マイ・フェア・レディ



 夢の中のユウキは女の子だった。
 俺の下で愛らしい喘ぎ声をあげている。
「せ、先輩。もっと…」
 それだけで俺の息子は勢いを取り戻す。
 
 クチャクチャと卑猥な音をたてて俺の息子がユウキの女の子の中を掻き回している。
「あん♪ あん♪ あぁぁ♪」
 ユウキの声は言葉を成さなくなってゆく。
「きて♪ あぁ、ああんっ♪」
 俺の息子が締めつけられる。
「い、いぃ♪ いく、いく、いくっ♪」
 俺ももう限界に来ていた。
「あっ、あっ、あぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」
 ユウキの嬌声と一緒に、俺の精液がユウキの中に放出された…
 
 
 
 
 
 虚しい夢の痕がヒンヤリと下半身に広がる。
 粘液にまみれた指を股間から引き抜いた。
 指先を鼻の下に置くが、あの独特な栗のような臭いは届いて来なかった。
(くそっ!!)
 俺は指を丸め、握りしめた拳でベッドを叩いた。
 やりきれない想いをそこに叩きつける。
 
 俺の肉体からは既に栗香の元となる器官が失われていた。
 
 
 ゆっくりと身体を起こす。
 重力を感じて、俺の胸にある物体がその存在を主張し始めた。
 俺はベッドサイドに置いてあったブラジャーを自分の胸に廻した。
 最初は抵抗があったが、胸を締めつけられる不快感より、それが勝手気儘に揺れ動きその存在を誇示する不快感の方が勝っただけの事だ。
 俺は毎度自分にそう言い聞かせ、ブラのカップにそれを押し込むのだ。
 
 今、女になっているのはユウキではなく俺の方だった。
 そして、これは『夢』ではないのだ。
 
 ベッドから抜け出してタンスの扉を開く。
 扉の内側にある姿見が、ブラジャーを着けただけの『女』の姿を写し出した。
 これが今の俺だ。
 愛らしい瞳、官能的な唇、白い肌、少し紅み掛かった頬。
 まだ少女と言ってよい程の幼顔ではあったが、その肉体は充分に熟れきっている。
 もう、この姿にも慣れてしまったが、時々、元の男だったときの自分の姿を思い出す事もある。
 鏡の前で目を閉じ、再び開いた時に元の姿が現れることを期待するが、その希望が叶えられることはなかった。
 
 
 
 トントンとドアをノックする音がした。
「先輩♪ 起きましたか?」
 ユウキの声がドアの向こうから聞こえた。
 と、同時に今の自分の姿を思い出す。ブラしか着けていないのだ。もちろん下半身もそのままだ。
「ちょ、ちょっと待ってて!!」
 慌てて引き出しからショーツを取り出す。
 しかし、扉は開かれていた。
「キャッ!!」
 俺は条件反射的に女のような悲鳴をあげ、その場にしゃがんでいた。
「良い格好ですね。先輩♪」
 俺はユウキを見上げた。
「何を今更恥ずかしがっているんですか? 僕と先輩の仲じゃないですか♪」
 腕を掴まれ立ち上がらされた。
 真っ直ぐに立っても、まだユウキを見上げている。
 女にされた時、俺の背丈も大幅に低くなっていた。
 もちろん、力でもユウキに適わない。
「可愛いですね、先輩♪」
 そう言って何も着けていない股間を撫で上げる。
「ヒャン♪」
 俺は慌ててユウキの腕を押さえたが、時既に遅く、ユウキの指に淫夢の残滓が付いていた。
「先輩♪ 何をしていたんですか?」
 楽しそうにユウキが問いかけてくる。
 俺が答えられないでいると、
「先輩♪ あなたは僕の所有物なんですよ。僕の質問には答えなければならないんです。」
 その言葉で俺の頭の中のスイッチが強制的に切り換えられていた。
 
 
 
「ハ、ハイ。ゴシュジンサマ。」
「そう。良い娘ですね。では答えて下さい。何をしていたんですか?」
 俺の意志とは別に言葉が紡がれてゆく。
「ハイ、ユメヲミテオリマシタ。」
「どんな夢?」
「ゴシュジンサマニ、ダカレテイルユメデス。」
(ち、違う!!)
 俺の心の叫びはどこにも届かなかった。
「そうですか。それでこんなに濡れているのですね?」
「ハイ。」
「それでは夢を現実にしてあげましょう♪」
「オネガイシマス。ゴシュジンサマ。」
 俺はユウキの前に跪いていた。
 彼のズボンのチャックを降ろし、中からペニスを引き出していた。
 俺は躊躇せずにそれを咬えていた。
 チュパチュパと卑らしい音をたてて吸い込んでいる。
 俺の口の中でユウキのペニスが大きくなってゆく。
(違う!! 俺はユウキに俺の息子を咬えてもらいたいんだ。俺が咬えるんじゃない!!)
「良いぞ♪ 良いぞ♪」
 ユウキは俺の頭を鷲掴みにして前後に揺らした。
 喉の奥にペニスの先端が当たる。
 息が詰まり、苦しさに涙が溢れる。
 次第にユウキの動きが激しくなってゆく。
 そして、止まった。
 
 ビクリとペニスが脈打った。
 
 俺の喉に彼の精液が放たれた。
 
 
 
 俺はユウキの精液を余すところなく飲み取らされる。
 毎日、同じことが繰り替えされる。
 
 俺は催眠術のようなもので自分の意志を失わされ、ユウキの女奴隷として生かされていた。
 女の服を着せられ、女の仕種を強要される。
 
 俺は『女』に馴らされていった。
 
 
 
 
 そして、運命日がやってきた。
 
 いつものようにユウキへの奉仕を行っていた。
 ビクリとペニスが脈打ち、俺の喉に彼の精液が放たれた。
 
 嬉々としてそれを飲み取っている俺がそこにいた。
 
 全ての精液が舐め取られると、ユウキの腕が俺の膝裏と脇の下に差し込まれた。
 スッと持ち上げられていた。
 そのまま俺はベッドに運ばれた。
「さぁ、先輩♪ 脚を広げて下さい。」
 ベッドの上、俺はユウキに命じられるまま股間を晒していた。
 その上にユウキが伸し掛かってくる。
 
 ブラがずらされ、カップの中から乳房が開放された。
 その先端で乳首が硬くなっていた。
 ユウキの掌が俺の乳房を揉み上げる。
 俺の心は必死に否定しているが、それは快感となって俺の脳を刺激する。
 ユウキの口が乳首を含んだ。
「あ、あぁ…」
 声が漏れる。
 歯が立てられる。
「あぁ、あんッ♪」
 俺は女の声で喘いでいた。
 シーツを掴む。
 それは、俺の意志だった。
 
「あぁあん♪ ああっ!!」
 ユウキの指先が俺の股間に伸び、曝け出された膣口を撫で上げた。
 俺は快感に身をくねらせた。
 ユウキの指先が的確に俺の性感帯を刺激してゆく。
 俺は股間からダラダラと愛液を滴らせていた。
 
 
 
「もっと、もっと♪」
 俺はうわ言のように呟いていた。
 俺の下半身が更なる快感を要求していた。
「先輩?♪」
 ユウキがにやりと笑っている。
「何が欲しいんですか?」
 俺は一瞬、我に返る。
「お、俺は、ぁあっ、あん♪」
 が、ユウキの手技が更なる快感を注ぎ込む。
「そ、そんな… 俺は、オト…あっ!! あふぅん!!」
 俺の中の『男』が霞んでゆく。
「何が欲しいんですか? 先輩♪」
 再び問いかけてくる。
「く、んんん… あぁ、あんッ!!」
「我慢なんてしなくて良いんですよ♪」
 快感が俺を揺さぶっている。
 幾度となく、その流れに身を任せてしまいたい欲求に駆られる。
 目の前にある閂を外せば、めくるめく様な快感がそこに待っている。
「ぁあ、ぁあ、ぁあ、あああ…」
 俺はぎりぎりの所で耐えていた。
 
 その一線をユウキがいともたやすく突き破ってくれた。
 
「これが欲しかったんでしょう♪ 先輩?」
 ユウキのペニスの先端が俺の膣口を突ついていた。
「いきますよ♪」
 考える間を与えず、ペニスが挿入された。
 
 
 
「あぁ、あぁ、あ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 堰は切られた。
 俺の中に蓄積された欲求が爆発した。
 俺の肉体が激しく反応する。
 挿入されたペニスを膣が呑み込んでゆく。
 奥へ奥へと誘ってゆく。
 腰を振り、背中を反らせ、ユウキのペニスを咬え込んでゆく。
「あぅ、あぅ、あぅ…」
 俺は獣と化していた。
 牡を貪る牝獣だった。
 愛液を撒き散らし、全身で牡を取り込んでゆく。
 快感が俺を絶頂に突き上げてゆく。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」
 
 
 
 俺の股間で膣口がヒクヒクと脈打っている。
 男を、ペニスを待ち受けているのだ。
 俺は『女』だった。
 ベッドの上にうつ伏せ、尻を高く持ち上げている。
 ユウキの手が俺の腰を支えている。
「もう、焦らすのは止めてくれないか?」
 ユウキのペニスが膣口の周りを彷徨っている。
「先輩。あなたは女の子なんですよ。もう少し言葉を選んでもらえませんか?」
 俺の中の『男』は既に快感に破れていた。
「お願い。早く頂戴♪」
「何が欲しいんだい?」
「あなたのペニスよ。」
「どこに?」
「俺の…」
「俺?」
「いえ、アタシ。アタシのオマンコに…」
(お、俺は何を言っているのだろうか?)
 しかし、快感を欲する俺の肉体が俺の意志をねじ曲げてしまう。
「早く挿れて♪」
 俺な俺の意志で腰を振り、彼のペニスを要求していた。
「良い娘だ。」
 そう言って俺の中にペニスが差し込まれた。
「ぁあ♪ イイ、良いわ…」
 俺は胸をベッドに擦りつけ、更に快感を増幅させていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺は鏡の前で入念に化粧をしていた。
 この『女』の姿に相応しく、美しく装う。
 いや、それ以上に磨きをかけていた。
 俺はもうユウキなしではいられない。
 他の女に取られないためにも、他の女以上に美しく装わないではいられないのだ。
 
 ドアを開けるとユウキが待っていた。
「先輩♪」
 俺はユウキの腕に自分の腕を絡めた。
 俺とユウキの立場は逆転していた。
 腕を絡めてくるのはいつもユウキだった。
「先輩」と声を掛けてきたのはいつもユウキだった。
 しかし、今は俺の方がユウキを「先輩」と呼び、俺の方から腕を絡めてゆく。
 
 ユウキと一時でも離れたくなかった俺はユウキの後輩となって新しい人生を生きることにした。
 しかし、それは俺が『女』になりきることを意味していた。
 俺はそれ以上にユウキと一緒にいたかったのだ。
「さぁ、行こうか?」
 ユウキが微笑む。
「はい♪」
 俺が愛らしく答えると、ユウキがキスをしてくれた。
 それだけで、俺の股間は熱く濡れ始めていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 ウェディング・ベルが鳴り響く。
 女友達が口々に祝福を述べる。
 俺は純白のドレスを着ていた。
 バージンロードの向こうでユウキが微笑んでいる。
 
 これは『夢』?
 
 
 
 
 
「あんっ!! あぁん♪」
 女の媚声がベッドの上に漂っている。
 俺は幸せにつつまれていた。
 

−了−


    次を読む     INDEXに戻る