クリスマスプレゼント2



 
 明日はクリスマス・イブだ。ボクは一所懸命にクリスマスケーキを作っていた。明日の晩は恋人(ボクの一方的な思い込みかもしれないが)の春信と一緒に過ごすことになっているんだ。
「神様。いつかボクと春信が結婚できますように♪」ボクは全身全霊を込めてケーキを作っていた。
 たまたま、そのとき暇だったサンタクロースがボクの想いを耳にしていた。
「その願い叶えてやろう。」サンタは懐から願いを叶える宝石を取り出すと、ポィと放り投げた。宝石は時空を超えてボクが格闘しているボールの中に落ちていった。そんなことも知らずに、ボクは生地を練り廻していた。宝石はボクの想いとともに生地の中に溶け込んでいった。
 
 
 ボクと春信の出会いはバイト先でのことだ。たまたまバイトで一緒になった彼の名前がボクの名前と似ていたので最初から親近感があった。
 ボクは今、女の子として生活しているし、皆もボクのことを女の子として見ている。もちろん春信もボクが女の子じゃないなんて露程も思っていないだろう。ボクは自分のことを須藤めぐみと名乗っているが、本当は須藤春信なのだ。バイトの名簿に『須賀春信』という名前を見つけたときはかなり焦ってしまった。ボクの本名と一字しか違わないのだ。そして、何の運命かその『春信』とボクが一緒に働くこととなったのだ。
 春信とはすぐに仲良しになった。休みの日は二人で遊びに行くこともあった。
 そして、クリスマスイブを二人で過ごすことになったのだ。
 
 
「これ、ボクからのクリスマスプレゼントだよ♪」春信は顔を綻ばせながらパッケージを解いていった。
「おいしそうだね。」ハート型のケーキには天使の羽をイメージしたクリームの飾りが乗っている。
「春信、食べてみて?」
「あぁ」そう言って彼は口を大きく開けてボクのケーキにかぶりついた。
「うん。おいしいよ。めぐみは料理の天才だね♪」
 そう言って笑顔を見せた直後、春信は突然苦しみだした。
「うぅぅぅ……」床の上にうずくまる。下腹部に手を当てて身を捩る。
「春信っ!?」ボクは彼に被さるようにして覗き込んだ。
 
 
「お腹の中が変だ。む、胸が苦しい。喉も…」春信の声が掠れてゆく。ボクは少しでも楽になるようにと、ワークシャツのボタンを外そうとした。
「何これ?」ボクが手を伸ばした先には今にもボタンを弾き飛ばそうとする程はち切れていた。春信の胸が膨らんでいるのだ。シャツの布を押し上げる肉塊がそこにあった。
「ぁあっ♪」ボクがその塊に触れた途端、春信の口から艶かしい声が零れ出た。
 部屋の中は暖房が効いて温かい。ボクは意を決して春信の身体から衣服を剥ぎ取っていった。
 
 
 その下から現れたのは紛れもなく若い女の肉体だった。
「あ、熱い。どうにかして…」春信の手は下腹部から股間に移動していた。股の間に彼の手が差し込まれている。彼が指を動かすとクチュクチュと淫靡な音が聞こえてきた。
 骨格も内蔵も変化を終え、痛みに伴う苦しみはもうないのだろう。今は性的な興奮に支配されているようだ。「女」としての快感を得る術を知らない彼はその疼きに翻弄されていた。
「春信、手を退けて。」ボクは彼の身体を隅から隅まで観察した。彼の身体にはどこをとっても「男」だった痕跡は残っていなかった。顔だちも女のそれになり、髪の毛も伸び始めている。そして、彼の股間は濡れていた。
 
 
 それを見たボクの身体に変化が生じていた。過去に置き去りにしてきた筈の「男性」がボクの身体の中で目覚め始めていた。ショーツの中が痛んだ。スカートの前が盛り上がってくる。春信もソレに気が付いたようだ。
「めぐみ?」彼の手がボクのスカートを捲り上げる。ショーツとパンストがまとめて降ろされた。ボクの股間には確かな証がそそり勃っていた。
「お、俺を助けてくれ。熱くて、切なくて、もうどうにかなってしまいそうなんだ。」そう言う春信の声はもう女の声にしか聞こえなかった。
 
 
 パフ、プシュ、ジュク… 淫らに濡れた皮膚の発てる音が部屋の中に響いている。
「ぁあん、あぁ、うぅん…」女の媚声が渦巻いている。ボクは春信を抱いていた。本当なら、ボクが春信に抱かれていた筈なのに… 何でこんなことになってしまったのだろう。春信の膣がボクのペニスを締めつける。硬くなったボクのペニスが春信を貫いてゆく。「あぅ、あぅ、あっ、あっ、あっ」春信が次第に昇り詰めていく。ボクのペニスも限界に近かった。「あっ、あっ、あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」嬌声が響く。春信がボクにしがみつく。彼の膣が痙攣する。ボクも限界に達し、溜まっていたモノを吐き出していた。
 
 
「めぐみの…」春信がつぶやいている。「めぐみの精液が俺の中で揺れている。」
 性的な興奮も官能の疼きも収まったのだろう。春信は安らかな寝息をたて始めていた。もう、どこから見ても春信は「女」でしかなかった。翻ってボクはどうなのだろうか?「女」の仮面を剥がされてしまったボクは「男」に戻るしかないのだろうか?「女」のまま「女」の春信と付き合っていけるのだろうか?それよりも、ボクはこの先「女」の春信を愛し続けられるのだろうか?
 悶々としたまま、ボクはクリスマスの朝を迎えていた。
 
(この先分岐)
    
P−A
    P−B
    P−C
    P−D



P−A
 
「ぅ、う、うん♪」愛らしい声をあげて春信が目覚めた。
「おはよう。そしてごめんなさい。」一晩かけて辿り着いた結論は『全てはボクが蒔いた種』だった。「女」でないボクが春信を愛し、春信と結婚したいなどと願ってしまった報いなのだから。
 神様は意地悪だ。何でボクではなく春信を「女」にしたんだ!! そんな理不尽な想いも含めて、ボクは全てを春信に打ち明けた。春信は優しく笑っていた。
「なっちゃったものは仕方ないよ。それより、これからどうするかだね。先ずは服を着ようか?」
 すっかり体型の変わってしまった春信に昨日までの服は着れそうもない。ボクのワードローブからフリーサイズのスカートと大きめのトレーナを引きずり出した。
 
 
「やっぱりこれを穿くのかい?」春信はスカートを手に立ちすくんでいた。
「下着もよ♪ さすがにこれは未使用のが良いでしょう?」元が美人なせいか「男」そのままの言動さえなければどんな服を着てもそこそこに見れてしまう。髪の毛をブラッシングして口紅を塗ればどんな男も振り返らずにはいられないだろう。ボクの股間も正直に反応していた。
「めぐみ?」春信の目が驚きに見開かれている。
「春信がいけないんだよ。こんなにもフェロモンを撒き散らしているんだから。」ボクが辺りに視線を泳がすと春信もその先を追ってゆく。その隙にボクは春信の唇を塞いだ。ボクの中の「男」が暴走し始めている。止めようもなかった。
 
 
「だ、だめ…」春信の抵抗は形だけのように見えた。一度知ってしまった快感に逆らうことはできないのだ。スカートの中に手を入れると、ショーツの股間が濡れ始めていた。ボクは春信をうつ伏せにさせた。スカートを捲くり、まん丸なお尻を突き出させた。膣口がボクを誘っている。ボクは憤り勃った男性自身をその中に突き入れた。
 
 ボク達は一日中愛しあった。
「『セキニン』取ってよね♪」
 図らずも、ボクは春信と結婚することになった。
 
 
Happy END?
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P−B
 
「あ、ある! な、ない!! 夕べの事は夢じゃなかったんだ。」春信は目覚めると胸と股間に手を当てて叫んでいた。
「ごめんなさい。たぶんボクが悪いんだ。」一晩かけて辿り着いた結論は『全てはボクが蒔いた種』だった。「女」でないボクが春信を愛し、春信と結婚したいなどと願ってしまった報いなのだから。ボクは全てを春信に打ち明けた。
「俺を騙していたのか?戻せ、直ぐにも戻せ!」春信は女のように(既に女なのだが)泣いていた。ボクはそんな春信を愛しく感じていた。
 春信は服を着ようとしていた。もちろん昨日まで春信が着ていたものだ。昨夜の変身を見ていたボクにはそれが無駄な行為だと判っていたが止めさせることはできなかった。ワークシャツを着ようとして胸の膨らみを必死に押さえ込もうとしている。ひとつひとつボタンを止めてゆく。ぎゅうぎゅうに押し込んだ胸のボタンはズボンを穿こうと立ち上がった途端、呆気なく弾け飛んでいった。
 
 
「これを着たら?」ボクはフリーサイズのスカートと大きめのトレーナを差し出したが、春信はトレーナだけを取り、無理やり穿いたズボンに合わせた。
 鏡を見た春信は絶望的な顔をしていた。隠しようのない胸は大きく突き出ている。顔も春信の面影はあるものの、すっかり女の顔になっている。
「お、俺は男だからな。」自分に言い聞かせるようにボクに宣言した。
 しかし、その宣言はすぐにも崩壊の危機に晒されることになった。
 さすがにこの格好のままでは拙いと、服を買いに行くことになった。春信が財布の中身を確認した時、クレジットカードのデザインが変わっているのに気が付いた。更によく見ると、名前が違っていた。HARUE SUGAとなっていた。免許証を確認すると、女になった春信の顔写真が貼られていた。名前は『須賀春江』となっていた。
 
 
 あまりの出来事に呆けてしまったままの春信を連れて服を買いに行った。心ここに在らずといった所を良いことに春信に女物の服を次々と試着させていった。その間に春信も自分を取り戻していた。
「ここで騒ぐともっと目立つことになるわよ。」そう釘を刺しておきながら、次々と服を替えては鏡に映る女らしい服を着た自分自身を見せつけてあげた。
「もうあなたは女性なのよ」そう言い聞かせるように下着や化粧品の売り場を連れて廻った。最後にトイレに連れ込んだ。嫌がる春信に「あなたはもう、男性トイレには入れないのだ」と説得する。便座に跨がらせ、女としてのマナーを教えた。
「時期にこれも必要になるからね、」ボクは買っておいた生理用品を手渡した。
「これって… 俺が?」「子供も産めるはずよ。」
 ボクは聖母マリアのように赤ん坊を抱いた春信…春江の姿を想像していた。
 
 
ハレルヤ
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P−C
 
 朝になると春信の姿は元に戻っていた。
「夕べのアレは何だったのだろう?」春信とボクは頭を捻ったが答えが出る訳でもない。うやむやの内にボクが「男」であることを言いそびれてしまった。
「気分転換にどこか出かけないか?」春信の提案にボクは頷いていた。春信の運転で湘南に向かった。海岸沿いの喫茶店で小休止する。春信はブラックのコーヒー、ボクは紅茶のケーキセット。今日はクリスマスだという事でケーキも特別製らしい。あまりにも美味しいケーキだったので、春信に一口別けてあげた。
 ケーキが春信の口に入った途端、昨夜と同じようにお腹を押さえて苦しみだした。まさかとは思ったが、春信の胸は昨夜と同様に膨れ始めていた。ここで見咎められると騒ぎが大きくなる。ボクは急いで会計を済ませ、春信を自動車の中に連れ込んだ。
 
 
 昨夜の光景が再現される。
 苦しみに喘ぐ春信の声が掠れてゆく。春信の全身が軋み、形を変えてゆく。急激な変化が春信に性的な興奮と官能の疼きをもたらす。
「ぁあっ♪」春信の口から艶かしい声が零れ出る。シャツのボタンが弾け飛び、豊満な乙女の乳房が飛び出してくる。濃厚なフェロモンが車内に充満する。
「あ、熱い。どうにかして…」春信の手は下腹部から股間に移動していた。ズボンのベルトを外し、手が差し込まれている。指が動きクチュクチュと淫靡な音を発てている。一度知ってしまった快感を再び自分のものにしようと、もう一本の手がボクの方に伸びてくる。スカートの中でショーツを弄る。隙間から指を差し入れ、ボクのモノに触れていた。
 
 
「だめだよ。こんな所で…」駐車場の自動車の中である。覗かれれば丸見えの状態なのだ。ボクは必死で拒絶するが興奮している春信の欲求はそれを上回っていた。ボクは他の方法で春信の欲求に応えることにした。春信の剥き出しの乳首を捻り上げた。性欲に飢えた春信には痛みさえも快感に転換されている。春信は受け身の態勢に入った。ボクは春信の股間に指を滑り込ませた。大量の愛液が指に絡みつく。勃起したクリトリスを責めたてると、あっというまに達していった。
 
 ひと眠りすると春信は男に戻っていた。春信は落ち着きを取り戻していた。
「俺はどうなっちまったんだよ。○ん○のように女になったり男に戻ったり…」
「良いじゃない。どっちも経験できるなんて、うらやましいくらいだわ。」
「どうやら俺はお前なしではいられないようだな。」春信の腕がボクの肩を抱く。
「素敵なクリスマスプレゼントね♪」ボクは春信の胸に頭を預けて言った。
 
 
END
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P−D
 
「たぶん、このケーキの所為なんだろうなぁ。」ボクの作ったケーキの食べかけを手にして春信が言った。
「ごめんなさい。」「いや、謝ることはないよ。めぐみだってこんな事をしようとして作った訳じゃないんだろう?それに、めぐみだって被害者じゃないか。女の子が男になって射精までしてしまうなんて…」ボクは自分が元々男であることを告げるタイミングを逸してしまったようだ。
「とにかく、今はこの現実を受け止めるしかないんだ。そうとなったらいつまでも裸ではいられないね。先ずは何か着れるものを探そう。メグミはそのままでもなんとかなるようだけど俺はそうもいかないからね。」春信はおどけた仕種で胸を揺すった。ボクはワードローブからフリーサイズのスカートと大きめのトレーナを引きずり出した。
 
 
 元々が美男子なせいか。女になった春信はかなりの美人だった。背丈は変わっていない所に女らしい凹凸が付くとファッションモデルと言っても通用する程だ。ボクの手で化粧をし、髪の毛を女らしく整えると誰もが振り返る「美人」が誕生した。
 春信自身は自分がどれだけ美人になっているのかをまるで意識していないようだ。ボクが指摘する前に行動してしまっている。いつものように満員電車に乗り込んでゆく。いつものように淫らな視線や行為からボクを守るように春信が壁になってくれた。が、今日はそれらの矛先はボクではなく春信自身に向けられていた。自分が標的にされたという意外性と、ボクの前で弱みを見せたくないという「男」の意識が最悪の状況を産み出していた。
 春信の身体に触れてくるモノを拒絶するタイミングを逸したため、ここぞとばかりに攻めたててきた。ターゲットが一流ならそれを攻略する側も相応のテクニシャンが集まっていた。このような攻撃に晒された経験のない春信は最初の一撃で大きなダメージを受けてしまっていた。
 声には出さないが、春信の快感センサーは最高感度に上昇しているのだろう。喘ぎ声を押し殺し、ボクに支えられるようにして立っている。春信の胸も股間も淫らな指に奏でられていた。
 
 
「俺、もうダメ…」春信がボクの耳元で言った。「ぁ、ぁぁっ、ぁ〜〜〜〜♪」全身を痙攣させ絶頂に昇り詰めてしまったようだ。春信の身体がボクに預けられる。春信は快感の余韻に飲み込まれていた。一度イッてしまうともうどうにもならなかった。次々と襲いかかる淫らな指の攻撃にいいように弄ばれるしかなかった。ボクにもたれながら幾度となく悦びの嗚咽を漏らす。
 ボクは次の駅に着くと淫らな指達から強引に春信を引き剥がした。ホームのベンチに腰を下ろした。走り去ってゆく電車を春信は恨めしそうに見送っていた。
「もっと、もっと…」女の悦感に目覚めてしまった春信がつぶやいていた。
 
 
END
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