでも俺が理性を失えば、俺は「オトコ」を求めて街を彷徨い歩き出す。
そして、獲物を見つければ否応もなく押し倒し、チャックを下ろすとそいつのペニスにむしゃぶり付いている。
更に、充分な硬さを確認すると、その上に股がり、腰を降ろしてゆく。
 
女になった俺の股間には、当然のようにソレを受け入れる器官が存在している。
変身の直後から、そこからはだらだらと愛液を滴らせているので、挿入には何の支障もない。
俺は俺の内に「男」の存在を感じている。
俺は無意識のうちに「男」を締め上げ、精を搾り上げてゆく。
 
干からびたように動かなくなった男から体を離した俺は、満腹感とともに徐々に理性を取り戻してゆく。
太腿の内側に滴り落ちてゆく男の精液と俺の愛液…
口の中に残った男の滓の何とも言えない違和感…
そして残される、消えようもない背徳感…
理性を失なえばふたたび同じ事が繰り返されるのだ。
 
 
俺は理性を保っていられるよう、服を脱ぎ、全裸となっていた。
全裸であれば、そのまま街にでようとはしないであろう。
疼きを鎮めるためのディルドゥも手元に置いてある。
ほら…疼きが…俺の内にある「オンナ」の器官から一気に広がっていった♪
「うん…ああん♪」
艶かしい喘ぎ声が部屋の中を埋めてゆく。
指だけでは物足りない…
俺の手は傍らのディルドゥに伸びてゆく。
(いけない!!こんな早くから使ってしまっては…)
自制を促すが、ディルドゥの尖端はするすると俺の腟の中に填まり込んでゆく。
 
ソコが満たされた事で疼きは鎮まったが、それも一時期なものでしかない。
やがて、俺の肉体は「オトコ」を…男の「精液」を求めて止まなくなる。
吸血鬼が乙女の生き血を求めるように、俺の肉体は男の精液を求めている。
俺は必死で理性を保とうとする。
が、俺の努力を嘲笑うかのように、ディルドゥは俺に快感を与え、幾度となくイかされる。
意識が飛ぶ毎に、俺はドアへと、外へと近づいてゆく。
 
 
 
 
「あ、貴女!何をしているの?!」
女の声がした。
俺は全裸のまま、男の上に跨がっていた。
次第に「俺」の意識が覚醒してゆく。
(また…やってしまったorz…)
俺はゆっくりと男から肉体を離してゆく。
(何で?まだ精液の一滴も搾ってないのよ!!)
俺の内の「オンナ」が抵抗するが、俺の理性が勝っていた。
とはいえ、まともに立ち上がることはできず、男の傍らに座り込んでしまう。
 
「とっとと消えなさい!!」
女は俺の獲物となっていた男の尻を蹴飛ばして立ち去らせた。
俺はようやく女の姿を視界に捉えた。
(巫女?)
白衣に緋袴の姿はそれ以外の者である筈もない。
ましてや、こんな深夜に普通の女が一人で出歩く筈もない。
「かわいそうに…淫魔に憑かれてしまったのね?いらっしゃい♪祓ってあげるわ。」
女はそう言うと、大きな白い布で俺を覆った。
裸体を隠す以上に、浄化の効能もあるのだろう。
腕を引かれて立ち上がると、近くに停めてあった彼女の車に乗せられた。
 
「そんなに遠くないから♪」
と車を走らせる。
俺の視界にダッシュボードの時計が写った。
時刻が午前3時をまわった。
「悪いが、淫魔に憑かれたとか、そんなんじゃないんだ。」
「えっ?!」
と声をあげ、彼女はブレーキを踏んだ。
淫魔に憑かれた娘を乗せていた筈が、男の声が聞こえてくれば当然驚くであろう。
マジマジと俺の顔を覗き込んだ。
「呪われた一族っていうやつなんだろう。俺は満月の夜、淫乱な女になってしまうんだ。」
「淫乱な女というより、あれは完全に淫魔だわ。もっと詳しく知りたいわ。このまま来てもらっても良いでしょう?」
「ああ…」
俺に彼女の申し出を断る選択肢はないのであろう。
俺は彼女の家…とある神社に連れて来られた。
 
 
「本当に男なのね…」
女…楓(かえで)はこの神社の御神体を前にした板の間で俺の肉体を隅から隅まで検分した。
とはいえ、肉体は元に戻ったが、行為を中断されたためか腹の奥で疼きがくすぶっていた。
「ねえ、変身してみて♪」
「さっきも言ったろ?あれは満月の夜にしか出てこないんた。」
「それって、単なる条件付けじゃないの?変身してはいけないという無意識の抑制…」
楓は少し考え込み、
「ああ、だからその反動が淫乱化してゆき、そこに淫魔が取り憑いたのかも…」
と一人で納得したようだ。
 
「今から気を送るから、拒まないで受け入れてね♪」
俺を床の上に仰向けに寝かすと、楓は掌を俺の腹部に翳した。
彼女の送り込む気に呼応するかのように、疼きが勢いを増してきた。
「拒まないで。そのまま受け入れるのよ♪」
そして、疼きが肉体を支配すると同時に、股間を何かが滴っていく…
その源は…
(俺の肉体が女になっている?)
股間だけではない。
胸にも男には存在しない膨らみが戻っていた。
「んあっ!!」
彼女の掌が俺の股間に這わされた。
彼女の指がナカに挿ってくる。
「ちゃんとイかせてあげるからね♪」
その指先から送り込まれる気が俺の子宮を心地よく刺激する。
「んあん…あぁあん♪」
男の精を取り込むのと同じように、俺の女性器が彼女の気を吸い込んでゆく。
更に彼女の指が周囲を刺激して、俺はオンナの快感に翻弄される…
「ああん、ああ…イくっ、イっちゃう〜〜♪」
俺は意識を手放してしまっていた。
 
 
 
俺は楓が用意してくれた服を着ていた。
勿論、男物ではなく彼女が普段着ている物だ。
そう…朝日が上っても俺の姿は女のままであった。
下着も彼女の物を着けている。
「まだ淫魔が祓えた訳ではないけど、毎日少しずつ淫気を解消していれば、淫魔を抑えることができるわ。」
「確かに疼きも鎮まったし、理性を失なうこともないようだな。だが、いつまでもこの姿でいる訳にもいかないぞ?」
「コツさえ掴めれば気を操ることで変身できるようになるわ。…とは言っても、着ているものはそのままなので気を付けてね♪」
「それを教えてくれるのか?」
「また今晩ね。一旦帰って、男の時に着る服を持ってきたりした方が良いでしょ?」
 
そう言われ、俺は自分の部屋に戻ってきた。
「お邪魔します…」
とドアを開けた時には、自分が彼氏の着替えを取りに来た娘のように思えてしまった。
こんな時間にこの姿で出歩いた事などないので、俺自身であるとは信じ難い。
姿見に写っているのはいつもの女になった自分ではあるのだが…
いつもは服など着ていないし、ましてや化粧などorz…
(一人前の女が化粧もせずに外に出ちゃダメ!!)
と色々塗りたくられ、髪を纏められ、飾り付けられていた。
爪にもマニキュアが塗られ、耳にはイヤリング、首にはスカーフを巻かれていた。
(こんな娘なら恋人にしたいかも…)
それが自分自身でなければの話だが…
 
俺の部屋に連れ込んで、とっておきのビデオを見せて、気分が乗ったところで押し倒す。
「ダメよ♪」
と言いつつも、彼女の方もその気になっているのは間違いない♪
スカートの中に手を忍ばせる。
ショーツのクロッチ部分に触れると、しっとりと濡れているのがわかる。
「今はまだ脱がさないで♪」
そう、服は着たまま、ショーツとパンストを剥ぎ取った。
「このまま俺の上に乗って♪」
仰向けに転がり、ズボンの中から硬く勃起したペニスを取り出し…
嗚呼、今の俺にはペニスがなかったorz
が枕元にディルドゥが転がっていた。
これを俺のペニスに見立て、俺は枕の上に跨がっていた。
「んあっ、ああん♪」
俺は「俺」を犯していた。
否!!俺は今、「俺」に犯されているのだ♪
「俺」が俺=あたしを突き上げてくる。
「ああん♪イイっ!!」
あたしは彼の精を搾り取るように腰を振っていた♪
 
 
 
辺りが暗くなった頃、紙袋に靴と服を詰めて楓のところに戻っていった。
「なんだ、男には戻りたいんだ。」
彼女の言いぐさからすると、俺がこのまま「女」として生きる可能性もあったということなのだろう。
思わず(俺は本当に男に戻りたいんだろうか?)と自問してしまう。
「まあ、選択肢は残しておいても良いんじゃない♪」
そう言って、昨夜と同じように床の上に全裸で横たわらせた。
「気を集め、丹田に送り込む。練り上げ、昇華して…肉体を変化させる。」
胸の膨らみが萎み、平らな男の胸に戻ってゆく。
股間の裂目が塞がり、男性自身が復活する。
全身に筋肉が戻り、力が充ち溢れてくる。
「っあ、ああ…」
声もまた男のものに戻っていた。
 
「どお?」
「ああ、元通りのようだ。」
「じゃあ、今度は一人でやってみて♪」
「また女になるのか?」
「あなたはもうどちらにでもなれるのよ。いつでも、好きなようにね♪」
俺は自ら気を集めてみた。
腹の奥に生まれた疼きに気を送り込んでみた。
「んあっ、ああん♪」
一気にオンナの快感が溢れてきた。
俺は「女」になっていた。
 
「確めるわね♪」
と楓があたしの体に触れてきた。
「んぁん♪」
ピリピリとした快感が触れられた場所から全身に広がってゆく…
「感じ易いのね♪」
楓の指が様々な場所に触れる。
が、肝心な所には決して近付かない。
「ああん…もっと…ちょうだい♪」
あたしがおねだりすると、
「そうね♪そんなに欲しいならシてあげるわ♪」
と、彼女の指があたしのナカに入り込んできた。
「っあ…そこ♪イイ〜〜っ!!」
 
 
 
気が付くと楓はもういなくなっていた。
俺は幾度となくオンナとしてイかされた。
(男に戻らなくては…)
俺は今度は男に戻るための気を集めていった。
が、女になった時とは違い、気を送り込む場所がなかなか定まらない。
何度も繰り返してみたが、どうにもならなかった。
 
「いいかげん帰ってもらえないかな?後はもう一人で頑張るしかないからね♪」
と引導を渡されてしまった。
持ってきた「俺」の服は紙袋に入れたまま、再び女物の服を着て部屋に戻っていった。
元に戻れなければどうにもならない…
と、即にも裸になり布団の上に転がるが、楓のところでできなかったものがすぐにもできるようになる筈もない。
気が付くと俺は股間に指を挿し込み、女の自慰を始めてしまっていた。
 
(あたしは何をしているのだろう?)
ふと、そんな疑問が沸き上がってきた。
自慰をしているのはわかっている。
それが気持ちいいからなかなか止められない。
でも、他にしなければならない事だってあるでしょ?
そう…お腹が空いている。
あの夜から何も食べてなかったんじゃない?
食事を作るにしても食材は何もない。
買いに行く?
そういえば着るものはコレしかなかったorz
自分のものを買ってきて、コレは洗濯して楓に返さなければ…
それに、ここには化粧品なんか何もない…
 
 
 
次第に増えていったあたしの服でタンスが一杯になってしまった。
「彼」のものは段ボールに詰めて部屋の隅に積み上げてある。
(もう処分しちゃっても良いかな?)
あたしにはどうやっても男に変身することはできなかった。
楓にやってもらうとできるのだけれど、もう男になりたいたという欲求みたいなものは全く無くなってしまっていた。
 
 
楓とは百合友達みたいな関係が続いていた。
勿論、男とのセックスも嫌いではない。
以前のように搾り取るだけのものではなく、受け身の…愛されているっていう感覚に浸れるのが良くなっていた。
この間、楓がペニスを生やすことに成功した。
勿論、精液もちゃんと出る♪
そして、そんなセックスを楓としてからしばらくして、あたしは生理が来ていないのに気が付いた。
(もしかして妊娠したの?)
あたしは楓に相談して、彼女の知り合いの医者に診てもらうことになった。
「オメデタですね♪」
(あたしが?赤ちゃんを産むことになるの?)
「責任は取るわ。」
楓はそう言ってくれている。
「結婚…してくれるの?」
「ああ♪」
と楓が応えてくれた♪
 
 
 


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