触手



 俺とした事が情けない。単純なトラップに掛かり、涌き出てきた触手に手足を絡め取られてしまった。
 触手の吐き出す粘液で服がボロボロにされ、俺の裸体が剥き出しにされる。鍛えられた肉体をさらけ出すことはこれまでも幾度かあったが、これ程までに自由を奪われたことはなかった。さらに、屈辱的な姿勢を強要される。
 両脚が広げられ股間がさらされた。腰を上げさせられ、そこに人がいれば尻の穴まではっきりと見られただろう。その股間に一際ごつい触手が迫ってきた。そいつの粘液は服ではなく、俺の皮膚を溶かしていった。不思議と痛みはなかった。
 触手は俺の股間に穿たれた穴に潜り込んできた。俺が女であれば、ちょうど膣の中あたりで触手が蠢いている。まるでペニスのように俺の腹の中をいたぶっているのだ。別に快感を感じている訳でもないのに、俺のペニスもまた勃起し、盛んに精液を撒き散らしている。膣から溢れ出した粘液とで俺の下半身はベトベトに汚れていた。
 
「ぉぉ〜ぃ…」遠くで誰かが叫んでいた。
 気が付くと俺を拘束していた触手達は皆朽ち枯れてぼろぼろになっていた。「おお〜い…」声が近付いてくる。俺は触手の残骸を振りほどき立ち上がった。多少ふらつくが、問題となるものではなかった。
 俺は声のした方に歩き始めた。救援者に声を掛ける。「大丈夫だ。ありがとう。」枯れた触手を割って、彼等の前に進んでいった。洞穴をふさぐように絡まっていた触手も干からびていた。腕を一旋すると、それらは粉々に砕け散り、洞穴の向こうにいた彼等の姿をあらわにした。俺が手を振り彼等に合図すると彼等もまた洞穴に足を踏み入れてきた。
 
 (お美味そう)俺の足元で何物かがつぶやいていた。先頭の男が手を差し延べてきた。ビクリと俺の股間が反応する。内股を甘い雫が垂れてゆく。
 最後のひとりが入り口を超えた時、今まで鳴りを潜めていた触手達が爆発したように洞穴を埋めつくした。粘液がシャワーのように降り注ぎ、彼らの衣服を溶かしてゆく。暴れる者は次々に触手に拘束され、股間に太い触手が突き立てられていった。
 俺の目の前の男も粘液のシャワーを浴びていた。振り返り仲間の痴態に目を奪われる。彼の股間には俺のペニスが触手のように伸びていった。2〜3度股間を撫で上げるだけで、彼のペニスは硬く勃起していた。俺は彼の大腿に自らの股間をなすり付けた。愛液が彼の大腿を濡らす。愛液はそこから彼の身体に染み込むと同時に、揮発した成分が彼の鼻から吸い込まれ、全身を侵してゆく。
 
 彼はもう俺の命令に逆らうことはできない。俺は立ったまま、彼のペニスを俺の陰部に導いていった。俺の膣が彼のペニスに満たされる。更に奥に届かせるために、俺は彼に抱き付いた。彼に俺を支えさせる。尻に手を廻させるが、俺の体重のほとんどは彼のペニスが支えていた。彼のペニスの先端は俺の膣の最奥に触れていた。俺は膣を蠢かせる。彼のペニスを圧し包み、快楽を与えてゆく。
「どうだい?気持ちが良いだろう?」俺が声を掛けると、彼は虚ろな表情のまま「はい」と答えた。
 少し興ざめするが、彼の肉体は正しく反応していた。頃合いをみて、刺激を与えてやると、彼のペニスの中を大量の精液が通過していった。それは俺の膣を満たし、膣口から溢れ出てきた。
 
 満足した俺は彼の精神的拘束を解いてやった。彼の瞳に精気が戻ると同時にその瞳は恐怖に強ばっていた。
「お前の精はお美味かったぞ。お前は活かしておいてやる。」
 俺の口がそう言った。俺はようやく理解した。俺は彼らを捉える囮にされていたのだ。すでに俺の身体は触手に支配されていた。彼の仲間は触手に溶かされ、養分として貯えられていた。それは彼を生かすための養分だった。
 
 
 彼は俺のペニスから変化した触手から養分をもらう。
 その代償に彼は俺の大腿を押し開き、硬く勃起したペニスを俺の股間に突き立てる。
 快感とともに、彼の精が俺に=触手に活力を与えてくれる。
 
 それは、洞穴の中で永遠に繰り返されるのだった。
 
 
 

−了−


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